「薬が効いている時間帯に大事な仕事を寄せたい」「通院のために月に一度、午前中を空けたい」 「朝の通勤ラッシュを外したい」——パーキンソン病で働き続けるとき、必要になるのは たいてい、こういう小さな調整です。むずかしいのは制度ではなく、それをどこに、 何を根拠に言えばいいのかがわからないことです。

その根拠が、2026年に一段はっきりしました。労働施策総合推進法の改正で治療と仕事の 両立支援が事業主の努力義務になり、それを受けて厚生労働省が「治療と就業の 両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)を定めたからです。この記事は、 その指針を実際に読んで、パーキンソン病の患者さんが使う順番に並べ直したものです。 2026年8月時点の内容で、金額や雇用率は改定されますので、お読みの時期と この日付を見比べてください。

職場に伝える時期をどう選ぶか、どんな配慮が実際に役に立つかについては 仕事を続けるためににまとめています。 この記事はその「制度側」です。

2026年4月から、事業主の努力義務です

まず条文です。労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に 関する法律(労働施策総合推進法)に、第八章「治療と就業の両立支援」が置かれ、 第27条の3第1項がこう定めています。

事業主は、疾病、負傷その他の理由により治療を受ける労働者について、就業によつて疾病 又は負傷の症状が増悪すること等を防止し、その治療と就業との両立を支援するため、当該 労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を 講ずるよう努めなければならない。

「努めなければならない」——つまり努力義務です。違反に罰則があるわけでは ありませんが、相談に応じることそのものが法律に書かれた事業主の責務になった、 という点は小さくありません。「そういう相談は受け付けていない」という返事は、 もう法律の想定から外れています。

同条第2項にもとづいて厚生労働大臣が定めたのが、治療と就業の両立支援指針です。

項目内容
名称治療と就業の両立支援指針
番号令和8年厚生労働省告示第28号
公表日2026年(令和8年)2月10日
適用日2026年(令和8年)4月1日
根拠労働施策総合推進法 第27条の3第2項

指針は「1 趣旨」「2 労働安全衛生法との関係」「3 留意事項」「4 環境整備」 「5 進め方」の5部構成です。事業主・人事労務担当者・産業保健スタッフに向けたものですが、 指針自身が「労働者本人や、家族、医療機関の関係者等の支援に関わる者にも活用可能」と 書いています。読んでよい文書です。

パーキンソン病もこの指針の対象です

指針が対象とする疾病は、次のように定められています。

本指針が対象とする疾病(負傷を含む。以下同じ。)は、国際疾病分類(中略)に掲げられて いる疾病であって、医師の診断により、増悪の防止等のため反復・継続して治療が必要と 判断され、かつ、就業の継続に配慮が必要なものとする。

病名の一覧で線を引いていません。反復・継続して治療が必要で、就業の継続に配慮が 必要であれば対象です。継続的に薬を飲み、定期的に通院し、症状に波があるパーキンソン病は、 この定義にそのまま当てはまります。がんや脳卒中のための制度だと思って遠慮する必要は ありません。

もうひとつ大事な一文があります。

さらに、本指針は、雇用形態に関わらず、労働者全てを対象とする。

正社員に限りません。パートタイム、契約社員、派遣で働いている方も対象です。

話は「ご本人の申出」から始まります

黄色い紙を並べて作った吹き出しの形

指針は、両立支援の出発点をこう定めています。

治療と就業の両立支援は、私傷病である疾病に関わるものであることから、労働者本人から 支援を求める申出がなされたことを端緒に取り組むことが基本となる。

会社の側から「調子が悪そうだから」と勝手に始まる仕組みではない、ということです。 裏を返せば、言わなければ始まりません。ここが、この制度でいちばん多く取りこぼしが 出るところです。

同時に、指針はご本人を守る方向にもはっきり書いています。

  • 健康情報は勝手に取られません。「症状、治療の状況等の疾病に関する個人情報」は 機微な情報であるため、健康診断で把握した場合を除き、原則として事業主が労働者本人の 同意なく取得してはならないとされています。何を、誰に、どこまで共有するかは ご本人が決めます。
  • 会社が一方的に決めてはいけません。指針は「労働者に対する措置等を事業主が一方的に 判断しないよう」と明記し、就業継続の希望や配慮の要望を聴き取り、十分な話合いを通じて 本人の了解を得られるよう努めることを求めています。
  • 病名を理由に働けなくされることはありません。「疾病のり患をもって安易に就業を 禁止せず、主治医や産業医等の意見を勘案し、可能な限り配置転換、作業時間の短縮その他の 必要な措置を講じて就業の機会を失わせないよう留意する」とされています。
申出をためらわせる一番の心配は「言ったら仕事を減らされるのではないか」です。指針はその逆を書いています — 病気だからという理由で就業を禁止するのではなく、配置転換や時間短縮でまず働き続けられるようにすることを求めています。伝えることは、仕事を手放すことではありません。

申出の先は、お勤め先が定めた相談窓口です。指針は事業主に対して、相談窓口や申出があった 場合の情報の取扱いを明確にしておくこと、全ての労働者に周知しておくことを求めています。 どこが窓口かわからないときは、人事・総務、または産業医事業場で労働者の健康管理を行う医師です。労働者数50人以上の事業場では選任が義務づけられています。50人未満の事業場では、健康管理等を行う医師が同じ役割を担います。指針ではこの両方をまとめて「産業医等」と呼んでいます。詳しく見るがいる会社なら産業医に聞くのが早道です。

全体の流れ

指針の「5 治療と就業の両立支援の進め方」を、患者さんの側から見た順番に並べると こうなります。

1
会社に申し出る
両立支援が必要だと考えたら、まず勤務先の相談窓口(人事・総務、産業保健スタッフ、上司など)に申し出ます。ここが出発点で、ここが抜けると制度は動きません。会社に両立支援の社内ルールがあれば、それに沿って進みます。
2
自分の勤務情報を書いて、主治医に渡す
主治医は勤務の実態を知りません。職種、作業内容、勤務時間、通勤方法、休憩の取りやすさなどを書いた「勤務情報提供書」を作って渡します。厚生労働省が様式例を無料で配布しており、会社が独自の様式を定めている場合はそちらを使います。
3
主治医に意見書を書いてもらい、会社に提出する
症状と治療の状況、就業継続の可否、望ましい就業上の措置、治療に対する配慮が必要な事項の4点について、主治医に意見を書いてもらいます。書類作成に文書料がかかるかどうかは医療機関によって異なるので、依頼するときに確認してください。
4
会社が産業医等の意見を聴き、就業継続の可否と配慮の内容を検討する
事業主は主治医から提供された情報を産業医等に渡して意見を聴き、就業上の措置と治療に対する配慮を検討します。産業医等がいない事業場では、主治医から提供された情報を参考にします。この段階で、ご本人の希望と要望を聴き取ることが指針で求められています。
5
両立支援プランを作り、実施して、見直す
措置や配慮の内容とスケジュールをまとめた「治療と就業の両立支援プラン」を作成します。治療の経過で必要な配慮は変わるため、指針は状況を確認して必要に応じてプランを見直すことを求めています。作りっぱなしにしない仕組みです。

入院などで長期に休む場合は、この流れが「休業開始前の対応 → 休業中のフォローアップ → 職場復帰の可否の判断 → 職場復帰支援プラン」に変わります。休まずに働き続ける場合と 休む場合で、使う様式も変わります。

主治医に何を書いてもらうか

ここがこの制度の核心です。指針は、主治医から提供を受けることが望ましい情報を 4つ挙げています。

主治医に書いてもらう内容具体的には
ア 症状、治療の状況現在の症状/入院や通院による治療の必要性とその期間/治療の内容やスケジュール/通勤や業務遂行に影響を及ぼしうる症状や副作用の有無とその内容
イ 就業継続の可否に関する意見働き続けられるかどうか
ウ 望ましい就業上の措置に関する意見避けるべき作業、時間外労働の制限、出張の可否 等
エ 治療に対する配慮が必要な事項に関する意見通院時間の確保、休憩場所の確保 等

パーキンソン病の患者さんにとって、実務上いちばん効くのはアの最後の行です。 「通勤や業務遂行に影響を及ぼしうる症状」に何が書かれるかで、会社が検討する配慮の 中身が決まります。診察の場で伝えておくとよいことを挙げます。

  • 症状に時間帯の波があること(オン・オフ)。「午前10時から午後1時ごろは動きやすいが、 夕方に動きにくくなる時間帯がある」といった具体的な時間帯が書かれると、会議や外出を その時間に寄せる根拠になります。
  • 服薬の時刻が決まっていること。数十分ずれるだけで動きやすさが変わることは、 医師の言葉として書かれてはじめて会社に伝わります。
  • 通院の頻度と、その日にかかる時間。半日単位で休みが必要なのか、時間単位で足りるのかで、 会社が用意すべき休暇制度が変わります。
  • 疲れやすさ。連続作業の時間や、休憩を勤務時間に組み込む必要があるかどうか。
  • 書字・発声のこと。手書きの伝票や電話応対が多い職場では、入力機器の変更や 役割の調整が「望ましい就業上の措置」として書かれることがあります。
  • 通勤そのものの負担。混雑時間帯を避ける必要があるなら、時差出勤の根拠になります。
診察時間は短いので、その場で思い出そうとしないでください。症状が出た時間帯と、そのとき何ができなかったかを数日分メモして持って行くと、主治医が具体的に書けます。この記録は会社との話合いでもそのまま使えます。

なお、主治医から提供された情報が両立支援の観点から十分でない場合は、ご本人の同意を 得たうえで、産業保健スタッフ(いなければ人事労務担当者等)が主治医からさらに情報を 収集することができる、と指針に定められています。一度で完璧な書類にならなくても、 そこで止まる仕組みではありません。

使える様式は、厚生労働省が無料で配っています

自分で書式を考える必要はありません。厚生労働省がそのまま使える様式例を WordとPDFで公開しています。

様式例何に使うかダウンロード
勤務情報を主治医に提供する際の様式例自分の仕事の内容・働き方を主治医に伝えるWordPDF
治療の状況や就業継続の可否等について主治医の意見を求める際の様式例主治医に意見書を書いてもらうWordPDF
職場復帰の可否等について主治医の意見を求める際の様式例休職から戻るときWordPDF
両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成例会社が作る計画の見本WordPDF

一覧は厚生労働省の 治療と仕事の両立についての ページにあります。指針の本文(令和8年厚生労働省告示第28号)も PDFで公開されています。

「治療と仕事の両立支援ナビ」の 参考資料ダウンロードには、 これに加えて次のものがあります。

  • 両立支援カードの様式例Word
  • 治療と仕事の両立支援ハンドブック(労働者向け)PDF
  • 企業・医療機関連携マニュアル 事例編:難病PDF。 難病の事例が独立して用意されています。会社の担当者に「難病の場合はこういう進め方です」と 渡せる資料です。
お勤め先が独自の様式を定めている場合は、そちらが優先します。指針も「事業主が定める様式等を活用して」と書いています。まず会社に様式があるかを確認し、なければ厚生労働省の様式例を持って行く — この順番です。

両立支援プランに何を書いてもらうか

会社が作るプランですが、中身は自分に関することです。指針は次の3点を盛り込むことが 望ましいとしています。

  1. 治療、投薬等の状況及び今後の治療、通院の予定
  2. 就業上の措置及び治療に対する配慮の具体的内容並びに実施時期・期間 (就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの就業上の措置と、通院時間の確保などの 治療に対する配慮)
  3. フォローアップの方法及びスケジュール(産業保健スタッフや人事労務担当者等による面談等)

3番目を軽く見ないでください。パーキンソン病は年単位で状況が変わります。指針も 「治療の経過によっては、必要な措置や配慮の内容、時期・期間が変わることも考えられる」ため 見直しが必要だと書いています。いつ見直すかをプランに書き込んでおけば、 次に相談するときに「また一から説明する」ことをしなくて済みます。

会社にどんな制度があるかを確認する

指針の「4 環境整備」は、事業主が各事業場の実情に応じて導入することが望ましい制度を 具体的に挙げています。自社にどれがあるかを人事・総務に聞くときの一覧として 使えます。

制度内容
時間単位の年次有給休暇労働基準法にもとづく年次有給休暇は1日単位が原則ですが、労使協定を結ぶことで1時間単位で取得できるようになります(年5日の範囲内)。通院や短時間の治療に使いやすい形です。詳しく見る労使協定の締結により、年5日の範囲内で1時間単位の取得が可能になります
傷病休暇・病気休暇事業主が自主的に設ける法定外の休暇。入院や通院のために、年次有給休暇とは別に付与するものです。取得条件や賃金の有無は事業場ごとに異なります
時差出勤制度始業・終業の時刻を変更し、身体に負担のかかる通勤時間帯を避けられます
短時間勤務制度療養中または療養後の負担を軽減するため、所定労働時間を短縮します
在宅勤務制度テレワークにより、通勤による身体への負担を軽減できます
試し出勤制度長期間休業していた労働者の円滑な職場復帰のために、勤務時間や勤務日数を短縮して試験的に出勤する制度です。復帰に不安がある方にも、受け入れる職場の側にも準備の時間ができます。詳しく見る長期休業からの復帰にあたり、勤務時間や勤務日数を短縮した試し出勤を行います

これらは法律で全社に義務づけられているものではありません(時間単位年休は労使協定が 前提です)。指針が「導入することが望ましい」としているものです。ですから「制度がある前提」で 話すのではなく、「こういう制度を導入している会社があると国の指針に挙がっているのですが、 うちにはありますか」と聞くのが正確で、話も進みやすくなります。

「業務が忙しいから」は理由になりません

指針の「3 留意事項」の最初に、こう書かれています。

治療と就業の両立支援に際しては、就業によって、疾病の増悪や再発、労働災害が生じないよう、 就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の適切な就業上の措置及び 治療に対する配慮を行うことが就業の前提となる。したがって、業務の繁忙等を理由に必要な 就業上の措置及び治療に対する配慮を行わないことはあってはならない。

「今は忙しいから、落ち着いたらね」と言われたときに、示せる一文です。国の告示に 書かれている文章ですから、感情的な訴えではなく事実の確認として使えます。

同じ節には、周囲への配慮についても書かれています。配慮を実施すれば同僚や上司にも 一時的に負担がかかるため、必要な情報に限定したうえで共有して理解を得るとともに、 人事労務部門や産業保健スタッフが組織的な支援を行うことが望ましい、という内容です。 「自分のせいで同僚に迷惑がかかる」と感じてしまう方は多いのですが、それを個人で 背負わせないことも会社側の課題として書かれています。

間に立ってくれる人がいます — 両立支援コーディネーター

主治医と会社の間に立って情報の橋渡しをするのが 両立支援コーディネーター患者さんに寄り添い、事業場と医療機関の間の情報の橋渡しを行いながら、継続的な相談支援を行う役割の人です。労働者健康安全機構が基礎研修を実施しており、企業・医療機関・産業保健総合支援センターなどで活動しています。ご本人に代わって交渉する立場ではありません。詳しく見るです。 厚生労働省の「治療と仕事の両立支援ナビ」は、その役割をこう説明しています。

労働者(患者)に寄り添い、事業場と医療機関の間の情報の橋渡しを行いながら、継続的な 相談支援等を行う役割を担っています。

活動場所は企業、医療機関、産業保健総合支援センターなどの支援機関です。特定の窓口に 行けば必ず会える、という形の制度ではありません。労働者健康安全機構が実施している 両立支援コーディネーター基礎研修の修了者は累計34,396人(令和7年度・2026年5月11日現在)で、 全都道府県に分布しています。

まず当たるなら、産業保健総合支援センター47都道府県すべてに設置されている、事業者と労働者の産業保健を支援する機関です。労働者健康安全機構が運営しており、治療と仕事の両立支援についての相談窓口を設けています。詳しく見るです。 47都道府県すべてにあり、窓口(予約制)・電話・電子メールで相談できます。会社の担当者が 「どこまでが妥当な配慮なのか」で迷っているときの相談先にもなります。

通院先に医療ソーシャルワーカーがいる場合も、最初の整理役として適しています。指針も、 医療機関の関係者(医師、看護師、医療ソーシャルワーカー等)との連携を挙げています。

もうひとつの根拠 — 障害者雇用促進法

両立支援指針とは別に、障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)にも 根拠があります。こちらは努力義務ではなく義務です。平成28年(2016年)4月から 施行されています。

条文内容
第34条事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない
第35条賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、不当な差別的取扱いをしてはならない
第36条の2募集・採用にあたり、障害者からの申出により、障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない
第36条の3雇用している障害者である労働者について、能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない(同じく過重な負担の例外あり)
第36条の4前二条の措置を講じるにあたっては、障害者の意向を十分に尊重しなければならない

第36条の2は「障害者からの申出により」と書いています。両立支援指針と同じで、 言わなければ始まりません。そして第36条の4が、会社が良かれと思って決めた配慮を 押しつけることを禁じています。どの配慮が自分に必要かを決めるのは自分だ、という 条文です。

手帳がなくても、あきらめないでください

「障害者雇用促進法」という名前から、障害者手帳がないと関係がないと思われがちです。 そうとは限りません。厚生労働省は、ハローワークや地域障害者職業センターなどによる支援の 対象を「心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を 営むことが著しく困難な方」としています。手帳の有無だけで判断せず、まず窓口で 聞いてみてください。

なお、従業員が一定数以上の事業主には、法定雇用率以上の割合で障害のある方を雇用する 義務があります。民間企業の法定雇用率は2.7%で、従業員を37.5人以上雇用している 事業主は1人以上雇用しなければなりません(2026年8月時点の値です。雇用率は段階的に 引き上げられてきましたので、お読みの時期の値を厚生労働省のページでご確認ください)。

パーキンソン病で身体障害者手帳などの対象になるかは症状の程度によります。該当するか、 どう申請するかは主治医と、お住まいの市区町村の障害福祉の担当窓口にご確認ください。 判定のしかたや申請の流れは 身体障害者手帳の記事にまとめています。

ハローワークの難病患者就職サポーター

日本でもっとも知られていない、そしてもっとも使える窓口かもしれません。

難病患者就職サポーターが、ハローワークの障害者の専門援助窓口に配置されています。 厚生労働省の説明はこうです。

ハローワークの障害者の専門援助窓口に「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援 センターと連携しながら、就職を希望する難病患者に対する症状の特性を踏まえたきめ細かな 就労支援や、在職中に難病を発症した患者の雇用継続等の総合的な就労支援を行っています。

「在職中に難病を発症した患者の雇用継続」も対象だと明記されています。これから 就職する方だけの窓口ではありません。いま働いている職場を続けるための相談ができます。

配置されているのは全国51か所のハローワーク(令和7年4月1日現在)で、すべての 都道府県に少なくとも1か所あります。北海道・東京・神奈川・大阪は2か所です。 配置先の一覧は 厚生労働省のPDFで確認できます。 相談日は安定所ごとに決まっていますので、行く前に電話で確認してください。

このほか、次の支援があります。

  • ジョブコーチ(職場適応援助者)支援 — 職場適応をしやすくするため、職場に ジョブコーチが派遣されます。地域障害者職業センターに配置されたジョブコーチのほか、 社会福祉法人等や事業主が自らジョブコーチを配置する形もあります。
  • 障害者就業・生活支援センター — 就業面と生活面の相談・支援を一体で行う地域の窓口です。
  • 地域障害者職業センター — 職業評価、職業準備支援、職場適応支援などの専門的な 職業リハビリテーションを行います。
  • 難病相談支援センター都道府県・指定都市ごとに置かれている、難病の患者さんとご家族のための相談窓口です。療養生活の相談から就労相談までを扱います。詳しく見る — 都道府県などが設置している難病の総合相談窓口です。 難病患者就職サポーターはここと連携して動きます。

会社の側にも、難病のある方を雇い入れた事業主向けの助成金として 特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)があります。 支給額や要件は改定されますので、金額はここには書きません。ハローワーク等の窓口で ご確認ください。会社が費用を心配しているときに、「そういう助成金があるらしいので ハローワークに聞いてみてもらえませんか」と伝えられるだけでも、話が前に進むことがあります。

休むことになったとき — 傷病手当金

休職の制度そのものは会社ごとの就業規則で決まります。まず人事・総務にどんな制度があるかを 確認するのが第一歩です。そのうえで、健康保険の傷病手当金健康保険から支給される、病気やけがで働けない間の所得保障です。支給期間は支給を開始した日から通算して1年6か月です。詳しく見るを知っておいてください。

パーキンソン病のように仕事とは関係なく起こる病気は、労災保険ではなくこちらの対象です。 全国健康保険協会(協会けんぽ)が示している要件は次の4つで、この4つすべてを満たす場合にのみ 給付の対象になります。

項目内容
待期休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日が対象。待期には有給休暇・土日祝日も含まれます
支給期間支給を開始した日から通算して1年6か月
1日あたりの額支給開始日以前12か月の標準報酬月額健康保険料や給付額を計算するために、給与を一定の幅で区切って当てはめた金額です。実際の給与額そのものではありません。詳しく見るを平均した額 ÷ 30 × 3分の2
給与が出ている場合給与が支払われている間は支給されません。ただし給与が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます

「連続して2日休んだ後、3日目に出勤した」場合は待期3日間が成立しません。ここは 間違えやすいところです。

退職後についても救済があります。退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、 退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態であれば、資格喪失後も引き続き支給を 受けられます。ただし、いったん働ける状態になったあと、再び働けない状態になっても 支給されません。

自営業・フリーランスの方が入る国民健康保険には、この制度が原則としてありません。 また、同じ傷病で障害厚生年金を受けられるようになると調整が入ります。 → 傷病手当金のしくみをくわしく

加入している健康保険組合ごとに扱いが違うことがありますので、手続きはご加入の健康保険 (協会けんぽの支部、または健康保険組合)と勤務先の担当者にご確認ください。

相談できる場所

相談先何を相談できるか
お勤め先の相談窓口・産業医両立支援の申出。ここが出発点です
産業保健総合支援センター(47都道府県)治療と仕事の両立支援全般。労働者からも事業者からも相談できます
ハローワークの障害者の専門援助窓口(難病患者就職サポーター)在職中の雇用継続の相談。全国51か所
難病相談支援センター都道府県などが設置する難病の総合相談窓口
通院先の医療ソーシャルワーカー何が使えるかを最初に整理してもらう相手
両立支援コーディネーター主治医と会社の間の情報の橋渡し
都道府県労働局障害者雇用促進法にもとづく差別・合理的配慮に関する相談
ご加入の健康保険(協会けんぽ支部・健康保険組合)傷病手当金の手続き

こんなときは

状況どうするか
会社に両立支援の窓口があるかわかりません人事・総務に「治療と仕事の両立支援の相談窓口はどこですか」と聞いてください。2026年4月から事業主の努力義務になった制度です。産業医がいる会社なら産業医からでも構いません
「今は忙しいから後で」と言われました指針は「業務の繁忙等を理由に必要な就業上の措置及び治療に対する配慮を行わないことはあってはならない」と明記しています。告示の該当箇所を示して、もう一度相談してください
主治医が仕事の内容を知りませんそれが普通です。だから「勤務情報を主治医に提供する際の様式例」があります。Wordでダウンロードして、職種・作業内容・勤務時間・通勤方法を書いて渡してください
会社が独自の様式を持っていますそちらを使ってください。指針も「事業主が定める様式等を活用して」としています
病名を職場全体に知られたくありません健康情報は原則としてご本人の同意なく取得されません。共有する範囲も「就業上の措置に必要な情報に限定する」と指針に書かれています。何をどこまで共有するかを申出のときに確認してください
会社が勝手に配置転換を決めました指針は「事業主が一方的に判断しないよう」求め、障害者雇用促進法第36条の4は「障害者の意向を十分に尊重しなければならない」と定めています。話合いの場を設けるよう求めてください
障害者手帳を持っていませんハローワーク等の支援の対象は「心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な方」とされています。手帳がなくても窓口で相談できます
パートタイムで働いています指針は「雇用形態に関わらず、労働者全てを対象とする」と明記しています
一度作った配慮が今の症状に合わなくなりましたプランは見直す前提の仕組みです。指針も治療の経過で必要な配慮が変わることを想定し、見直しを求めています。もう一度申し出てください
もう働き続けられないかもしれません判断する前に、ハローワークの難病患者就職サポーターに相談してください。「在職中に難病を発症した患者の雇用継続」も相談の対象です

患者さんとご家族へ

この制度でいちばん多く取りこぼしが出るのは、要件でも書類でもなく、申し出ないまま 時間が過ぎることです。両立支援は法律上、ご本人の申出から始まります。逆に言えば、 一言伝えるだけで、法律に根拠のある手続きが動き出します。

そして、申し出るときに手ぶらで行く必要はありません。厚生労働省の勤務情報提供書の様式に 自分の働き方を書き、症状の出る時間帯を数日分メモしておく——この2つがあるだけで、 主治医の意見書は具体的になり、会社が検討できる配慮の幅も広がります。ご家族が一緒に 記録を取っておくと、診察でも会社との話合いでもそのまま使えます。

医療費の助成については 難病医療費助成制度に、 介護保険については介護保険にまとめています。 職場に伝える時期の決め方や、実際に役に立った配慮の具体例は 仕事を続けるためにをご覧ください。

このページは法律相談や行政の決定に代わるものではありません。記載した内容は2026年8月時点で 厚生労働省、e-Gov法令検索、労働者健康安全機構、全国健康保険協会の公式ページで確認した ものです。制度・雇用率・金額は改定されますので、ご自分の状況については、お勤め先、 都道府県労働局、産業保健総合支援センター、ハローワーク、ご加入の健康保険、主治医に ご確認ください。