パーキンソン病の介護をするご家族は、平均で週31時間を介護にあてています。パートタイムの 仕事の半分ほどにあたる量です。近年の調査では、介護をしている方の74%が自分を「主に 介護している人」だと考えていて、フルタイムで働いている方の半数は介護のために勤務の 予定に支障が出て、勤務時間を減らしたり、休職や早期の退職につながったりしていました。 患者さんと同じくらい、介護するご家族にも前もって自分をいたわる方法を知っておいてほしい理由が ここにあります。
介護の負担は段階的に積み重なります
米国パーキンソン財団は、介護の負担が積み重なっていく過程を介護のストレス → 介護の緊張 → 介護者の燃え尽きという3つの段階に分けて説明しています。この3段階の分け方が日本の医療現場で 標準になっているわけではありませんが、はじめは扱える程度のストレスだったものが、時間がたつうちに 介護そのものの力に影響するほど積み重なり、放っておくと 介護者の燃え尽き介護者が圧倒されて自分の役割から退きはじめ、そのくせ自分の体と心は顧みなくなる状態です。身体的・情緒的・精神的な疲れが積み重なり、態度そのものが変わります。詳しく見る に至るという流れそのものは、介護をするご家族の負担を扱う資料に共通して出てきます。燃え尽きの 段階は、単に「とてもつらい」というだけではなく、介護に対する態度そのものが変わるのが 特徴です — 以前は当たり前にしていたことが、急に耐えられなくなります。
こんなサインが出ていたら、すでに燃え尽きているかもしれません

- 体: これといった理由のない疲れ、頭痛、かぜや体調不良をひきやすくなる
- 心: 何もする気が起きない、いらだちや怒りがすぐこみ上げる、以前よりずっと人を避けて孤立する
- 態度: 患者さんへの恨みが積もっていく、「やめたい」という思いが何度も浮かんでくる
このうちいくつかが重なって何週間も続いているなら、我慢して押し通すのではなく、専門家の助けを 求めるべきサインです。
一人で全部やらなくてよいのです
介護をきちんとすることと、すべてを一人でやることは別のことです。ご家族や友人には 「助けが必要なときは言って」ではなく具体的な役割を分けてお願いしてみてください ——「火曜日の午後をお願いできますか」のほうが、はっきりした答えが返ってきます。
そのうえで、公的なサービスを使うことも考えてください。介護保険のサービスには、短い期間だけ 施設に泊まって過ごす短期入所生活介護(ショートステイ)や、日中のあいだ通って過ごす 通所介護(デイサービス)があり、介護するご家族が休む時間をつくることにも使われています。 パーキンソン病関連疾患は介護保険の特定疾病介護保険法施行令第2条に列記されている16の病気です。40歳から64歳の方でも、要介護状態の原因がこの中のどれかであれば要介護認定を申請できます。詳しく見るに含まれているので、65歳より前(40歳以上)の 方でも要介護認定を申請できる場合があります。何がどれだけ使えるか、自己負担がいくらになるかは 要介護度や所得によって変わるので、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口か 地域包括支援センター市区町村が設置する高齢者の暮らし全般の相談窓口です。介護保険の要支援1・2の方のケアプランもここが担当します。詳しく見る(市町村が設置している総合相談の窓口)、すでに担当のケアマネジャーが いればその方に確認してください。かかっている病院に医療ソーシャルワーカーがいる場合は、そこが いちばん早い相談先になることもあります。
介護保険の申請の手続きや、パーキンソン病で使える医療費の助成については 難病医療費助成制度の記事にまとめています。
仕事を続けながら介護するための制度もあります
働きながら介護している方のために、育児・介護休業法にもとづく制度があります。
- 介護休業 — 要介護状態にある対象家族1人につき3回まで、通算93日まで 休業できます。対象家族は配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母 です。条件を満たせば、雇用保険から休業開始時賃金日額の67%相当額の 介護休業給付金介護休業を取得した雇用保険の被保険者に、休業開始時賃金日額×支給日数×67%で計算される給付金です。育児休業とちがい、この休業中は社会保険料が免除されません。詳しく見るを 受けられます。
- 介護休暇 — 対象家族が1人の場合は1年に5日まで、2人以上の場合は10日まで、 1日単位または時間単位で取得できます。
→ 介護休業・介護休暇のしくみをくわしく (2025年4月の法改正、社会保険料の扱いまで)
実際の申し出の手続きや社内の運用はお勤め先によって違うので、人事・総務の担当者か、お住まいの 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にご確認ください。
自分のための時間も計画に入れてください
- 期待を現実的なところまで下げてください。 今日どうしてもやることと、後回しにしてよいことを 分けて、完璧にやりきらなければという重荷を下ろしてください。
- 小さな進みも認めてください。「今日は一緒に散歩に出られた」のような小さな成果を自分で 認めることが、疲れきらずに続ける力になります。
- 体をいたわってください。 規則的な運動は落ちこみやストレスを下げることが知られていますし、 睡眠は1日7〜9時間を目標にしてください。
- 短く立て直す習慣をつくってください。 ゆっくり10回呼吸する、好きな音楽を聴く、友人に 電話する——数分でできる自分なりの方法を、いくつか決めておいてください。
気持ちがつらいときは専門家に話してください
強いストレスを抱える介護者のおよそ半数が、臨床的なうつの診断基準を満たすという調査が あります。「これくらいは誰でもつらい」で片づけないでください。主治医に相談して精神科・心療内科や 心理の専門職につないでもらう、お住まいの地域の保健所や精神保健福祉センターに 相談する、といった道があります。どこに電話すればよいかわからないときは、厚生労働省の こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556にかけると、お住まいの都道府県が実施している 公的な相談機関につながります(対応の曜日・時間は都道府県によって違います)。
同じ立場の方と話すだけでも思ったより助かった、という声は多いものです。 全国パーキンソン病友の会は43の都道府県支部をもつ患者会で、患者さんとご家族が 一緒に活動しています。お住まいの地域に支部があるか、公式サイト (jpda.jp)で確かめてみてください。
今できること
空のコップから水は注げません。介護するご家族が倒れれば、介護もいっしょに倒れます。自分のために 時間を使うことに罪悪感をもたないでください。上のリストのなかから、今日すぐできることを一つ選んで そこから始めてみてください。
この記事は、医学的な診断や治療の代わりになるものではありません。燃え尽きのサインが続くときは、 精神科・心療内科や、お住まいの地域の精神保健福祉センターの助けを求めてください。


