診察室でも、検査結果の紙の上でも、研究のニュースでも、くり返し出てくるのに、だれもわざわざ 立ち止まって説明してくれない言葉があります。そうした言葉をここに集めました。

ノートパソコンのそばに置かれた聴診器と手書きのノート

臨床試験の第1相・第2相・第3相とは何ですか

臨床試験の一覧でよく見る「第1相」「第2相」「第3相」は、その段階で何を確かめようとしているのかを 表しています。

早期第1相

本格的な第1相の前に、薬が体の中でどのようにふるまうかを、ごく少人数に短期間だけ確認する 探索的な段階です。治療や診断を目的とはしていません。

第1相

薬の安全性を確認する段階です。たいていは少人数で、健康な志願者を対象に行われます。

第2相

薬が実際に効果があるのかどうか、予備的なデータを集める段階です。安全性の確認も続けます。

第3相

安全性と効果について、さまざまな集団・用量で比較しながら、さらに情報を集める段階です。 参加する人数がぐんと多くなります。

第4相

すでに承認された薬を対象に、承認後の安全性・効果・最適な使い方の情報を集める段階です。

次の段階に進む確率はどのくらいですか

研究によって数字の差が大きいので、ひとつにまとめず、出典ごとにそのまま書いておきます。

  • 第2相から第3相へ進む割合: 27~36%(Biostatistics, Wong 2019 / BIO・Biomedtracker, Thomas 2016)
  • 第1相から最終的な承認まで至る割合: 9.6~13.8%(Nature Biotechnology, Hay 2014 / Clinical Pharmacology & Therapeutics, DiMasi 2016)
  • 第4相はすでに承認された薬を観察し続ける段階なので、「通過率」という考え方が他の段階とは 意味が違います。信頼できる平均の数字を見つけられなかったので、当てずっぽうを書くよりも 見つからなかったと書いておきます。

出典: FDA.gov、ClinicalTrials.gov 用語集、Biostatistics(Wong 2019)、 Nature Biotechnology(Hay 2014)、Clinical Pharmacology & Therapeutics(DiMasi 2016)、 BIO/Biomedtracker(Thomas 2016)。

LRRK2・GBA・SNCAとは何ですか

パーキンソン病と遺伝の話をするときに、いちばんよく出てくる3つの遺伝子です。遺伝が関わるのは 全体の10~15%程度とされています。

LRRK2

ロイシンリッチリピートキナーゼ2の遺伝子です。この遺伝子の変異は比較的遅い年齢で始まる パーキンソン病と関連があるとされ、これまでにわかっている遺伝子のなかで、パーキンソン病と もっとも多く関連づけられている遺伝子です。なかでも G2019S という特定の変異が もっとも多く研究されてきました。この変異が現れる割合は人口集団によって大きく異なり、 アシュケナージ系ユダヤ人の患者さんの約14%、北アフリカのベルベル人の患者さんの30~40%に 見つかるほど多い一方で、ほかの集団ではずっとまれです。この変異を受け継いでも、必ず症状が 出るわけではありません(下の不完全浸透をご覧ください) — 59歳の時点で約28%、79歳の時点で 約74%と報告されています。最近は、LRRK2 のはたらきを抑える薬が臨床試験の段階で研究されて います。

GBA

グルコセレブロシダーゼという酵素をつくる遺伝子です。この酵素は細胞の中のリソソームで脂質を 分解するはたらきをしています。この遺伝子の変異を2つとも受け継ぐと ゴーシェ病(Gaucher disease) という別の遺伝性の病気になり、変異を1つだけ持つ人(保因者)はゴーシェ病には なりませんが、パーキンソン病のリスクは高くなるとされています。特発性パーキンソン病の 患者さんのうち、人種によって5~20%にこの変異が見つかるほどで、これまでにわかっている パーキンソン病関連の遺伝子ではもっとも多いものです。アシュケナージ系ユダヤ人では最大9%が この変異を持っていると報告されています。GBA の変異がある場合、認知機能の低下が比較的 早く進み、平均して変異のない患者さんより3~11年早く発症する傾向があります。

SNCA

アルファシヌクレインというタンパク質をつくる遺伝子です。LRRK2 や GBA に比べて変異が 見つかることはずっとまれですが、見つかった場合は、親のどちらか一方から受け継ぐだけで 発症する常染色体顕性遺伝のかたちをはっきりと示し、比較的若い年齢で始まるパーキンソン病と 関連があるとされています。

アルファシヌクレインとは何ですか

脳のなかにもともと正常に存在するタンパク質です(α-シヌクレインとも書きます)。パーキンソン病 では、このタンパク質が異常に固まってドパミン神経細胞のなかにたまっていくとされ、この 固まったかたまりを レビー小体(Lewy body) と呼びます。患者さんの脳を病理解剖した ときにこのレビー小体が見つかることが、パーキンソン病を病理学的に確認する代表的な基準にも なっています。なぜ、どういう人でこのタンパク質が固まりはじめるのかは、まだ完全には わかっていません。いまも世界中で、この分野でもっとも熱心に研究されている問いのひとつです。

黒質・大脳基底核とは何ですか

黒質(substantia nigra)

ドパミンをつくる神経細胞が集まっている、中脳にある部位です。ラテン語で「黒い物質」という 意味で、ドパミンが自然に酸化するときにできる ニューロメラニン という濃い色素が ここの神経細胞にたまり、目で見ても黒く見えることからこの名前がつきました。パーキンソン病 だった方の脳を病理解剖すると、この部位の色が明らかに薄くなっているのがわかります。 神経細胞がそれだけ減って、色素も一緒に失われたからです。

大脳基底核(basal ganglia)

体の動きを調節する脳の回路です。黒質でつくられたドパミンを受け取り、大脳皮質から下りて くる動きの指令をふるい分け、細かく調整するはたらきをしています。黒質から大脳基底核の一部 である 線条体(striatum) へドパミンを届ける経路を「黒質線条体路」と呼びますが、 この経路がパーキンソン病でもっとも早く、もっとも大きく影響を受ける部分です。

DaTscan・Syn-One検査とは何ですか

DaTscan

核医学の検査です。放射性の薬剤(イオフルパン I-123)を注射し、脳の線条体にある ドパミントランスポーター(DAT) にどれくらい結合するかを、SPECT という特殊な カメラで撮影します。正常な脳では線条体の左右に明るく対称的な信号が写りますが、ドパミン 神経細胞が減っているところでは信号が弱く、左右で偏って写ります。ただしこの所見は パーキンソン病だけに見られるものではなく、進行性核上性麻痺のようなほかのパーキンソン 症候群でも似たような異常が出ることがあるため、この検査だけで診断を確定することはできません。

Syn-One検査

2019年から臨床で使われはじめた、比較的新しい検査です。首の後ろ、膝の上、くるぶしの上の 3か所から、直径3mmほどの皮膚をごく少し採取し(生検)、皮膚の細い神経線維にリン酸化した アルファシヌクレインがたまっていないかを、特殊な染色で確認します。診断を支える参考資料 として使われ、レビー小体型認知症のような関連する病気との見分けにも役立ちます。

PET検査とは何ですか

陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography)の略です。CTやMRIが脳のかたちを見る 検査だとすれば、PETは脳が実際にどう動いているかを見ます。やり方はこうです — 見たい 対象(特定のタンパク質や受容体など)にだけ結合するようにつくった物質に、ごく弱い放射性の 標識をつけて注射し、その物質が脳のどの部位にどれくらい集まるかを撮影します。このとき注射 する物質を トレーサー(tracer) と呼びます。何を見ようとするかによってトレーサーは 変わり、パーキンソン病の研究ではドパミン神経の終末を見るトレーサーや、アセチルコリンに 関わるタンパク質を見るトレーサー([18F]VAT など)が使われます。

ただし 研究用のトレーサーは、診察室で受けられる検査ではありません。研究で使われる ものと、保険が使える臨床の検査とは別のものです。新しいトレーサーが研究で有望に見えても、 実際の診療に入るまでには別の検証と承認が必要になります。パーキンソン病の診断でよく使われる 核医学の検査はPETではなく、SPECT方式のDaTscanです(上の項目を参照)。

アセチルコリンとは何ですか

脳と神経で信号を伝える 神経伝達物質 の一つです。パーキンソン病はよく「ドパミンが 足りない病気」と説明されますが、実際にはドパミンだけの問題ではありません。アセチルコリンを 使う神経回路(コリン作動性神経系)も一緒に弱っていき、こちらは 記憶・注意力・視覚情報の 処理・睡眠・歩行のバランス に関わっています。

そのため、ドパミンの薬でふるえや体のこわばりはよくなっても、もの忘れ、幻視、よく転ぶと いった問題はなかなかよくならないことがあります — それらの症状はアセチルコリン側の変化と より深く関わっているからです。実際に2026年に発表された脳画像の研究では、視覚を処理する脳の 部位でアセチルコリンの活動が低い方ほど幻視が重く、まだ幻視のなかった方のなかでも、その活動 が低かった方が2~6年後に幻視を経験する傾向が確認されました。

認知症の治療に使う コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、リバスチグミンなど)が パーキンソン病の認知症にも処方されるのはこのためです — アセチルコリンが分解される速さを 遅らせて、脳により長く残るようにする薬です。逆に 抗コリン薬 はアセチルコリンの はたらきを妨げる薬なので、高齢の方や認知機能が下がっている方では混乱や幻覚を悪化させる ことがあり、注意して使われます。

パラコート・トリクロロエチレンとは何ですか

パラコート(paraquat)

除草剤です。飲み込んだ場合の急性毒性がきわめて強く、多くの国で使用が制限または禁止されて います。この急性の危険とは別に、長い期間にわたって低い濃度で曝露した場合にパーキンソン病の リスクが高くなるという研究が複数報告されており、米国ではパラコートの製造企業を相手にした パーキンソン病関連の訴訟が続いています。

トリクロロエチレン(TCE)

ドライクリーニングや金属の脱脂に使われる工業用の溶剤です。分解されにくく、地下水を汚染する 代表的な物質として知られています。長期間これに曝露した労働者を対象にした研究で、 パーキンソン病のリスクとの関連が報告されています。

ブラーク仮説・迷走神経とは何ですか

ブラーク仮説(Braak hypothesis)

ドイツの神経解剖学者ハイコ・ブラーク(Heiko Braak)が提唱した仮説です。一部の人では アルファシヌクレインが脳よりも先に腸や嗅神経で固まりはじめ、迷走神経を通って決まった 順序で少しずつ脳まで上がっていく、と説明します。この仮説が正しければ、便秘やにおいが わかりにくくなるといった非運動症状が、手のふるえのような運動症状より何年も、ときには 十数年も先に現れることが多い理由の説明に役立ちます。ただし、すべての人がこの順序を たどるわけではないため、いまも仮説の段階にとどまっています。

迷走神経(vagus nerve)

脳から首、胸、おなかの内臓まで、体のあちこちの器官と脳を直接つなぐ長い神経です。ブラーク 仮説では、この神経がアルファシヌクレインが腸から脳へ移動する通り道として名指しされて います。実際に、過去に迷走神経を切る手術(迷走神経切断術)を受けた人でパーキンソン病の 発症率が低かったという観察研究も、この仮説を裏づける根拠として挙げられます。

動作緩慢(無動)・筋固縮とは何ですか

動作緩慢(bradykinesia)

動きが全体的に遅くなる、パーキンソン病の代表的な運動症状です(無動・寡動とも呼びます)。 ただ遅くなるだけではありません。歩くときの一歩の幅が狭くなったり、くり返す動作 — たとえば 指で机をトントンとたたく動作 — をしていると、だんだん動きの大きさと速さが小さくなっていく のも特徴です。パーキンソン病を臨床的に診断するときに、必ずあることが求められる中核の基準 でもあります。

筋固縮(rigidity)

手足の筋肉がこわばる、これも代表的な運動症状です。医師が患者さんの腕や手首をゆっくり 動かしてみたときに、なめらかに動かず、歯車が回るように引っかかる感じの抵抗があることが あります。この特徴的なパターンを 歯車現象(cogwheel rigidity) と呼びます。

ジスキネジアと運動症状の変動(オン・オフ)とは何ですか

ジスキネジア(dyskinesia)

レボドパのような薬を長く飲み続けるうちに脳がドパミンに対してだんだん敏感になり、意図せずに 体がくねったり揺れたりする症状です。薬を間違えて飲んだせいで起こるものではなく、病気が 進むにつれて脳が薬に反応する仕方が変わるために起こります。ちらっと見るとふるえと まぎらわしいこともありますが、ジスキネジアは薬がいちばん効いているとき(オンの状態)に 現れることが多く、動きのかたちもふるえとは違います。薬の量や飲む時間を調整して管理する ことが多い症状です。

運動症状の変動(motor fluctuations)・オン-オフ(on-off)

薬がよく効いている「オン(on)」の状態と、薬が切れて症状がまた出てくる「オフ(off)」の状態が くり返し入れかわる現象です。はじめのころは、次の薬を飲む30分~1時間ほど前に効きめが 落ちてくる「ウェアリング・オフ(wearing-off)」というかたちで、比較的予測しやすく現れます。 ですが病気が進むにつれて、飲む時間とあまり関係なく、突然、不規則に入れかわることが あります。

UPDRSとは何ですか

統一パーキンソン病評価尺度(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)です。ホーン・ヤール の重症度分類が運動症状の進み具合を大きな枠でいくつかの段階に分けるのに対して、UPDRS は たくさんの項目をそれぞれ点数にして合計します — 認知・行動・気分といった非運動の領域、 日常生活の動作、細かい運動症状、薬物治療の副作用まで含みます。項目数が多く、神経内科の 専門医が直接診察して採点する必要があるため、患者さんに「いま何段階です」と伝えるためより、 診療のなかで症状の変化を追いかけるために使われることが多い尺度です。

誤嚥性肺炎とは何ですか

食べ物や唾液が食道ではなく気道に入ってしまう(誤嚥)ことで起こる肺炎です。パーキンソン病が 進むと、飲み込む筋肉の連携が弱くなる 嚥下障害(dysphagia) が起こり、この誤嚥が 起こりやすくなります。水のようなさらっとした飲みもののほうが、とろみのあるものより かえって安全に飲み込みにくいことも多いので、症状があるときは食べもの・飲みものにとろみを つけたり、言語聴覚士に飲み込みのリハビリを相談したりすることが、誤嚥性肺炎を防ぐのに 役立ちます。

常染色体顕性遺伝・常染色体潜性遺伝とは何ですか

常染色体顕性遺伝(autosomal dominant)

親のどちらか一方から変異を受け継ぐだけで発症しうる遺伝の仕方です(以前は「優性」と 呼ばれていました)。LRRK2 や SNCA はこのかたちで受け継がれます。ただし変異があれば必ず 発症するわけではありません(不完全浸透) — 同じ変異を持つ家族のなかでも、症状が出る人と、 一生出ない人がいます。

常染色体潜性遺伝(autosomal recessive)

両方の親から変異を受け継いだときに発症する遺伝の仕方です(以前は「劣性」と呼ばれていました)。 親はそれぞれ変異を1つだけ持つ「保因者」で、たいてい本人には症状がありません。PRKN が このかたちと関連しており、比較的若い年齢で診断される早期発症のパーキンソン病と関係します。

PRKNとは何ですか

parkin(パーキン)というタンパク質をつくる遺伝子です。このタンパク質は、傷ついたり 折りたたみを誤ったりした他のタンパク質に、処分の目印をつけるはたらきをしていると 考えられています。PRKN は常染色体潜性遺伝で受け継がれ、早期発症(50歳より前、とくに 20~40代)のパーキンソン病のよくある遺伝的な原因のひとつです — 若い年齢で診断された 患者さんほど、この遺伝子のような潜性遺伝子が占める割合が大きくなる傾向があります。

本質性振戦・薬剤性パーキンソニズムとは何ですか

本質性振戦(essential tremor)

パーキンソン病といちばんよく混同されるふるえの病気です。パーキンソン病のふるえはじっと しているとき(安静時)に体の片側から現れますが、本質性振戦は手を伸ばす、物を持つといった 動かしているとき に強くなり、たいてい 体の両側 に現れます。頭や声が震える こともあります。パーキンソン病のふるえより多い病気ですが、動作緩慢や筋固縮といったほかの 運動症状をともなわないことが、いちばん大きな違いです。

薬剤性パーキンソニズム(drug-induced parkinsonism)

一部の抗精神病薬(ハロペリドールなど)や、胃腸の動きを促すメトクロプラミドのような薬が 脳のドパミン受容体をふさぐことで、パーキンソン病とよく似た症状(動作緩慢、筋固縮、歩きに くさ)が出る場合です。パーキンソン病と違ってたいてい体の両側に対称的に現れ、ふるえは 3人に1人ほどにしか出ません。原因となった薬をやめると、多くの場合4~18か月かけて少しずつ よくなりますが、症状が残る人もいます(もともとパーキンソン病がひそんでいて、薬が症状を 表に出した可能性もあると考えられています)。

MSA・PSP・CBDとは何ですか

パーキンソン病のように見えても、進み方や治療への反応が違うため、非定型 パーキンソニズム(atypical parkinsonism) または「パーキンソン・プラス症候群」として まとめて呼ばれる病気です。レボドパを使ってもパーキンソン病ほど反応しないことが多く、 これらの病気の患者さんの半数以上がはじめはパーキンソン病と診断され、平均して3年ほど たってから正しい診断がつくと報告されています。

多系統萎縮症(Multiple System Atrophy, MSA)

立ち上がるときに強くめまいがしたり血圧が大きく上下したりする 自律神経の問題 と、 排尿の調節がうまくいかないことが、特徴的にともないます。

進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy, PSP)

目を上下に動かしにくくなるのが特徴的な症状です。病気の初期からバランスの問題と転倒が 強く現れ、考え方や行動の変化が比較的早く始まり、話し方が不明瞭になることもあります。

大脳皮質基底核変性症(Corticobasal Degeneration, CBD)

体の片側の手足がこわばり、勝手にぴくっと動くこと、手足が異常な姿勢で固まるジストニア、 手足の連携がうまくいかないことが特徴です。

正常圧水頭症・脳血管性パーキンソニズムとは何ですか

正常圧水頭症(Normal Pressure Hydrocephalus, NPH)

脳のなかに脳脊髄液が過剰にたまることで起こります。歩きにくさ・考えるはたらきの遅れ・ 尿失禁 の3つが代表的な症状です。ほかのパーキンソン症候群と違い、脳脊髄液を逃がす手術 (脳室腹腔シャントなど)で症状がよくなることがあるため、見分けることがとくに大切な病気です。

脳血管性パーキンソニズム(vascular parkinsonism)

脳の細い血管が何度も傷つくこと(小さな脳梗塞が積み重なった場合も含みます)で起こる パーキンソニズムです。腕より 脚のほうに症状が目立つ「下半身パーキンソニズム」の かたちを示し、安静時のふるえはほとんどなく、レボドパへの反応がパーキンソン病より はっきりと弱いことが知られています(研究によっては20~40%程度が部分的に反応するのみ)。

レビー小体型認知症(DLB)とは何ですか

レビー小体(固まったアルファシヌクレイン)が脳全体に広くたまることで起こる認知症です。 記憶の問題や混乱、注意を保ちにくいこと、実際にはないものが見える幻視、そしてパーキンソン病 と似た運動症状が一緒に現れるのが特徴です。パーキンソン病の患者さんも長い年月がたつと 認知症になることがあり(パーキンソン病認知症)、この2つは どちらが先に、どれくらい 早く 現れたかで区別します — 運動症状が先に現れて1年以上たってから認知症が出た場合は パーキンソン病認知症、認知機能の症状が運動症状とほぼ同時か、それより先に現れた場合は レビー小体型認知症と考えることが多いです。

LSVT LOUDとは何ですか

パーキンソン病の声や発音の問題に対して、もっとも広く使われている専門的な音声治療の プログラムです。4週間にわたり週4回、合計16回の訓練を行い、「大きな声を出す」という 一見単純なことだけに集中します。それだけの単純さにもかかわらず、抑揚や発音の正確さまで 一緒に改善し、効果が最大2年間持続すると報告されています。最近は遠隔でも受けられます。

タンパク質再配分食とは何ですか

レボドパは腸から脳へ吸収されるとき、タンパク質が分解されてできたアミノ酸と、同じ運搬経路を めぐって競合します。そこで、1日に必要なタンパク質の多くを夕食にまとめて、活動する日中は タンパク質を控えめにし、薬の効きめをできるだけ活かす食事の調整法を タンパク質 再配分食 と呼びます。一部の患者さんでは運動症状の変動を減らすのに役立つという研究が ありますが、人によって反応が違い、制限しすぎると体重の減少や栄養不足につながるため、 管理栄養士や医療チームと一緒に調整する必要があります。

レム睡眠行動障害(RBD)とは何ですか

眠っているあいだ、ふつうは筋肉がゆるむようになっているのですが、その調節がうまくいかず、 夢の内容を実際に体で演じるように大声を出したり手足を動かしたりする睡眠障害です。 パーキンソン病の患者さんの最大半数が経験すると報告されており、運動症状より5~10年 先に現れることが多いため、比較的早い時期のサインと考えられています。クロナゼパムのような 薬で80~90%程度改善すると報告されています。

レストレスレッグス症候群(RLS)とは何ですか

脚に不快な感じがして、動かしたいという強い衝動が起こる症候群です(下肢静止不能症候群とも 呼びます)。じっと横になっているときや座っているときに強くなり、動かすと一時的にやわらぐ のが特徴です。鉄分の不足と関係している場合があるため、思いあたるときは血液検査で鉄の値を 確かめてみるとよいでしょう。

ジストニア性の痛み・中枢性疼痛とは何ですか

ジストニア性の痛み(dystonic pain)

筋肉が勝手に、持続的にねじれたりけいれんしたりすることで起こる痛みです。足の指が内側に 丸まる、足首がねじれるといったかたちでよく現れ、薬の効きめが切れる時間帯に強くなることが 多いです。筋弛緩薬、ボツリヌス毒素(ボトックス)注射、脳深部刺激療法(DBS)などが役立つ ことがあります。

中枢性疼痛(central pain)

脳や脊髄で感覚と痛みを調節する経路そのものがうまくはたらかないために起こる痛みです。 その場所をけがしたり圧迫されたりしていないのに、焼けるような、あるいはじんじんするような 痛みとして感じられることが多いです。抗てんかん薬や抗うつ薬の系統の薬が役立つことが 知られています。

軽度認知障害(MCI)とは何ですか

同じ年代の人と比べて考えるはたらきが少し遅くなっているものの、日常生活を自分で やっていくうえではまだ支障がない状態です。パーキンソン病では、純粋な記憶よりも注意や 実行機能(いくつかのことを順序立てて処理する力)に大きく影響する傾向があります。すべての 軽度認知障害が認知症に進むわけではなく、早く手を打てば低下の速さをゆるめられ、一部は 戻ることもあるとされています。

アパシー(意欲低下)とは何ですか

悲しかったり落ち込んでいたりするわけではないのに、何かを始めようという意欲や関心が なくなった状態です。本人がその状態をとくにつらいと感じていないことが多い点が、うつとの 違いです。怠けている、無関心だと誤解されやすいのですが、実際にはドパミンをはじめとする 脳内の化学物質が減ることで起こる神経学的な症状です。

パーキンソン病の精神症状とは何ですか

パーキンソン病で現れる幻覚(実際にないものが見えたり聞こえたりすること)と妄想(事実で ないことを固く信じること)をまとめて呼ぶ言葉です。レボドパやドパミンアゴニストといった パーキンソン病の薬そのものが原因になることが多く、認知症や急な意識の変化(せん妄)が 原因になることもあります。患者さんの20~30%が幻視を経験すると報告されています。

ドパミンアゴニストとは何ですか

脳のなかでドパミンの代わりにはたらく薬です(ドパミン受容体作動薬とも呼びます)。レボドパと 一緒に、あるいは単独で処方され、運動症状を抑えるのに役立ちます。ただし衝動制御障害の リスクがレボドパよりはっきり高いことが知られているので、飲んでいるあいだは行動の変化を 注意して見ておくとよいでしょう。

衝動制御障害(ICD)とは何ですか

害になる、あるいは害になりうる行動を、自分では止められない状態です。その行動をすると 不安や緊張がほどける感じがあるのが特徴です。パーキンソン病ではドパミンアゴニストの服用と 関係があり、病的な賭けごと、過度な買い物、過食、性欲の過剰がもっともよく報告される かたちです。

ドパミン調節障害症候群とは何ですか

処方されたよりも自分で薬を多く、頻繁に飲もうとする状態です。薬を減らそうとすると不安に なったり、こっそり余分に飲んだりするかたちで現れることがあります。 衝動制御障害と原因(ドパミンの薬が脳の報酬回路に与える 影響)が共通していて一緒に現れることが多いのですが、衝動制御障害は賭けごとや買い物と いった「行動」に執着するのに対し、ドパミン調節障害症候群は「薬そのもの」に執着する点が 違います。意志が弱いから起こる問題ではないので、ご家族が薬をこっそり隠したり言い争ったり するよりも、医療チームと一緒に飲み方を調整するほうが安全です。

出典: Parkinson’s Foundation, “Impulse Control Disorders”。

パンディングとは何ですか

物を集める、分解してまた組み立てる、引き出しを片づけてまた散らかす — そんなふうに、 とくに目的なく同じ行動をくり返す状態です(punding)。ドパミンの薬の量が多いとき、とくに ドパミン調節障害症候群が一緒にあるときに、より よく現れることが知られています。

出典: Parkinson’s Foundation, “Impulse Control Disorders”。

夜間無動とは何ですか

眠っているあいだに寝返りをうったり姿勢を変えたりしにくくなる状態です。日中の運動症状と 同じように、パーキンソン病が進むにつれて現れ、中期以降の患者さんの最大70%が経験すると 報告されています。長い時間同じ姿勢で圧迫されていると、褥瘡(床ずれ)や誤嚥性肺炎といった 合併症のリスクにつながるので、単なる不快さを超えた問題です。就寝時に徐放性(ゆっくり 放出される)のレボドパを飲むと症状がよくなると報告した研究もあります。

出典: Parkinson’s Foundation、Michael J. Fox Foundation、NEJM(Multicenter Analysis of Glucocerebrosidase Mutations in Parkinson’s Disease)。

ドパミン遮断薬とは何ですか

ドパミンアゴニストとちょうど反対のはたらきをする薬です。足りないドパミンの代わりを つとめるのではなく、ドパミン受容体そのものをふさいでしまいます。パーキンソン病でない人に はよく使われる薬ですが、パーキンソン病の患者さんに投与すると症状が急に悪くなることが あるため、避けるべき薬 に分類されます。知っておきたいものとしては、ハロペリドール、 クロルプロマジン、リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、アミスルプリドといった 抗精神病薬、それにメトクロプラミド、プロクロルペラジンといった胃腸の薬・吐き気止めが あります。オンダンセトロン(吐き気止め)、クエチアピン、クロザピン、ピマバンセリン (抗精神病薬)は、比較的安全な代わりの選択肢とされています。

こうした薬は神経内科にかぎらず多くの科から処方されます。薬の商品名は国によって違うので、 名前で覚えるよりも、「ドパミン受容体をふさぐ薬ではないですか」と主治医や薬剤師に たずねるのが確実です。入院や救急のときだけでなく、新しくどの科にかかるときでも パーキンソン病があることを必ず伝え、お薬手帳を見せるようにしてください。

出典: American Parkinson Disease Association, “Medications to Avoid with Parkinson’s Disease”。

フェノチアジン系薬剤とは何ですか

精神科で抗精神病薬・吐き気止めとして長く使われてきた薬の系統です(クロルプロマジンなど)。 ドパミン受容体をふさぐはたらきがあるため ドパミン遮断薬に 含まれ、パーキンソン病の患者さんに使うと症状が急に悪くなることがあります。手術中の麻酔の 補助として使われることもあるので、手術を受けるときは麻酔を担当するチームにもパーキンソン病 があることを必ず伝えてください。

出典: American Parkinson Disease Association, “Medications to Avoid with Parkinson’s Disease”。

MAO-B阻害薬とは何ですか

モノアミン酸化酵素B(MAO-B)という酵素のはたらきを抑えて、脳のなかでドパミンが分解される 速さを遅くする薬です。ドパミンを新しく供給するレボドパとは作用の仕方が違いますが、結果と しては似ていて、ドパミンが脳のなかに長くとどまり、症状がやわらぎます。セレギリン、 ラサギリンが代表的な成分です。歯科などでアドレナリン(エピネフリン)入りの局所麻酔薬を 使うときの相互作用が以前は大きく心配されていましたが、最近の研究では、決められた用量で 使えば重い問題につながる可能性は低いと報告されています。それでも、処置の前には必ず 飲んでいる薬であることを伝え、必要なら用量を慎重に調整してもらえるようにしておくのが 安全です。

出典: Parkinson’s Foundation, “Dental Health in PD”; Specialist Pharmacy Service(NHS), “Managing interactions with local anaesthetics in dentistry”。

COMT阻害薬とは何ですか

COMT(カテコール-O-メチル基転移酵素)という酵素のはたらきを抑えて、レボドパが脳に届く前に 体のなかで分解されてしまうのを防ぐ補助の薬です。そのため単独で使うことはなく、かならず レボドパと一緒に飲みます。エンタカポン、オピカポンが代表的な成分で、レボドパと一錠にまとめた 配合錠として処方されることもあります。薬の効いている時間が短くなってきたとき(ウェアリング オフ)に、その時間を延ばす目的で追加されることが多い薬です。尿が濃いオレンジ色になることが ありますが、これは薬の成分によるもので、体に害はありません。

出典: Parkinson’s Foundation, “Medications for Motor Symptoms”。

徐放製剤とは何ですか

薬が一度に出ずに、少しずつゆっくり出るようにつくられた剤形です。反対は速放製剤 (すぐに溶ける剤形)です。

レボドパではこの違いがとくに大事になります。速放製剤は効きはじめが早いかわりに長く続かず、 徐放製剤は長く続くかわりに効きはじめが遅いという性質があります。そのため、日中は速放製剤、 夜間に体がこわばる方は就寝前だけ徐放製剤、というように使い分けて処方されることもあります。 最近は、すぐ溶ける粒とゆっくり溶ける粒をひとつのカプセルに一緒に入れて、両方の性質を 同時に得ようとする薬も出てきています。

徐放錠は割ったり噛んだりしてはいけません。ゆっくり出るようにつくられた構造がこわれて、 薬が一度に出てしまいます。錠剤が大きくて飲みにくいときは自分で切らず、主治医や薬剤師に 伝えてください。

もうひとつ、徐放製剤は速放製剤より体への吸収がばらつきやすく、同じミリグラム数でも効果が 一対一で対応しません。剤形を変えるときに用量をそのまま移し替えてはいけないのはこのためで、 かならず処方にしたがって調整します。

出典: Parkinson’s Foundation, “Medications for Motor Symptoms”; Michael J. Fox Foundation。

PDE5阻害薬とは何ですか

勃起不全の治療に使われる飲み薬の系統です(シルデナフィルが代表的な成分です)。血管を広げて 血流を増やすかたちではたらきます。パーキンソン病の薬との直接の相互作用は大きくないと されていますが、血圧を下げる薬を一緒に飲んでいる場合は血圧が下がりすぎることがあるため、 処方を受ける前に飲んでいる薬をすべて医療チームに伝えてください。

出典: Parkinson’s Foundation, “Sexual Health”。

脳深部刺激療法(DBS)とは何ですか

脳の奥深いところ(多くは視床下核)に細い電極を植えこみ、細かい電気刺激を継続的に送る手術 です。薬だけでは症状を抑えにくくなった方や、ジスキネジアが強くなった方に検討される方法で、 薬物治療と組み合わせたときに運動機能がより大きく改善するという研究があります。装置が 入っている場合は、その後の処置 — とくにMRI検査や手術 — の前に医療スタッフへ、また空港の 保安検査を通るときには係員へ、あらかじめ伝える必要があります。

経頭蓋直流電気刺激(tDCS)とは何ですか

頭皮の上に貼った電極を通して弱い直流の電気を脳の表面近くに流す、手術をともなわない刺激の 方法です。脳深部刺激療法(DBS)のように電極を脳のなかに 植えこむ手術も麻酔も必要ないので、体への負担がずっと軽くなります。1回の刺激時間はふつう 20~30分程度で、1回きりではなく何度もくり返す方法として研究されています。まだ、気分の 落ち込みやアパシーといった非運動症状を補助的に改善する研究段階であり、DBS のように 確立した標準治療になっている方法ではありません。

不完全浸透とは何ですか

特定の遺伝子の変異を受け継いだからといって、必ず発症するわけではないという意味です (incomplete penetrance)。同じ変異を持つ家族のなかでも、症状が出る人と、一生出ない人が います。たとえば LRRK2 の変異を持つ人が実際にパーキンソン病を発症する確率は年齢によって 変わり、59歳の時点で約28%、69歳の時点で約51%、79歳の時点で約74%と報告されています。 年齢とともに確率は上がりますが、一生症状なく過ごす人もかなりいる、ということです。

出典: Parkinson’s Foundation, “Is Parkinson’s Genetic?”。

若年発症パーキンソン病(YOPD)とは何ですか

50歳より前 に診断されるパーキンソン病のことです。早期発症パーキンソン病(EOPD)とも 呼び、米国では患者さん全体の約 4% がここに当てはまります。より多い高齢発症の場合と 基本的な症状は同じですが、いくつか違いがあります。発症が若いほど遺伝の関わりが大きく、 20歳より前に発症した場合は 65%、20~30歳で発症した場合は 32% に特定の 遺伝子変異が見つかると報告されています。症状の進みは全体的にゆるやかで、認知症につながる 認知の問題も比較的少ないのですが、足の筋肉が内側にねじれるジストニアが早い時期によく現れ、 治療期間が長くなるぶん、ジスキネジアのような薬の副作用も早く出てくる傾向があります。 仕事で経歴を積んでいる時期や子育ての時期に診断されることが多く、職場や家族計画にまつわる 心理的な負担がとくに大きいことが知られています。

出典: Parkinson’s Foundation, “Young-Onset Parkinson’s”。

介護者の燃え尽き(バーンアウト)とは何ですか

米国パーキンソン財団が、介護の負担が積み重なっていく過程を3つの段階に分けて説明する言葉 です。はじめはまだ扱える 介護のストレス の段階です。時間がたつうちにそのストレスが 積み重なり、介護そのものの力に影響しはじめる 介護の緊張 の段階に移ります。これを 放っておくと、身体的・情緒的・精神的な疲れが積み重なり、介護者が自分の役割から退きはじめ、 そのくせ自分の体と心は顧みなくなる 介護者の燃え尽き の段階に至ります。単に 「とてもつらい」というだけでなく、介護そのものに対する態度が変わるのが特徴です — 以前は 当たり前にしていたことが急に耐えられなくなる、患者さんへの恨みが積もる、「やめたい」という 思いが何度も浮かんでくる、といったかたちです。強いストレスを抱える介護者の およそ半数 が臨床的なうつの診断基準を満たすという調査もあり、こうしたサインが 何週間も続いているなら、我慢して押し通すのではなく、専門家の助けを求めるべき時期だと 考えてください。

出典: Parkinson’s Foundation, “How to Address and Prevent Care Partner Burnout” · “Caring for the Care Partner”。

介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院はどう違いますか

名前が似ていて混同しやすいのですが、それぞれ役割が違う施設です。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、要介護の高齢者のための 生活の場 です。 入浴・排せつ・食事などの介護、そのほかの日常生活上の世話、機能訓練、健康管理、療養上の 世話を行います。入所の対象は原則として要介護3以上ですが、在宅で日常生活を営むことが 難しいやむを得ない事情がある場合は、要介護1・2の方も「特例入所」として申し込めることに なっています。

介護老人保健施設(老健)は、リハビリなどを提供して 在宅復帰・在宅支援を目指す 施設です。心身の機能の維持回復をはかり、自宅での生活を営めるようにするための支援が必要な方 に対して、看護、医学的管理のもとでの介護と機能訓練、そのほか必要な医療と日常生活上の世話を 行います。

介護医療院は、要介護の高齢者の 長期の療養と生活の場 をあわせた施設です。 介護療養病床(療養機能強化型)に相当するサービス(I型)と、介護老人保健施設に相当する以上の サービス(II型)の2つを提供できます。

選ぶときの軸は、いま必要なのが生活の支援なのか、在宅復帰に向けたリハビリなのか、 長期の医療・療養なのか という点です。

どの施設が使えるかは要介護認定の区分や空き状況、地域によって変わります。費用の自己負担も 所得などによって変わるので、担当の ケアマネジャー地域包括支援センター、 またはお住まいの 自治体の介護保険担当窓口 に確認してください。

なお、介護保険は原則として65歳以上の方の制度ですが、40歳以上65歳未満の方(第2号被保険者)も、 要介護状態の原因が政令で定める16の「特定疾病」による場合は要介護認定を申請できます。この 特定疾病には 「進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病」 が含まれて います。65歳未満の場合は主治医意見書での確認が必要で、特定疾病に当たるかどうかは市町村の 介護認定審査会が判断します。

出典: 厚生労働省「介護保険三施設の比較」・「介護医療院とは」・「指定介護老人福祉施設等の 入所に関する指針について」・「特定疾病の選定基準の考え方」。

任意後見制度とは何ですか

まだ判断能力が十分あるうちに、将来それが不十分になったときに備えて、自分が選んだ人 (任意後見人)と、その人に任せる事務の内容を 公正証書による契約 で決めておく制度です。 契約は登記されます。

大切なのは、契約を結んだだけでは効力が生じない ことです。実際に判断能力が不十分に なったあと、家庭裁判所に 任意後見監督人の選任 を申し立てる必要があり、監督人が 選任された時から契約の効力が生じます。任意後見人はその時から、監督人の監督のもとで、 契約に定められた事務を本人に代わって行います。

これと対になるのが 法定後見制度 です。すでに判断能力が低下したあとに、家庭裁判所が 後見人などを選びます。判断能力の程度に応じて3つの類型に分かれます — 判断能力が欠けているのが 通常の状態である方には「後見」、判断能力が著しく不十分な方には「保佐」、判断能力が不十分な方 には「補助」です。

つまり2つの制度のほんとうの違いは、誰に任せるかを本人が前もって自分で決めておくのか (任意後見)、それとも 本人の代わりに家庭裁判所が選ぶのか(法定後見) という点です。 判断に影響する症状がまだない、あるいは軽いうちに準備しておくほうが、誰に自分のことを 任せたいかという本人の意思を確実に残せます。

具体的な手続きや費用は、契約を作る 公証役場 と、申し立て先の 家庭裁判所 で 確認してください。

出典: 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」、裁判所「任意後見監督人選任」・ 「任意後見制度の概要を知りたい方へ」。

人生会議(ACP)・リビング・ウィルとは何ですか

人生の最終段階でどんな医療やケアを受けたいか(あるいは受けたくないか)を、あらかじめ自分で 考え、ご家族や医療・介護のチームとくり返し話し合って共有していく取り組みを、アドバンス・ ケア・プランニング(ACP)といいます。厚生労働省は2018年11月、公募で寄せられた1,073件の案の なかから、この取り組みの愛称として 「人生会議」 を選びました。11月30日は 「人生会議の日」とされています。

一度決めたら終わりではありません。気持ちが変わったら、何度でも話し合って変えていくことが 前提の取り組みです。話し合った内容を書き残した文書は リビング・ウィル(生前の意思 表示)と呼ばれることがあります。

ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。日本には、こうした意思表示を全国で まとめて登録する公的な登録機関はありません。 使う書式の名前(「事前指示書」「わたしの 希望」など)も、どこに保管し、誰に共有するのかという扱いも、病院や施設ごとに違います。 ですから、通院先や入院先、担当のケアマネジャーに、どの書式を使えばよいか、どこに置いて おけばよいか、誰に渡しておくべきか を確認してください。

いちばん大事なのは、書類そのものよりも、話し合った内容をご家族と医療・介護チームの どちらも知っている状態にしておくことです。

出典: 厚生労働省「『人生会議』してみませんか」・「人生会議ポータルサイト」。

運転免許の認知機能検査・臨時適性検査とは何ですか

運転免許の更新期間が満了する日の年齢が 75歳以上 の方は、更新の際に 認知機能検査 を受けることになっています。検査は「手がかり再生」(記憶)と 「時間の見当識」(時間の感覚)からなり、結果は「認知症のおそれがある」「認知症のおそれが ない」のどちらかで判定されます。

「認知症のおそれがある」と判定されると、公安委員会(警察)から連絡があり、 臨時適性検査 を受けるか、診断書提出命令 により医師の診断書を提出することに なります。認知症と診断された場合は、聴聞などの手続きを経て、免許の取消しまたは効力の 停止となります。

また、75歳以上の方が信号無視など特定の交通違反をした場合には、更新の時期とは関係なく 臨時認知機能検査 が行われます。直近の検査で「認知症のおそれがない」と判定されていた 方が「おそれがある」と判定された場合などは、臨時の高齢者講習を受けることになります。

免許の取得時・更新時には、一定の病気等の症状に関する「質問票」 を提出する必要が あります。虚偽の記載をして提出した場合には罰則があります(道路交通法第117条の4第2号)。

パーキンソン病そのものは、警察庁が挙げる「運転免許の拒否等を受けることとなる一定の 病気等」に、病名としては挙げられていません。 挙げられているのは、認知症、意識障害や 運動障害をともなうてんかん、再発性の失神、無自覚性の低血糖症、幻覚のある統合失調症、 運転に支障をきたすそううつ病、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害、アルコールや薬物の中毒、 そして身体の障害などです。ですから、診断がついたことが自動的に免許の取消しにつながる わけではありません。ただし、運転できるかどうかは 個別に判断される ものなので、 症状の程度によっては影響します。

迷ったときは、各都道府県警察の 安全運転相談窓口(全国統一の電話番号 #8080)に 相談できます。高齢のドライバーやそのご家族、身体の障害や一定の症状のために安全な運転に 支障がある方が対象で、運転を続けるための助言や、免許の自主返納とその支援についての案内も 受けられます(受付は平日の日中、通話料は自己負担)。主治医にも、運転についてどう考えるか 相談しておいてください。

出典: 警察庁「認知機能検査について」・「運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等に ついて」・「安全運転相談窓口について」、警視庁「臨時認知機能検査と臨時高齢者講習」。

障害年金でよく出てくる言葉

障害年金の書類と説明には、日常では使わない言葉が並びます。ここでつまずくと、受け取れる はずのものを受け取れないまま何年も過ぎてしまうことがあります。

初診日

その障害の原因になった病気について、はじめて医師の診療を受けた日です。 「パーキンソン病と診断された日」ではありません — 診断がつく前に、手のふるえや歩きにくさで 最初にかかった日がここに当たることがあります。整形外科でも内科でも構いません。

この日が決定的なのは、初診日にどの年金制度に入っていたかで受け取れる年金が変わる からです。国民年金なら障害基礎年金(1級・2級)、厚生年金保険なら障害厚生年金(1級・2級・3級)と 障害手当金です。3級と障害手当金は厚生年金にしかありません。

もうひとつ。保険料を納めてきたかどうかは「初診日の前日」の時点で見ます。初診日を 過ぎてからあわてて納めても、要件には入りません。

何年も前のことだとカルテが残っていないことがあります(医療機関のカルテ保存義務は5年です)。 お薬手帳、診察券、領収書、健康診断の記録などが手がかりになります。

障害認定日

障害の状態を定める日です。原則は初診日から1年6か月を過ぎた日。ただし、その1年6か月 以内に症状が固定して治療の効果が期待できない状態になった場合は、その日が障害認定日に なります。

事後重症

障害認定日には障害等級に該当しなかった方が、その後症状が重くなって該当する状態になった ときに行う請求です。ゆっくり進むパーキンソン病では、ここがいちばん使われる入り口です。

気をつける点が二つあります。年金は請求日の翌月分からで、障害認定日にさかのぼって 支給されることはありません — 迷っている間の分は戻ってきません。そして請求書は 65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。

保険料免除期間

所得が少ないなどの理由で、国民年金保険料の全額免除・一部免除・納付猶予などを承認された 期間のことです。障害年金の納付要件を数えるとき、この期間は「未納」ではなく要件を満たす側に 数えられます。払えなかった時期があっても、そのとき免除や猶予の手続きをしてあったなら、 不利にはなりません。手続きをしないまま放置した「未納」とはまったく違います。

20歳前傷病

20歳より前に初診日がある場合です。保険料を納めようのない年齢なので納付要件は問われませんが、 代わりに本人の所得による支給制限があります。

出典: 日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」・「障害基礎年金/障害厚生年金の受給要件・ 請求時期・年金額」。くわしくは障害年金の記事で 扱っています。

医療費の上限でよく出てくる言葉

ひと月に払う医療費には上限があります。その上限の話に出てくる言葉です。金額は 令和8年(2026年)8月診療分からのものです。

多数回該当

直近12か月のうちに高額療養費の支給を受けた月が3回以上あると、4回目から上限額がさらに 下がるしくみです。長く治療を続ける方の負担を軽くするためのもので、暦年(1月〜12月)ではなく 直近12か月で数えます。

年収約370万〜約770万円の方なら、1〜3回目は85,800円+1%、4回目からは44,400円になります。 2026年8月の見直しでも、この多数回該当の金額は据え置きでした。

転職や転居で加入する健康保険が変わると回数がリセットされることがあります。会社を辞めて 国民健康保険に移ったときなどは、新しい保険者に扱いを確認してください。

年間上限

2026年8月に新しくできたしくみです。月ごとの上限額とは別に、1年間の自己負担の合計にも 上限が設けられました。数える期間は8月から翌年7月までの12か月です。

毎月の上限額には届かないけれど1年を通して払い続けている、という方 — これまでいちばん 報われにくかった形 — が、ここで初めて頭打ちになります。

限度額適用認定証とマイナ保険証

高額療養費は本来「いったん払って、あとから戻ってくる」制度です。窓口での支払いを最初から 上限額までにするための方法が二つあります。

  • マイナ保険証を使う。オンライン資格確認を導入している医療機関なら、申請は不要です。
  • 限度額適用認定証を申請する。オンライン資格確認を導入していない医療機関にかかる場合や、 保険者にマイナンバーの登録をしていない場合に使います。医療機関に支払う前に手元に ある必要があるので、入院や手術が決まったらすぐ申請してください。

医療保険の世帯と世帯合算

ひとりの窓口負担では上限額に届かなくても、同じ公的医療保険に加入している家族の分を 合算して上限を超えれば、高額療養費の対象になります。これを世帯合算といいます。

ここでいう「世帯」は住民票の世帯ではなく同じ健康保険に入っている単位です。同居していても、 ご主人が会社の健康保険、奥様が国民健康保険という場合は合算できません。

70歳未満は、一つの医療機関ごとの自己負担が21,000円以上のものだけを合算します。同じ 医療機関でも医科と歯科は別に数え、入院と外来も別に数えます。70歳以上はすべて合算できます。

外来特例

70歳以上の方について、外来の自己負担だけを個人ごとに先に頭打ちにするしくみです。 世帯単位の上限額とは別に、外来分にだけ低い上限が設けられています。

年収約370万円までなら月22,000円(年間上限216,000円)、住民税非課税なら月11,000円 (年間上限96,000円)、所得が一定以下の区分は月8,000円です。

高額かつ長期

こちらは高額療養費ではなく難病医療費助成のほうの言葉です。指定難病の医療費総額(10割)が 5万円を超える月が、申請日の月以前12か月で既に6回以上ある場合に、自己負担上限額がさらに 下がります。医療保険2割負担なら、自己負担が1万円を超える月が年6回以上ある場合が目安です。 自動では切り替わりません — 領収書を持って申請してください。

高額医療・高額介護合算療養費

医療保険と介護保険の両方を1年間(8月〜翌年7月)で使い、自己負担の合計が高くなったときに、 超えた分が支給される制度です。医療も介護も使っているご家庭で、いちばん申請し忘れが多い ところです。申請しないと戻りません。

出典: 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」、全国健康保険協会 「高額療養費」「限度額適用認定証」、難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度の ご案内」。くわしくは高額療養費の記事難病医療費助成の記事で扱っています。

所得の見方でよく出てくる言葉

制度の説明で「所得区分」を見るとき、会社員の方と自営業の方では見る欄が違います。給与の 額面そのものではないので、ここを取り違えると自分の上限額を間違えます。

標準報酬月額

会社員の方(協会けんぽ・健康保険組合)が見る欄です。健康保険で保険料や給付額を計算する ときの基準になる金額で、毎年4月から6月の給与の平均をもとに決められます。

保険証にも給与明細にも書かれていないことが多いので、ご自分の額は勤め先か加入している 健康保険に確認してください。「だいたいこのくらいの年収だから」で判断すると、上限額の 区分をまたいで間違えることがあります。

旧ただし書き所得

国民健康保険の方が見る欄です。総所得金額等から住民税の基礎控除額を差し引いた額で、 給与収入そのものとは違います。市区町村の国民健康保険の窓口で確認できます。

出典: 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」、全国健康保険協会 「健康保険高額療養費支給申請書 記入の手引き」。

介護保険でよく出てくる言葉

特定疾病

介護保険は65歳以上の制度と思われがちですが、40歳から64歳の方(第2号被保険者)も、 要介護状態の原因が介護保険法施行令第2条に定める特定疾病16種類のどれかであれば、 要介護認定を申請できます。

その16種類の一覧に、厚生労働省はこう書いています。

進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病【パーキンソン病関連疾患】

つまりパーキンソン病は特定疾病に含まれます。40歳以上なら、65歳を待たずに市区町村の 窓口で申請できます。ここを知らずに「65歳になってから」と何年も待ってしまう方がいます。

要介護認定等基準時間

要介護度を決める一次判定で使う「ものさし」です。入浴・排せつ・食事などの直接生活介助、 洗濯・掃除などの間接生活介助、問題行動関連行為、歩行訓練などの機能訓練関連行為、輸液の 管理などの医療関連行為という5分野について推計される時間をいいます。

大事なのは、これが実際にご家族が介護に費やしている時間そのものではないということです。 全国どこでも同じ基準で判定するための推計値です。「うちは1日中つきっきりなのに要介護2なんて」と 感じるとき、その差はここから来ています。

区分支給限度基準額

介護保険の在宅サービスで、要介護度ごとに1か月に使える上限が決まっている額のことです。 超えた分は全額自己負担になります。

要介護度が上がるとこの額も増えます。逆に言えば、限度額いっぱいまで使っている方が新しい サービスを足したいときは、要介護度の見直し(区分変更申請)か、医療保険で受けられる サービスに移せないかを考えることになります。訪問看護がその代表です。

ケアマネジャー(介護支援専門員)

ケアプランをつくる専門職です。要介護1以上で在宅のサービスを使う場合は、ケアマネジャーの いる居宅介護支援事業者にケアプランの作成を依頼します。要支援1・2の方は地域包括支援 センターが窓口になります。施設に入る場合は、その施設のケアマネジャーが作成します。

出典: 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」・「介護保険制度における要介護認定の仕組み」・ 「介護サービス情報公表システム」。くわしくは介護保険の 記事で扱っています。

難病の重症度でよく出てくる言葉

生活機能障害度

日常生活と通院にどれくらい介助が必要かで3段階に分ける尺度です。1度は「日常生活、通院に ほとんど介助を要しない」、2度は「日常生活、通院に部分的介助を要する」、3度は「日常生活に 全面的介助を要し、独立では歩行起立不能」。

ホーン・ヤール重症度分類とは別の尺度で、難病医療費助成ではこの二つを合わせて判定します。 ヤール3度でも生活機能障害度が1度と判定されると助成の対象になりません。通院や日常の動作で どこにどれだけ介助が必要かを診察で正確に伝えることが、そのまま判定に影響します。

難病指定医と協力難病指定医

診断書にあたる臨床調査個人票は、都道府県・指定都市から指定を受けた医師しか作成できません。 新規申請と更新申請の両方を書けるのが難病指定医、更新申請の書類だけを書けるのが 協力難病指定医です。

かかりつけの先生が指定医とは限りません。行く前に確認してください。指定医の一覧は 都道府県・指定都市が公表しています。

軽症高額該当

重症度分類には届かないけれど、高額な医療を続ける必要がある方のための入り口です。 医療費総額(10割)が33,330円を超える月が、申請月以前の12か月以内に3回以上あれば 対象になります。3割負担なら、自己負担がおよそ1万円になる月が年3回以上ある場合が目安です。

根拠になるのは領収書です。診療の領収書は捨てずに取っておいてください。

出典: 難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」・「指定難病患者への医療費助成制度の ご案内」。くわしくは難病医療費助成の 記事で扱っています。

訪問看護でよく出てくる言葉

別表第七(厚生労働大臣が定める疾病等)

訪問看護は原則週3回までですが、この表に当てはまると週4日以上、かつ1日2〜3回まで 使えるようになります。表に並ぶのは末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症など 20の疾病等で、その中にパーキンソン病がこう書かれています。

パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病 (ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度の ものに限る。))

進行性核上性麻痺と大脳皮質基底核変性症は重症度の条件なしで対象です。そしてこの線引きは 難病医療費助成の重症度分類と同じ線なので、受給者証をお持ちの方はここにも当てはまって いる可能性が高いということになります。

訪問看護指示書と特別訪問看護指示書

訪問看護は主治医の訪問看護指示書がなければ始められません。ご自分から主治医に 「訪問看護を使いたい」と伝えるところが出発点です。

特別訪問看護指示書は、急に状態が悪くなったときなどに、通常の指示書とは別に出される 書類です。この期間中は週4日以上の訪問ができます。基本的に月1回、最長14日間です。 別表第七に当てはまらない方でも、転倒後や肺炎のあとなど一時的に頻回の訪問が必要なときに 使えます。

難病等複数回訪問看護と長時間訪問看護加算

別表第七などに当てはまる方が1日に2〜3回の訪問を受けることを、難病等複数回訪問看護と いいます。また訪問1回の時間は基本的に30分以上90分未満ですが、90分を超えた場合は 長時間訪問看護加算として保険で対応できます。どちらも条件があるので、必要になったら 訪問看護ステーションに確認してください。

出典: 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等」別表第七、厚生労働省「訪問看護のしくみ」。 くわしくは訪問看護の記事で扱っています。

身体障害者手帳と障害福祉でよく出てくる言葉

体幹機能障害

頸部、胸部、腹部および腰部を含む部分の機能障害です。パーキンソン病で身体障害者手帳を 申請するとき、「肢体不自由」の中でここが見られることが多くあります。

判定でみられるのは各部の運動だけではありません。体位の保持 — 座った姿勢や立った姿勢を 保っていられるか — も重要な要素とされています。四肢体幹の麻痺、運動失調、変形などによる 運動機能障害が対象になります。

障害支援区分

障害の多様な特性や心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを、区分1から 区分6までの6段階で表したものです。障害福祉サービスの介護給付を利用する場合に市町村が 認定します。

介護保険の要介護度とは別のしくみです。名前も数字も似ていますが、根拠になる法律も 判定の方法も違います。訓練等給付(就労移行支援など)には区分の認定が要らないものもあります。

応能負担

障害福祉サービスの利用料の決め方です。使った量ではなく家計が払える力に応じてひと月の 上限額が決まります。負担上限月額は次のとおりです。

区分負担上限月額
生活保護受給世帯0円
市町村民税非課税世帯0円
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)9,300円
上記以外37,200円

ここでいう「世帯」は住民票の世帯ではありません。18歳以上の方は、ご本人と配偶者だけで 判断します(施設に入所する18・19歳を除く)。同居しているご家族の所得は関係しません — 親や 子どもの収入で上限額が上がることはない、ということです。

サービス等利用計画と相談支援専門員

障害福祉サービスを申請すると、市町村からサービス等利用計画案の提出を求められます。 これをつくるのが相談支援専門員です。介護保険でいうケアマネジャーにあたる役割で、 支給決定のあとも計画を見直します(モニタリング)。

厚生労働省は相談支援専門員の役割を、ケアマネジメントにより「障害者(児)の自立した生活を支え、 障害者(児)の抱える課題の解決や適切なサービス利用に向けて、きめ細かく支援する」と説明して います。どこに相談すればいいか分からないときは、市町村の窓口か基幹相談支援センターで 案内してもらえます。

高額障害福祉サービス等給付費

ご本人と配偶者の世帯で、障害福祉サービスの負担額の合算が基準額を超えたときに支給されます。 大事なのは、介護保険もあわせて使っている場合は介護保険の負担額も合算するという点です。 償還払い(あとから戻る形)なので、申請しないと戻りません

指定自立支援医療機関

自立支援医療(更生医療など)を受けられるのは、都道府県知事等から指定を受けた医療機関 だけです。かかりつけの病院が指定を受けているとは限りません。手術や治療を決める前に、その 医療機関が指定を受けているかを確認してください — ここを確認せずに進めると、同じ治療でも 制度が使えないことになります。

難病等対象疾病

政令で定められた、身体障害者手帳がなくても障害福祉サービス・補装具費支給・相談支援 などの対象になる疾病の一覧です。平成25年4月に130疾病から始まり、その後も対象疾病は 減ることなく増え続けています(令和7年4月時点で376疾病)。

パーキンソン病は、厚生労働省が公表した平成27年7月時点の一覧で「241 パーキンソン病」 として明記されており、以来対象から外れたことはありません。「手帳を取っていないから制度は 使えない」と思い込まず、対象疾病に該当する診断書があれば申請できないか確認してください。

身体障害者更生相談所

都道府県・指定都市に置かれている専門機関です。更生医療では、給付を決める前にここの判定を 受けるのが原則とされています。市町村の窓口に申請すると、そこから判定に回ります。

重度かつ継続

自立支援医療で、費用が高額な治療を長期にわたり続けなければならない方の負担上限額を さらに下げるしくみです。難病医療費助成の「高額かつ長期」とは別の制度の、別の言葉です — 名前が似ているので混同しないでください。

更生医療でこの扱いになるのは、腎臓機能・小腸機能・免疫機能・心臓機能障害(心臓移植後の 抗免疫療法に限る)・肝臓の機能障害(肝臓移植後の抗免疫療法に限る)の方です。肢体不自由は この一覧に入っていません。

ただしもう一つ入口があります。疾病等にかかわらず、医療保険の多数回該当の方も 対象になります。ひと月の医療費が高い状態が続いている方は、ここに当てはまらないか確認して みてください。

出典: 厚生労働省「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」、厚生労働省 「障害福祉サービスの内容」・「障害者の利用者負担」・「相談支援」・「自立支援医療の患者負担の 基本的な枠組み」・「福祉・介護 障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」・「『障害者総合支援法』の 対象となる疾病を332に拡大します」、大分県「自立支援医療(更生医療)の概要」、札幌市「障害者 総合支援法の対象疾病(難病等)について」。くわしくは 身体障害者手帳の記事障害福祉サービスの記事補装具費支給制度の記事で扱っています。

働くことに関する制度の言葉

産業医

事業場で労働者の健康管理を行う医師です。労働者数50人以上の事業場では選任が義務づけ られています。50人未満の事業場では、健康管理等を行う医師が同じ役割を担い、厚生労働省の 指針ではこの両方をまとめて「産業医等」と呼んでいます。

主治医が病気を診る人だとすれば、産業医はその体で今の仕事ができるかを見る人です。 どちらか一方ではなく、両方に相談する場面があります。

両立支援コーディネーター

患者さんに寄り添い、事業場と医療機関の間の情報の橋渡しをしながら、継続的な相談支援を 行う役割の人です。労働者健康安全機構が基礎研修を実施しており、企業・医療機関・産業保健 総合支援センターなどで活動しています。

ご本人に代わって会社と交渉する立場ではありません。あくまで話が通じるように間に立つ 役割です。

産業保健総合支援センター

47都道府県すべてに設置されている、事業者と労働者の産業保健を支援する機関です。労働者 健康安全機構が運営しており、治療と仕事の両立支援についての相談窓口を設けています。会社に 相談しにくいとき、外部の入口になります。

時間単位の年次有給休暇

労働基準法にもとづく年次有給休暇は1日単位が原則ですが、労使協定を結ぶことで1時間単位で 取得できるようになります(年5日の範囲内)。通院や短時間の治療に使いやすい形です。ご自分の 会社に制度があるかどうかは就業規則で確認できます。

試し出勤制度

長期間休業していた方の円滑な職場復帰のために、勤務時間や勤務日数を短縮して試験的に出勤 する制度です。復帰に不安がある方にも、受け入れる職場の側にも準備の時間ができます。

傷病手当金

健康保険から支給される、病気やけがで働けない間の所得保障です。支給期間は支給を開始した 日から通算して1年6か月で、令和4年1月から通算化されたため、いったん復帰してから同じ 病気で再び休むことになっても、残りの期間を使えます。

障害厚生年金をさかのぼって受給できることになった場合は、受給済みの傷病手当金が調整されます。 自営業・フリーランスが入る国民健康保険には、この制度が原則としてありません。

出典: 厚生労働省「治療と仕事の両立支援ナビ」・「治療と就業の両立支援指針」、全国健康保険協会 「傷病手当金」。くわしくは傷病手当金の記事で、 働き方に関する相談窓口は治療と仕事の 両立支援の記事で扱っています。

任意継続被保険者

会社を退職したあとも、それまで加入していた健康保険に最長2年間個人で加入し続けられる 制度です。保険料は全額自己負担になりますが、退職前から続く傷病の傷病手当金は資格喪失後の 継続給付として受けられます。ただし任意継続被保険者になったあとに新しく発生した 病気・けがについては、傷病手当金は支給されません。

出典: 全国健康保険協会「傷病手当金」。くわしくは 傷病手当金の記事で扱っています。

相談できる窓口の名前

制度の記事に出てくる窓口の名前です。どこに行けばいいのか分からないときの入口として 覚えておいてください。

地域包括支援センター

市区町村が設置する、高齢者の暮らし全般の相談窓口です。介護保険の要支援1・2の方の ケアプランはここが担当します。介護保険の申請の相談、訪問看護ステーションやサービスの紹介、 ご家族の困りごとまで、まず持ち込む先として使えます。

難病相談支援センター

都道府県・指定都市ごとに置かれている、難病の患者さんとご家族のための相談窓口です。 難病情報センターの説明では、療養生活・日常生活上の相談や各種公的手続の相談支援、患者会 などの自主的な活動への支援、講演会や研修の開催、そして就労支援関係機関と連携した就労 相談までを行うとされています。

医療費助成の対象にならなかった方でも使えます。制度の谷間で行き先が分からなくなったときの 相談先です。

出典: 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」、難病情報センター「難病相談支援センター」。

介護休業給付金

介護休業を取得した雇用保険の被保険者に、休業開始時賃金日額×支給日数×67%で計算される 給付金です。休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12か月以上あることが 要件で、対象家族1人につき通算93日、3回までが支給の上限です。育児休業とちがい、この休業中は 社会保険料が免除されません。

出典: 厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」。くわしくは 介護休業・介護休暇の記事で扱っています。

税の控除でよく出てくる言葉

所得控除

税金がかかる所得の計算のときに、収入から一定額を差し引ける仕組みです。控除額の分だけ 税金がかかる所得が減り、結果として納める税金が少なくなります。医療費控除・障害者控除は どちらもこの所得控除の一種です。

セルフメディケーション税制

対象となる市販薬(スイッチOTC医薬品等)の年間購入額が12,000円を超えた分を所得控除する 制度です。通常の医療費控除とは選択制で、同じ年に両方は使えません。医療費全体が 高額になりやすい方は、通常の医療費控除のほうが有利なことが多いです。

出典: 国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」。くわしくは 医療費控除・障害者控除の記事で 扱っています。