確定申告で使える税の軽減は、高額療養費のような 健康保険の制度とは別枠にあります。医療費控除障害者控除です。どちらも申告しなければ 自動では戻ってきません。以下は2026年8月時点で、国税庁の公式資料を実際に確認して整理した ものです。

障害者控除 — 手帳の等級で決まる金額

身体障害者手帳をお持ちの場合、控除額は等級で変わります。

区分対象控除額
障害者手帳3〜6級27万円
特別障害者手帳1〜2級40万円
同居特別障害者特別障害者と同居する納税者が申告する場合75万円

これは納税者本人の所得から差し引かれる所得控除税金がかかる所得の計算のとき、収入から一定額を引ける仕組みです。控除額の分だけ税金がかかる所得が減ります。詳しく見るです。ご本人に十分な所得がない場合、同居のご家族の申告に含めることで 控除を受けられます。

これは毎年の所得税の障害者控除です。ご家族が亡くなって相続が発生したときの相続税の障害者控除は別の制度で、控除額の計算式も要件(法定相続人であることなど)も異なります。

くわしくは相続税の障害者控除の記事で 扱っています。

65歳以上なら手帳がなくても対象になれます — ただし別申請が必要

身体障害者手帳の等級がまだ低い方、 申請自体をまだしていない方でも、65歳以上であれば別の道があります。国税庁の説明はこうです。

精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が知的障害者又は身体障害者に 準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人

つまり手帳がなくても、市区町村長等から「障害者に準ずる」と認定を受ければ、障害者控除の対象に なれます。この認定を障害者控除対象者認定書と呼びます。

ここで誤解が起きやすい点があります。介護保険の要介護認定(要介護1〜5、要支援1〜2)を受けていても、それだけでは障害者控除の対象にはなりません。国税庁は「介護保険法の要介護認定を受けられただけでは障害者控除の対象とはなりません」と明記しています。要介護認定と障害者控除対象者の認定は別の手続きです。多くの市区町村は要介護度を参考に判定基準を設けていますが(例:要介護1〜2なら障害者、要介護3〜5なら特別障害者、など)、基準は自治体ごとに違います。認定書はご自分で市区町村の窓口に申請しないと発行されません

65歳未満の方は、この特例が使えません。若年発症(YOPD)で身体障害者手帳の等級がまだ 出ていない方は、障害者控除を受けるには手帳の申請を進める必要があります。

手帳の交付を待っている間でも申告できる場合があります

診断はついたが手帳がまだ手元に届いていない、という時期は珍しくありません。国税庁は次の2つを 両方満たせば、その年の障害者控除を受けられるとしています。

手帳が届くまで待って翌年に申告する必要はありません。診断書と申請中であることの証明があれば、 その年の分から控除できます。

医療費控除 — 計算のしかた

医療費控除は次の式で計算します。

(実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補てんされる金額) − 10万円 (総所得金額等が200万円未満の方は、総所得金額等の5%の金額)

10万円と「所得の5%」のうち低いほうを差し引きます。控除の上限は200万円です。

何が対象になるか — 見落としやすいもの

通院の公共交通機関の運賃は、レシートが残らなくても対象になります。ノートに日付・行き先・ 金額を記録しておけば、確定申告のときの根拠になります。

クリップで留められた領収書の束とペン、机の上に散らばった書類
タクシー代は原則として対象外です。国税庁の見解では、電車・バスなどの公共交通機関が利用できない場合に限って全額が対象になります。「歩くのがつらいからタクシーを使った」という理由だけでは、原則には当てはまりません。ただし症状が重く歩行そのものが著しく困難な場合は、医師の診断内容などをもとに個別に判断されることがあります。ご自分のケースで対象になるかどうかは、税務署に具体的な状況を伝えて確認してください。

セルフメディケーション税制とはどちらか一方だけ

市販薬の購入費には、セルフメディケーション税制対象となる市販薬(スイッチOTC医薬品等)の年間購入額が12,000円を超えた分を所得控除する制度です。通常の医療費控除とは選択制で、同じ年に両方は使えません。詳しく見るという別の制度もありますが、通常の医療費控除と同時には使えません。 どちらか一方を選びます。多くの場合、医療費全体が高額になりやすい方は通常の医療費控除のほうが 有利です。

確定申告をしないと戻ってきません

医療費控除は、会社員でも年末調整だけでは適用されません。確定申告書を提出して初めて 控除されます。

「毎年、年末調整で終わらせている」という会社員の方が、医療費控除の申告だけを忘れているケースがよくあります。通院・入院・訪問看護・調剤の領収書は1年分まとめて保管しておき、確定申告の時期(例年2月中旬〜3月中旬)にまとめて提出してください。e-Taxを使えば税務署に行かずに申告できます。

申請の流れ

1
障害者控除対象者認定書が必要か確認する(65歳以上・手帳なしの場合)
お住まいの市区町村の障害福祉担当・介護保険担当の窓口で、認定を受けられるか、必要な書類は何かを確認します。要介護認定の資料が使える自治体もあります。
2
1年分の医療費・通院費の記録をまとめる
領収書、通院の交通費のメモ、介護保険サービスの自己負担額の明細をまとめておきます。
3
確定申告書を作成する
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、医療費控除・障害者控除それぞれの欄に記入します。e-Taxでの提出も可能です。
4
税務署に提出する
申告期限(例年3月中旬)までに提出します。わからない点は税務署の電話相談センターに確認できます。

こんなときは

状況どうするか
要介護3の認定を受けているので障害者控除も自動だと思っていました要介護認定と障害者控除対象者の認定は別の手続きです。市区町村の窓口に改めて認定を申請してください
65歳未満で、身体障害者手帳の申請がまだです65歳以上の特例は使えません。まず手帳の申請を進めてください。診断書があれば、交付前でも障害者控除を受けられる場合があります
会社員で年末調整だけで済ませています医療費控除は年末調整に含まれません。確定申告書を別途提出する必要があります
通院にタクシーを使うことが多いです原則は対象外です。公共交通機関が利用できない状況だったか、税務署に具体的に確認してください
市販の風邪薬を買いました治療目的なら対象です。予防や健康増進目的の医薬品(サプリメントなど)は対象外です
セルフメディケーション税制も使えると聞きました通常の医療費控除とは選択制で、同じ年に両方は使えません。医療費が多い年は通常の医療費控除のほうが有利なことが多いです

患者さんとご家族へ

この2つの控除で一番もったいないのは、「対象になるのに、申告しないまま終わる」ことです。 障害者控除対象者の認定は自分から申請しないと発行されず、医療費控除は確定申告をしないと 戻ってきません。どちらも「勝手に計算されて振り込まれる」ものではありません。

通院の領収書と交通費の記録は、思い出したときにまとめようとすると必ず抜け漏れが出ます。 月ごとに封筒やノートにまとめておく習慣を、診断を受けた早い段階からつけておくことをおすすめします。

このページは税務相談や行政の決定に代わるものではありません。記載した制度・金額は2026年8月時点で 国税庁の公式資料で確認したものです。制度は改定されますので、ご自分の申告についてはお住まいの 税務署・市区町村の窓口にご確認ください。