看護師さんに家に来てもらう「訪問看護」には、回数の決まりがあります。厚生労働省の資料に こう書かれています。

基本的に利用回数は、週3回まで、利用時間は、1回30分から90分以内です。

ところが、この週3回という壁が外れる人たちがいます。厚生労働大臣が定める疾病等 (別表第七)に当てはまる場合です。

厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)や気管カニューレ等の特別な管理が必要とする方 (別表第8)や病状の悪化等により特別訪問看護指示期間にある方は、週4日以上、かつ、 1日に2〜3回の難病等複数回訪問看護での利用ができます。

そしてパーキンソン病は、この別表第七に名指しで書かれています。

以下は2026年8月時点で、厚生労働省の告示と公式資料を実際に確認して整理したものです。 診療報酬の決まりは2年ごとに見直されますので、お読みになっている時期とこの日付を見比べて ください。

条文にどう書かれているか

別表第七に並んでいる20の疾病等のうち、パーキンソン病はこう書かれています。

パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病 (ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度の ものに限る。))

ここから読み取れることが二つあります。

病名重症度の条件
パーキンソン病ヤール3度以上 かつ 生活機能障害度Ⅱ度またはⅢ度
進行性核上性麻痺条件なし(診断がつけば対象)
大脳皮質基底核変性症条件なし(診断がつけば対象)
この線引きに見覚えがあるかもしれません。難病医療費助成の重症度分類とまったく同じ線です(ヤール3度以上かつ生活機能障害度2度以上)。つまり難病医療費助成の受給者証をお持ちの方は、この別表第七にも当てはまっている可能性が高いということです。受給者証があるのに訪問看護を週3回で我慢している、ということが起こり得ます。

念のため、二つの尺度を並べておきます。どちらも難病指定医都道府県・指定都市から指定を受けた医師です。難病医療費助成の臨床調査個人票を作成できます。訪問看護指示書は指定医でなくても主治医が書けます。詳しく見るや主治医が判断するものです。

ホーン・ヤール重症度分類状態
3度軽〜中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害あり。日常生活に介助不要
4度高度障害を示すが、歩行は介助なしにどうにか可能
5度介助なしにはベッド又は車椅子生活
生活機能障害度日常生活と通院にどれくらい介助が必要かで3段階に分ける尺度です。ホーン・ヤール重症度分類とは別の尺度で、この二つを合わせて判定します。詳しく見る状態
2度(Ⅱ度)日常生活、通院に部分的介助を要する。
3度(Ⅲ度)日常生活に全面的介助を要し、独立では歩行起立不能。

何ができるようになるのか

原則別表第七に該当するとき
回数週3回まで週4日以上
1日の訪問1回1日2〜3回難病等複数回訪問看護別表第七などに当てはまる方が1日に2〜3回の訪問を受けることです。回数や条件は診療報酬の決まりによります。詳しく見る
1回の時間30分〜90分以内同じ(90分を超えると長時間訪問看護加算訪問1回の時間は基本的に30分以上90分未満ですが、90分を超えた場合に保険で対応できる加算です。条件があるので訪問看護ステーションに確認してください。詳しく見る

「毎日でも来てもらえる」という意味ではありません。必要だと主治医が認めた分だけです。 ただ、週3回という上限そのものが外れるので、たとえば朝のオフ薬が効いていない時間帯のことです。動きにくさや固さが強く出ます。逆に薬が効いている時間帯を「オン」と言います。詳しく見るの時間帯に 起き上がりと着替えを手伝ってもらい、夕方にもう一度来てもらう、といった組み立てができます。

介護保険を使っていても、こちらが優先されます

ここがいちばん誤解されるところです。訪問看護には医療保険のものと介護保険のものがあり、 原則は介護保険が優先です。厚生労働省の説明はこうです。

介護保険法の実施に伴い、在宅の要支援者・要介護者等に認定された人に対して訪問看護の 提供となり、介護保険からの給付が最優先になりますが、別に厚生労働大臣が定める疾病等は、 医療保険における訪問看護の提供を行います。

つまり要支援・要介護の認定を受けていても、別表第七に該当すれば医療保険の訪問看護になる ということです。

これには副産物があります。訪問看護が医療保険から出るということは、介護保険の「区分支給限度基準額」を訪問看護で使わなくてよくなるということです。空いたその枠を、ヘルパーさんやデイサービス、福祉用具に回せます。介護保険の限度額がいっぱいで困っている方は、まずここを確認してください。

区分支給限度基準額介護保険の在宅サービスで、要介護度ごとに1か月に使える上限が決まっている額のことです。超えた分は全額自己負担になります。詳しく見るのしくみは 介護保険の記事でくわしく扱っています。 → 介護保険制度のしくみをくわしく

どうやって始めるのか

1
主治医に「訪問看護を使いたい」と伝える
ここが出発点です。医師のほうから提案されるのを待っていると、話が始まらないまま何年も過ぎます。困っていることを具体的に伝えてください — 「朝、起き上がるのに時間がかかる」「薬の管理が自分では難しくなってきた」「入浴が不安」など、生活の場面で伝えるのがいちばん伝わります。
2
主治医が訪問看護指示書を書く
訪問看護は主治医の「訪問看護指示書」がなければ始められません。別表第七に該当することもこの書類で示されます。ヤールの重症度と生活機能障害度がどう記載されるかが、週4日以上使えるかどうかを分けます。
3
訪問看護ステーションを決める
お住まいの地域のステーションから選びます。どこがあるか分からないときは、主治医・地域包括支援センター・ケアマネジャー・難病相談支援センターが教えてくれます。パーキンソン病の方を見た経験があるかを聞いてみてください。
4
訪問看護計画を立てて始める
ステーションが指示書を受け取り、訪問看護計画をつくって訪問が始まります。何時に来てもらうかは相談できます。オフの時間帯に合わせてもらえるかどうかは、実際の生活で差が大きいところです。

急に悪くなったとき — 特別訪問看護指示書

別表第七に当てはまらない方でも、一時的に頻回の訪問が必要になることがあります。転倒後、 肺炎のあと、薬の調整で状態が不安定なときなどです。

訪問看護が、週3回まで利用できない方で、急性増悪等で週4日以上の頻回な訪問看護が必要と なった場合に、主治医から訪問看護指示書とは別に特別訪問看護指示書で対応できます。

特別訪問看護指示書急に状態が悪くなったときなどに、主治医が通常の訪問看護指示書とは別に出す書類です。この期間中は週4日以上の訪問ができます。詳しく見る基本的に月1回、最長14日間です。「今週だけでも来てほしい」というときに使えるしくみが あることを、覚えておいてください。

リハビリも訪問看護の枠で来ます

訪問看護というと看護師さんだけを思い浮かべますが、そうではありません。

訪問看護として、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がリハビリテーションを行うことも あります。

パーキンソン病では、これがとても大きい意味を持ちます。歩行や姿勢は理学療法士、着替え・ 食事などの動作は作業療法士、話しにくさや飲み込みは言語聴覚士が担当します。通院してリハビリを 受けるのが難しくなってきた方は、家に来てもらう形があることを主治医に相談してみてください。

お金のこと

医療保険の訪問看護ですので、窓口負担はご自分の医療保険の負担割合(3割・2割・1割)です。 そのうえで、次の二つを確認してください。

難病情報センターは指定医療機関をこう説明しています。

指定医療機関とは、都道府県・指定都市から指定を受けた病院・診療所、薬局、訪問看護 ステーション等です。

つまり指定を受けたステーションを選べば、自己負担上限額管理票に記入してもらえる形に なり得ます。ステーションを決めるときに「指定医療機関になっていますか」と一言確認して ください。ここを確認せずに決めてしまうと、あとから変えるのは手間です。

高額療養費のほうは別の記事で扱っています。 → 高額療養費制度のしくみをくわしく

なお、複数の訪問看護ステーションを組み合わせて使えるかどうかには条件があり、診療報酬の 改定で変わることがあります。必要になったときは、ステーションか主治医にその時点の扱いを 確認してください。

こんなときは

状況どうするか
週3回では足りないと感じていますヤール3度以上・生活機能障害度Ⅱ度以上なら別表第七に当たります。主治医に指示書での記載を相談してください
難病医療費助成の受給者証を持っています助成の重症度分類と別表第七は同じ線引きです。ほぼ該当します。まず主治医に確認を
要介護認定を受けているので介護保険だと思っていました別表第七に該当すれば医療保険が優先されます。介護保険の限度額もその分空きます
介護保険の限度額がいっぱいです訪問看護を医療保険に移せないか確認してください。空いた枠を他のサービスに回せます
ヤール2度と言われています別表第七には当たりません。ただし急に悪くなったときは特別訪問看護指示書(月1回・最長14日)があります
進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症と診断されました重症度の条件なしで別表第七の対象です
通院してのリハビリがつらくなってきました理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問看護として家に来る形があります
どのステーションを選べばいいか分かりません主治医・地域包括支援センター市区町村が設置する高齢者の暮らし全般の相談窓口です。介護保険の要支援1・2の方のケアプランもここが担当します。詳しく見る・ケアマネジャー・難病相談支援センター都道府県・指定都市ごとに置かれている、難病の患者さんとご家族のための相談窓口です。療養生活の相談から就労相談までを扱います。詳しく見るに聞いてください。「指定医療機関か」も確認を

患者さんとご家族へ

この制度でいちばんもったいないのは、該当しているのに知らないまま週3回で我慢している ことです。難病医療費助成の受給者証をお持ちなら、線引きは同じですから、すでに条件は 満たしているはずです。

そしてもう一つ。訪問看護はご自分から言わないと始まりません。主治医は診察室で見える 範囲のことしか分かりません。朝の起き上がりに何分かかるか、入浴のときに誰がどう支えているか、 夜に何度起きているか — そういう家の中のことは、伝えて初めて材料になります。ご家族が 気づいたことをメモして持って行くと、指示書の中身が変わります。

このページは行政の決定に代わるものではありません。記載した基準は2026年8月時点で 厚生労働省の告示・公式資料および難病情報センターで確認したものです。診療報酬の決まりは 2年ごとに見直されますので、ご自分の適用については主治医と訪問看護ステーションに ご確認ください。