身体障害者手帳の記事を読んで、 「まだ等級に届かないから、福祉のサービスは自分には関係ない」と思われた方がいるかもしれません。 そこが、この制度でいちばん取りこぼされているところです。

厚生労働省のリーフレットにこう書かれています。

障害福祉サービス等の対象となる難病が、369疾病から376疾病へと見直しが行われます。 対象となる方は、障害者手帳をお持ちでなくても、必要と認められた支援が受けられます

つまり手帳の等級に届かなくても、診断がついていれば使える制度がもう一つある、という ことです。以下は2026年8月時点で、厚生労働省の公式資料を実際に確認して整理したものです。

パーキンソン病は一覧に載っています

対象疾病は令和7年4月1日から376疾病です。厚生労働省が公表している一覧に、次の病名が あります。

番号病名
165進行性核上性麻痺
218大脳皮質基底核変性症
222多系統萎縮症
272パーキンソン病

重症度の条件は書かれていません。難病医療費助成の ようにヤール3度以上という線引きがあるわけではなく、対象疾病であることが確認できれば 申請できます

もうひとつ知っておいてよいことがあります。376のうち29疾病は「障害者総合支援法独自の対象疾病」で、指定難病ではないものも含まれています。そして厚生労働省は「難病法にもとづき指定難病の方に発行される『登録者証』をお持ちでない方でも、障害者総合支援法の独自の対象疾病の方は障害福祉サービスの利用が可能です」と書いています。医療費助成の対象外だったからここも駄目だろう、と決めつけないでください。

どんなサービスがあるのか

大きく介護給付(日々の暮らしを手伝ってもらうもの)と訓練等給付(訓練・仕事に つながるもの)に分かれます。パーキンソン病の方が実際に使う場面が多いものを挙げます。

サービス内容障害支援区分障害の多様な特性や心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを、区分1から区分6までの6段階で表したものです。介護保険の要介護度とは別のしくみです。詳しく見る
居宅介護(ホームヘルプ)入浴・排せつ・食事の介助など、暮らし全般の援助区分1以上
重度訪問介護重度の方に、介助と外出時の移動支援をまとめて提供区分4以上
短期入所(ショートステイ)一時的に泊まって介助を受ける。ご家族の休息にも使える区分1以上
生活介護日中、施設で介助を受けながら創作・生産活動をする区分3以上
自立訓練(機能訓練)身体機能の維持・回復のための訓練不要
就労移行支援就職に向けた訓練と就職活動の支援(65歳未満)不要
就労継続支援A型・B型働く場の提供。A型は雇用契約あり、B型は雇用契約なし不要
就労定着支援就職して6か月以降の職場定着の支援不要

このほかに、補装具費の支給や日常生活用具の給付も同じ法律の枠組みにあります。歩行器や 手すりなど、介護保険の福祉用具と品目が重なる ものは、どちらで受けるかを窓口で整理してもらうことになります。補装具費支給は 身体障害者手帳がなくても、難病等対象疾病政令で定められた、手帳がなくても障害福祉サービス・補装具費支給・相談支援などの対象になる疾病の一覧です。パーキンソン病は平成27年7月時点の一覧に含まれており、以来対象から外れたことはありません。詳しく見るに該当すれば申請できます。 → 補装具費支給制度をくわしく

表の右端を見てください。訓練系・就労系のサービスは障害支援区分の認定が要りません。厚生労働省のリーフレットにも「訓練系・就労系サービス等は障害支援区分の認定を受ける必要はありません」と書かれています。区分認定は時間がかかる手続きなので、まず就労支援や機能訓練だけを使いたいという場合は、そこを飛ばして相談できます。

申請の流れ

1
対象疾病だと分かる書類をもらう
厚生労働省の案内は「対象疾病に罹患していることがわかる証明書(診断書など)を持参し」としています。主治医に診断書を書いてもらってください。指定難病の登録者証をお持ちならそれも使えますが、持っていなくても申請できます。
2
市区町村の障害福祉の窓口に申請する
介護保険が市区町村の介護保険担当なのに対し、こちらは障害福祉の担当窓口です。同じ役所でも窓口が違うので、「障害福祉サービスを申請したい」と伝えてください。ご自分の病気が対象かどうかも、ここで確認できます。
3
サービス等利用計画案を出す
市町村から計画案の提出を求められます。これをつくるのが相談支援専門員です。介護保険のケアマネジャーにあたる役割で、支給決定のあとも定期的に計画を見直します。どこに頼めばよいか分からないときは窓口か基幹相談支援センターで案内してもらえます。
4
障害支援区分の認定を受ける(必要なサービスのみ)
介護給付を使う場合に認定を受けます。訓練系・就労系だけを使うなら、この手続きは要りません。
5
支給決定を受けてサービスを使う
市町村が支給を決定すると、決まった量の範囲でサービスを使えるようになります。

利用料 — 非課税世帯なら0円です

応能負担使った量ではなく、家計が払える力に応じてひと月の上限額が決まる考え方です。障害福祉サービスの利用料はこの方式で決まります。詳しく見るという 考え方で、ひと月の上限額が決まります。

区分負担上限月額
生活保護受給世帯0円
市町村民税非課税世帯0円
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)9,300円
上記以外37,200円
ここでいう「世帯」は住民票の世帯ではありません。18歳以上の方は、ご本人と配偶者だけで判断します。同居しているお子さんやご両親の収入は関係ありません — 「息子と同居しているから対象外だろう」と思って申請しない方がいますが、それは違います。

医療保険や介護保険とあわせて負担が重くなったときのために、 高額障害福祉サービス等給付費ご本人と配偶者の世帯で、障害福祉サービスの負担額の合算が基準額を超えたときに支給されます。介護保険もあわせて使っている場合は介護保険の負担額も合算します。償還払いなので申請が必要です。詳しく見るが あります。厚生労働省はこう書いています。

障害者と配偶者の世帯で、障害福祉サービスの負担額(介護保険も併せて利用している場合は、 介護保険の負担額も含む。)の合算額が基準額を超える場合は、高額障害福祉サービス等給付費が 支給されます(償還払いの方法によります)

介護保険の負担額も合算できるのがここの要点です。そして償還払い、つまり 申請しないと戻りません

介護保険を使えるようになったら、どうなるのか

パーキンソン病は特定疾病介護保険は原則65歳以上の制度ですが、40歳から64歳の第2号被保険者も、要介護状態の原因が特定疾病16種類のどれかであれば申請できます。パーキンソン病関連疾患はその一つです。詳しく見るなので、 40歳以上なら介護保険も申請できます。すると二つの制度が重なります。

原則としては介護保険が優先されます。ただし一律に優先されるわけではありません — ここは身体障害者手帳の記事でくわしく扱っています。 → 介護保険との優先関係をくわしく

実務でよく出てくるのは次の形です。

状況見るところ
介護保険に同じサービスがある(ホームヘルプなど)原則は介護保険から使います
介護保険にないサービス(就労支援・重度訪問介護の長時間利用など)障害福祉サービスから使えます
介護保険の区分支給限度基準額介護保険の在宅サービスで、要介護度ごとに1か月に使える上限が決まっている額のことです。超えた分は全額自己負担になります。詳しく見るでは足りない足りない分を障害福祉サービスで補える場合があります

判断は市町村が個別に行います。「介護保険があるからこちらは使えません」と一言で言われたら、 なぜそう判断したのかを聞いてください。一律に決めてよいことにはなっていません。

三つの制度は目的が違います

混乱しやすいので並べておきます。どれか一つを選ぶものではなく、要件に当てはまれば重ねて 使えます

制度何を軽くするか入口
難病医療費助成パーキンソン病の医療費都道府県・指定都市(保健所等)
介護保険介護のサービス(40歳以上)市区町村の介護保険窓口
障害福祉サービス暮らしと仕事の支援(手帳不要)市区町村の障害福祉窓口

用意するもの

必要書類は自治体によって案内が違うことがあります。行く前に窓口へ電話で確認しておくと、 書類の不足で二度足を運ばずにすみます。

こんなときは

状況どうするか
身体障害者手帳を持っていません手帳がなくても対象です。診断書を持って市区町村の障害福祉窓口へ
難病医療費助成の重症度分類に届きませんでしたこちらには重症度の条件がありません。別の制度なので、あらためて相談してください
指定難病の登録者証を持っていません登録者証がなくても申請できます
就労支援だけを使いたいです訓練系・就労系は障害支援区分の認定が要りません。区分認定を待たずに相談できます
息子と同居しているので所得で外れると思います18歳以上はご本人と配偶者だけで判断します。同居のご家族の収入は関係ありません
介護保険を使っているので関係ないと思っていました介護保険にないサービスは障害福祉から使えます。限度額が足りないときも相談してください
家族が休みたいのですが短期入所(ショートステイ)があります。ご家族の休息のために使えます
どこに相談すればいいか分かりません市区町村の障害福祉窓口、基幹相談支援センター、難病相談支援センター都道府県・指定都市ごとに置かれている、難病の患者さんとご家族のための相談窓口です。療養生活の相談から就労相談までを扱います。詳しく見るが入口です

患者さんとご家族へ

この制度で取りこぼしが起きるのは、決まって「手帳がないから」という理由です。手帳は 身体障害者福祉法の制度、こちらは障害者総合支援法の制度で、根拠になる法律から違います。 等級に届かなかった通知を受け取った日と、この制度に申請できる日は、まったく別の話です。

そしてもう一つ。窓口が介護保険とは別だということも覚えておいてください。同じ役所の 中でも担当が違うので、「介護保険の申請をしたことがあるから、そこで全部聞いたはず」とは なりません。障害福祉の窓口で、もう一度あらためて聞いてみてください。

このページは行政の決定に代わるものではありません。記載した内容は2026年8月時点で 厚生労働省の公式資料で確認したものです。対象疾病の一覧や金額は改定されますので、 ご自分の適用については、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。