パーキンソン病は、難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)にもとづく指定難病6です。 支給認定を受けると、指定医療機関でのパーキンソン病の医療費について、所得に応じた月額の 上限までしか払わなくてよくなります。

ただし、この制度は「診断がついたら自動的に使える」ものではありません。診断基準と重症度分類という 二つの関門があり、そこを知らないまま窓口に行くと「対象外」と言われて終わってしまいます。 以下は2026年8月時点で、難病情報センター(公益財団法人 難病医学研究財団)と厚生労働省の 公式ページを実際に確認して整理したものです。金額や基準額は改定されますので、お読みになっている 時期とこの日付を見比べてください。

対象になる二つのルート

難病情報センターは、対象になる方をこう書いています。指定難病と診断されたうえで、

  1. 重症度分類に照らして病状の程度が一定程度以上であること、または
  2. 軽症高額該当重症度分類には届かないけれど高額な医療を続ける必要がある方のための入口です。医療費総額(10割)が33,330円を超える月が、申請月以前の12か月以内に3回以上あれば対象になります。詳しく見るであること(重症度分類を満たさないが、高額な医療の継続が必要な方)

このどちらかに当てはまれば助成を受けられます。1に届かない方のための2がある、という構造です。 順番に見ていきます。

診断基準は4項目すべて

パーキンソン病(指定難病6)の診断基準は次のとおりです。

以下の診断基準を満たすものを対象とする。(Probableは対象としない。)

  1. パーキンソニズムがある。
  2. 脳CT又はMRIに特異的異常がない。
  3. パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露がない。
  4. 抗パーキンソン病薬にてパーキンソニズムに改善がみられる。

以上4項目を満たした場合、パーキンソン病と診断する(Definite)。

4項目すべてを満たしたDefinite(確実)だけが対象で、Probable(疑い)は対象外です。 この判定と書類の作成は、都道府県・指定都市から指定を受けた難病指定医都道府県・指定都市から指定を受けた医師です。新規申請と更新申請の両方の臨床調査個人票を作成できる「難病指定医」と、更新申請の書類だけを作成できる「協力難病指定医」の2種類があります。詳しく見るが行います。 かかりつけの先生が指定医かどうかは、都道府県・指定都市の一覧で確認できます。

重症度分類 — 「かつ」の両方を満たすこと

ここが助成の可否を分ける中心です。パーキンソン病の重症度分類はこう定められています。

ホーン・ヤール重症度分類3度以上かつ生活機能障害度2度以上を対象とする

運動症状の進行度をみるホーン・ヤール重症度分類と、介助がどれくらい必要かをみる生活機能障害度日常生活と通院にどれくらい介助が必要かで3段階に分ける尺度です。ホーン・ヤール重症度分類とは別の尺度で、難病医療費助成ではこの二つを合わせて判定します。詳しく見るという、 別の二つの尺度を両方満たす必要があります。それぞれの段階は次のとおりです。

ホーン・ヤール重症度分類状態
0度パーキンソニズムなし
1度一側性パーキンソニズム
2度両側性パーキンソニズム
3度軽〜中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害あり。日常生活に介助不要
4度高度障害を示すが、歩行は介助なしにどうにか可能
5度介助なしにはベッド又は車椅子生活
生活機能障害度状態
1度日常生活、通院にほとんど介助を要しない。
2度日常生活、通院に部分的介助を要する。
3度日常生活に全面的介助を要し、独立では歩行起立不能。
見落としやすいのがヤール3度の定義です。3度は「日常生活に介助不要」と書かれていますが、生活機能障害度2度は「日常生活、通院に部分的介助を要する」です。ヤール3度でも生活機能障害度が1度と判定されると、「かつ」を満たさないため助成の対象になりません。逆に言えば、通院や日常の動作でどこにどれだけ介助が必要かを診察で正確に伝えることが、そのまま判定に影響します。

重症度分類に届かないとき — 軽症高額該当

ヤール2度でも、薬剤費や検査費で毎月それなりの金額がかかる方はいます。そのための仕組みが 軽症高額該当です。難病情報センターの説明はこうです。

症状の程度が疾病ごとの重症度分類等に該当しない軽症者でも、高額な医療を継続することが必要な人は、 医療費助成の対象となります。

「高額な医療を継続することが必要」とは、医療費総額(10割)が33,330円を超える月が支給認定申請月 以前の12月以内に3回以上ある場合をいいます。

数字を押さえておきます。

項目内容
基準額医療費総額(10割)が33,330円を超える月
回数申請月以前の12か月以内に3回以上
3割負担のときの目安自己負担がおよそ1万円となる月が年3回以上
数えない費用入院時食事(生活)療養の標準負担額は33,330円に含みません

12か月の起算にも決まりがあります。(1)申請月から起算して12月前の月、または(2)難病指定医が パーキンソン病を発症したと認めた月、このいずれか後の月から申請日の属する月までが対象期間です。 発症が最近の方は、数えられる期間そのものが短くなる、ということです。

領収書が根拠になりますので、診療の領収書は捨てずに保管してください。軽症高額該当を確認する 書類として提出を求められます。

自己負担上限額(月額)

支給認定を受けると、パーキンソン病の医療について払う額に月額の上限がつきます。外来と入院を 合算した額に対する上限で、指定医療機関では上限月額の範囲内で医療費の2割(又は1割)が 徴収される仕組みです。

階層区分階層区分の基準(かっこ内は夫婦2人世帯の年収の目安)一般高額かつ長期人工呼吸器等装着者
生活保護0円0円0円
低所得I市町村民税非課税(世帯)/本人年収 826,500円まで2,500円2,500円1,000円
低所得II市町村民税非課税(世帯)/本人年収 826,500円超5,000円5,000円1,000円
一般所得I市町村民税 課税以上7.1万円未満(約160万円〜約370万円)10,000円5,000円1,000円
一般所得II市町村民税 7.1万円以上25.1万円未満(約370万円〜約810万円)20,000円10,000円1,000円
上位所得市町村民税 25.1万円以上(約810万円〜)30,000円20,000円1,000円

入院時の食費は全額自己負担です。上限額の中には入りません。

低所得IとIIを分ける本人年収の基準額は改定されます。826,500円は令和8年(2026年)7月申請分 からの基準額で、それ以前は809,000円でした。ご自分の申請時点でどちらが適用されるかは、 都道府県・指定都市の窓口でご確認ください。

「高額かつ長期」は別に申請します

一般所得I以上の方で、医療費が長く高額に続く場合は上限額がさらに下がります。要件は 高額かつ長期指定難病および小児慢性特定疾病にかかる月ごとの医療費総額(10割)が5万円を超える月が、申請日の月以前12か月で既に6回以上ある患者さんが対象です。医療保険2割負担なら、自己負担が1万円を超える月が年6回以上ある場合が目安になります。詳しく見ると呼ばれ、 医療費総額(10割)が5万円を超える月が申請日の月以前12か月で既に6回以上あることです。 2割負担なら、自己負担が1万円を超える月が年6回以上ある場合が目安です。

上の表の「一般」から「高額かつ長期」の列に移るには、該当することを示す領収書等が必要です。 自動では切り替わりません。

人工呼吸器等装着者は月額1,000円

生命の維持に必要な装置を継続して常時装着する必要があり、かつ日常生活動作が著しく制限されている 方は、所得階層にかかわらず月額1,000円です。気管切開口・鼻マスク・顔マスクを介して人工呼吸器 を装着している神経難病等の患者さんが具体例として挙げられています。要件に合うかは個別に判断されます。

上限額は「管理票」で管理されます

上限額は、受診した複数の指定医療機関の負担額を合算して適用されます。そのため受給者証と一緒に 「自己負担上限額管理票」が交付され、受診のつど医療機関に徴収額を記入してもらいます。 累積額が上限月額に達すると、その月はそれ以上徴収されません。

管理票を持って行き忘れると合算が正しく記録されませんので、受給者証と一緒に必ず持ち歩いてください。

申請の流れ

机の上に置かれたノートパソコンと聴診器
1
難病指定医に臨床調査個人票を書いてもらう
診断書にあたる「臨床調査個人票」は、都道府県・指定都市が指定した難病指定医しか作成できません。かかりつけの先生が指定医でない場合は、指定医のいる医療機関を紹介してもらう必要があります。
2
都道府県・指定都市の窓口に申請する
臨床調査個人票と必要書類をそろえて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所等)に申請します。マイナンバーを利用すると提出書類を省略できる場合があります。窓口の場所は難病情報センターのホームページで案内されています。
3
審査を待つ(2〜3か月程度)
都道府県・指定都市が、病状の程度が認定基準に該当するか、または軽症高額該当かを審査します。認定審査期間は2〜3か月程度です。
4
受給者証を受け取り、指定医療機関で提示する
支給認定されると「特定医療費(指定難病)受給者証」が交付されます。難病指定医療機関で提示すると助成が受けられます。受給者証が届くまでの間に指定医療機関でかかった医療費は、払戻し請求ができます。
待っている間の医療費は払戻し請求ができます。受給者証が届いていないから助成は受けられない、と諦めないでください。そのためにも、審査中の指定医療機関での領収書は必ず取っておいてください。

提出書類

これに加えて、必要に応じて次の書類を求められます。

  • 人工呼吸器等装着者であることを証明する書類
  • 世帯内に申請者以外に特定医療費または小児慢性特定疾病医療費の受給者がいることを証明する書類
  • 医療費について確認できる書類(「高額かつ長期」または「軽症高額該当」に該当することを確認する領収書等)

必要書類は自治体によって案内が異なることがあります。行く前に窓口へ電話で確認しておくと、 書類の不足で二度足を運ぶことを避けられます。

申請を先延ばしにすると、その分だけ損をします

助成の開始時期には遡りのルールがあります。ここは知らないと確実に損をするところです。

区分いつから助成されるか
重症度分類に該当する方「重症度分類を満たしていることを診断した日」から。ただし遡りは原則として申請日から1か月
軽症高額該当の方「軽症高額の基準を満たした日の翌日」から。ただし遡りは原則として申請日から1か月

診断日(または基準を満たした日の翌日)から1か月以内に申請しなかったことについてやむを得ない 理由があるときは、最長3か月まで延長されます。逆に言えば、理由なく放置した期間は 戻ってきません。診断がついたら、次の受診を待たずにその場で臨床調査個人票の作成を依頼するのが 安全です。

有効期間と更新

支給認定の有効期間は原則1年以内で、病状の程度・治療の状況から医療を受けることが必要と 考えられる期間です。特別な事情があるときは1年6か月を超えない範囲で定めることができます。

有効期間を過ぎると助成は止まります。治療を続ける場合は更新申請が必要です。更新申請に必要な 書類は、難病指定医だけでなく協力難病指定医も作成できます。

有効期間内に、負担上限月額の算定に必要な事項が変わった場合は届出が必要です。また、(1)指定医療 機関、(2)負担上限月額、(3)指定難病の名称を変更する必要があるときは変更申請ができます。 転院したときや、世帯の所得区分が変わったときは、そのままにせず窓口に相談してください。

医療費助成の対象にならなかった方へ — 指定難病登録者証

重症度分類にも軽症高額該当にも当てはまらなかった場合、医療費助成は受けられません。ただし 指定難病登録者証は、医療費助成の対象とならない方にも交付されます

これは難病法にもとづく指定難病患者であることを証明するもので、福祉・就労等の各種支援を受ける際に 使えます。原則としてマイナンバー情報連携を活用するため、マイナンバーカードが登録者証になります。 申請方法や発行方法は自治体によって異なりますので、都道府県・指定都市の窓口にお問い合わせください。

たとえばハローワークでは、全国51か所に難病患者就職サポーターが配置され、難病相談支援 センターと連携しながら症状の特性を踏まえた就労支援を行っています。医療費助成の対象外でも、 使える支援はここで途切れるわけではありません。

これとは別に確認しておきたい制度

介護保険 — 40歳以上65歳未満でも申請できます

介護保険は原則65歳以上の制度ですが、40歳以上65歳未満の第2号被保険者も、要介護状態の原因が 介護保険法施行令第2条に定める特定疾病介護保険法施行令第2条に列記されている16の病気です。40歳から64歳の方でも、要介護状態の原因がこの中のどれかであれば要介護認定を申請できます。詳しく見るである場合には申請できます。その特定疾病の一覧に、 厚生労働省は次のように記載しています。

進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病【パーキンソン病関連疾患】

つまりパーキンソン病は特定疾病に含まれます。歩行・入浴・食事などに人の手が必要になってきた 段階であれば、65歳未満でも市区町村の窓口で要介護認定の申請ができます。医療費を軽くする難病医療費 助成とは目的が違う別の制度なので、どちらかではなく両方を確認してください。

障害年金・身体障害者手帳

どちらも「パーキンソン病だから対象」という形の制度ではなく、心身の機能の障害の程度で 判定されます。診断名そのものではなく、日常生活や労働がどれだけ制限されているかが見られます。

  • 障害年金は、障害の原因となった病気について初めて医師の診療を受けた日(初診日)と、 初診日の前日における保険料の納付要件を満たすことが前提です。障害の状態を定める日である 「障害認定日」は、初診日から1年6か月経過した日(その間に症状が固定し治療の効果が期待できない 場合を含む)です。→ 障害年金のしくみをくわしく
  • 身体障害者手帳は、身体の機能に一定以上の障害があると認められた方に交付されます。 障害の種別には肢体不自由が含まれます。都道府県知事等が指定する医師の診断書・意見書が必要で、 申請はお住まいの福祉事務所または市役所で行います。 → 身体障害者手帳のしくみをくわしく

どちらも「パーキンソン病だから何級」という形では決まらず、ご自分が該当するかは年金事務所・ 自治体の窓口と主治医に確認していただくのが確実です。ただし手帳のほうには、厚生労働省が パーキンソン病を名指しで扱った通知があります — 服薬でコントロールされている状態で判定するのが 原則だが、1日の大半でコントロールできない状態が続く場合は認定の対象になり得る、という趣旨です。 症状の日内変動が大きい方には大事なところなので、手帳の記事でくわしく扱っています。

こんなときは

状況どうするか
ヤール2度と言われました重症度分類は満たしませんが、医療費総額(10割)が33,330円を超える月が12か月以内に3回以上あれば軽症高額該当で対象になります。領収書を集めて窓口に相談してください
ヤール3度なのに対象外と言われました「かつ生活機能障害度2度以上」の条件があります。通院や日常動作での介助の必要性が診察で正確に伝わっているか確認してください
かかりつけの先生が難病指定医ではありません臨床調査個人票は難病指定医しか作成できません。指定医のいる医療機関を紹介してもらってください。指定医の一覧は難病情報センターのホームページで確認できます
診断から2か月たってしまいました今すぐ申請してください。遡りは原則1か月ですが、やむを得ない理由があれば最長3か月まで延長されます
受給者証がまだ届きません審査は2〜3か月程度かかります。その間に指定医療機関でかかった医療費は払戻し請求ができるので、領収書を保管しておいてください
毎月の医療費が高く、上限額まで払い続けています一般所得I以上なら「高額かつ長期」に該当しないか確認してください。医療費総額5万円超の月が12か月で6回以上あれば上限額が下がります
65歳未満なので介護保険は関係ないと思っていますパーキンソン病は介護保険の特定疾病です。40歳以上なら申請できます

患者さんとご家族へ

この制度で一番よく損が出るのは、金額の計算ではなく申請のタイミング領収書です。 遡りは原則1か月しかありませんし、軽症高額該当と「高額かつ長期」はどちらも領収書が根拠になります。 診断を受けた日、基準額を超えた月、審査を待っている間の受診 — この3つはご家族が一緒に記録して おくと、後で窓口とやりとりするときにそのまま使えます。

このページは法律相談や行政の決定に代わるものではありません。記載した基準・金額は2026年8月時点で 難病情報センターおよび厚生労働省の公式ページで確認したものです。制度は改定されますので、 ご自分の申請については、お住まいの都道府県・指定都市の窓口と主治医にご確認ください。