パーキンソン病が進むと、歩行補助つえや歩行器、車椅子が必要になる場面が出てきます。これらの 費用を1割負担で購入・修理できるのが補装具費支給制度です。
この制度でいちばん誤解されているのは、「身体障害者手帳がないと使えない」という思い込みです。 実際には、障害者総合支援法が定める難病等対象疾病に該当すれば、手帳がなくても対象になります。 そしてパーキンソン病はこの対象疾病に含まれています。以下は2026年8月時点で厚生労働省の 公式ページを実際に確認して整理したものです。
対象になる二つの入口
補装具費支給制度の対象者は、次のいずれかです。
- 身体障害者手帳を持っている方(身体障害児を含む)
- 難病患者等 — 障害者総合支援法施行令が定める対象疾病に該当する方
手帳を持っていなくても、2の入口があります。難病等対象疾病政令で定められた、手帳がなくても障害福祉サービス・補装具費支給・相談支援などの対象になる疾病の一覧です。平成25年4月に130疾病から始まり、その後も対象疾病は減ることなく増え続けています(令和7年4月時点で376疾病)。パーキンソン病は平成27年7月の332疾病への拡大時点ですでに一覧に含まれており、以来対象から外れたことはありません。詳しく見るは、厚生労働省が公表した平成27年7月時点の一覧で「241 パーキンソン病」として明記されています。この一覧は疾病が追加される一方であり、令和7年(2025年)4月時点で376疾病まで拡大しています。
対象になる補装具の種類
身体障害者・身体障害児に共通する対象種目は次のとおりです。
| 分類 | 種目 |
|---|---|
| 歩行・移動 | 歩行補助つえ、歩行器、車椅子、電動車椅子、車載用姿勢保持装置 |
| 姿勢の保持 | 座位保持装置 |
| 上肢・下肢 | 義肢、装具 |
| 視覚 | 視覚障害者安全つえ、義眼、眼鏡 |
| 聴覚 | 補聴器、人工内耳(の付属品等) |
| 意思伝達 | 重度障害者用意思伝達装置 |
パーキンソン病では、姿勢反射障害やすくみ足による転倒予防として歩行補助つえ・歩行器、 歩行が難しくなった段階での車椅子・電動車椅子が中心になります。座る姿勢の保持が難しい方は 座位保持装置も対象です。

費用負担 — 原則1割、上限月額あり
利用者負担は定率1割が原則です。そのうえで、家計の負担が際限なく重くならないよう、 所得区分ごとに1か月あたりの上限額が決まっています。
| 所得区分 | 負担上限月額 |
|---|---|
| 生活保護世帯 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 市町村民税課税世帯 | 37,200円 |
ただし例外があります。世帯の中で市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合は、 補装具費の支給対象外となります。この基準に該当するかどうかは世帯の所得状況によるため、 申請前に窓口で確認しておくと安心です。
低所得世帯向けに、利用者負担額の減免申請ができる場合もあります。負担が重いと感じたときは、 上限額の適用だけで終わらせず、窓口に減免の相談をしてください。
申請の流れ
補装具費の支払い方法には、いったん全額を立て替えてあとから請求する償還払いと、 業者が市町村に直接請求できる代理受領の2通りがあります。実務では代理受領が広く使われて おり、その場合の流れは次のとおりです。
耐用年数 — 「壊れるまで買い替えられない」わけではありません
補装具には種目ごとに耐用年数の目安が定められています。たとえば車椅子・電動車椅子は6年です。 ここで誤解しやすいのが、耐用年数の意味です。厚生労働省は、耐用年数とは通常の使用状態で修理不能 となるまでの予想年数であって、一律に適用しないとしています。
つまり、耐用年数の途中で壊れたり調子が悪くなったりしたときは、まず修理・調整で対応するのが 原則です。「まだ6年たっていないから何もできない」ということではありません。
パーキンソン病は進行性の病気です。症状が進んで今の杖や歩行器では体を支えきれなくなった、 座位保持の必要性が新たに出てきた、といった体の状態の変化は、修理では対応できない場合も あります。この場合に耐用年数内での再支給がどう扱われるかは個別の判断になりますので、 「前に支給を受けたから、もう次は無理だろう」と決めつけず、まず窓口に相談してください。
こんなときは
| 状況 | どうするか |
|---|---|
| 身体障害者手帳を持っていません | パーキンソン病は難病等対象疾病に含まれます。対象疾病に該当する診断書があれば、手帳がなくても申請できます |
| 手帳の申請と補装具の申請、どちらが先か迷っています | 難病等対象疾病での申請なら、手帳の可否を待つ必要はありません。歩行の不安があるなら先に補装具の相談を始めてください |
| 歩行補助つえと歩行器、どちらが対象か分かりません | どちらも対象種目です。すくみ足や姿勢反射障害の状態によって適した種目が変わるため、判定を受ける際に相談してください |
| 車椅子が壊れましたが、まだ4年しか使っていません | 耐用年数(6年)はあくまで目安で、一律には適用されません。まず修理・調整の相談を窓口にしてください |
| 症状が進んで、以前もらった歩行器では合わなくなりました | 体の状態の変化による再支給は個別の判断になります。耐用年数内でもまず窓口に相談してください |
| 世帯の税負担が重く、対象外と言われるか心配です | 市町村民税所得割の最多納税者が46万円以上の世帯は対象外です。該当するか分からない場合は申請前に窓口で確認できます |
患者さんとご家族へ
この制度で一番もったいないのは、「手帳がないから」という理由だけで申請を先延ばしにすることです。 難病等対象疾病としての入口があることを知らないまま、全額自己負担で杖や歩行器を用意している方も 少なくありません。転倒への不安が出てきた段階で、まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に 相談することをおすすめします。
このページは法律相談や行政の決定に代わるものではありません。記載した基準・金額は2026年8月時点で 厚生労働省の公式ページで確認したものです。制度は改定されますので、ご自分の申請については、 お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。


