介護保険は「高齢になったら使う制度」と受け取られていて、64歳以下の方はご自分に関係のある話だと 思わないまま何年も過ごしてしまうことがあります。ですが、パーキンソン病の場合それは事実と違います。

このページは2026年8月時点で、厚生労働省と、厚生労働省が運営する介護サービス情報公表システム (kaigokensaku.mhlw.go.jp)の公式ページを実際に 確認して整理したものです。金額や限度額は改定されますので、お読みになっている時期とこの日付を 見比べてください。

いちばん大事なこと — パーキンソン病は特定疾病です

介護保険に加入する(被保険者になる)のは40歳からです。被保険者は年齢で二つに分かれます。

区分だれがサービスを使えるのはどんなときか
第1号被保険者65歳以上の方要介護状態・要支援状態になったとき
第2号被保険者40歳から64歳までの、医療保険に加入している方老化が原因とされる病気(特定疾病)により要介護状態・要支援状態になったとき

つまり40歳から64歳の方は、原因が特定疾病であるときに限って介護保険が使えます。 ここが分かれ目です。そして厚生労働省が定める特定疾病介護保険法施行令第2条に個別疾病名が列記されている16の病気です。心身の病的加齢現象との医学的関係があると考えられる疾病のうち、65歳以上に多いが40歳以上65歳未満でも発生が認められ、かつ3〜6か月以上継続して要介護状態・要支援状態となる割合が高いと考えられるものが選ばれています。詳しく見る16種類の一覧には、 こう書かれています。

進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病【パーキンソン病関連疾患】

パーキンソン病は特定疾病です。65歳になっていなくても、40歳以上で、歩行・入浴・食事・着替えなどに人の手が必要になってきているなら、市区町村の窓口で要介護認定の申請ができます。「まだ年齢が足りないから」という理由だけであきらめるのは、使えるはずの支援をまるごと逃すことになります。

なお、厚生労働省の資料では表記が2通りあります。介護サービス情報公表システムの16種類の一覧では 「進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病」、厚生労働省「特定疾病の選定基準の 考え方」では「進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病【パーキンソン病関連疾患】」 です。中身は同じもので、3つの病気をまとめて一つの特定疾病として扱うという意味です。窓口で 「パーキンソン病は入っていますか」と聞かれたら、この一覧の何番目かではなく「パーキンソン病関連 疾患です」と伝えると話が早く進みます。

特定疾病16種類

筋萎縮性側索硬化症脳血管疾患
後縦靭帯骨化症進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
骨折を伴う骨粗しょう症閉塞性動脈硬化症
多系統萎縮症慢性関節リウマチ
初老期における認知症慢性閉塞性肺疾患
脊髄小脳変性症脊柱管狭窄症
糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
早老症末期がん

多系統萎縮症も別に一つの特定疾病として挙げられています。パーキンソン病と診断名が近い病気の多くが、 この一覧のどこかに入っているということです。

なぜパーキンソン病が「老化が原因の病気」の枠に入るのか

「老化が原因とされる病気」という言い方に引っかかる方がいます。若くして発症した方はなおさらです。 ここは制度の言葉づかいの問題なので、選定の基準を見ておくと納得しやすくなります。厚生労働省は 特定疾病の要件を次の二つとしています。

  1. 65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳以上65歳未満の年齢層においても発生が認められる等、 罹患率や有病率等について加齢との関係が認められる疾病であって、その医学的概念を明確に定義できるもの
  2. 3〜6か月以上継続して要介護状態又は要支援状態となる割合が高いと考えられる疾病

つまり「高齢者だけの病気」という意味ではなく、40歳以上65歳未満でも起こることが認められていて、 かつ介護が長く必要になりやすい病気だから選ばれている、ということです。パーキンソン病がここに 入っているのは、若い方を排除する理由ではなく、むしろ若い方にも門を開くための線引きです。

要介護認定の流れ

1
市区町村の窓口で申請する
お住まいの市区町村の窓口で要介護認定(要支援認定を含む)を申請します。申請には介護保険被保険者証が必要です。40歳から64歳までの方(第2号被保険者)が申請する場合は医療保険証が必要です。ご本人が行けないときの代行申請の可否は市区町村によって案内が異なるので、電話で確認してから動くと二度手間になりません。
2
認定調査を受け、主治医意見書が作成される
市区町村等の調査員が自宅や施設等を訪問して、心身の状態を確認する認定調査を行います。主治医意見書は市区町村が主治医に依頼します。主治医がいない場合は市区町村の指定医の診察が必要です。申請者が意見書の作成料を負担することはありません。
3
一次判定(コンピュータ)と二次判定(介護認定審査会)
調査結果と主治医意見書の一部の項目がコンピュータに入力され、全国一律の判定方法で要介護度が判定されます(一次判定)。その結果と主治医意見書に基づいて、保健・医療・福祉の専門職で構成される介護認定審査会が判定します(二次判定)。
4
認定結果の通知(原則30日以内)
市区町村が要介護認定を行い、申請者に結果を通知します。申請から認定の通知までは原則30日以内です。認定は要支援1・2から要介護1〜5までの7段階および非該当に分かれます。
5
ケアプランをつくってサービスが始まる
要介護1以上の方が在宅のサービスを使う場合は、介護支援専門員(ケアマネジャー)のいる居宅介護支援事業者にケアプランの作成を依頼します。要支援1・2の方は地域包括支援センターに相談します。施設に入る場合は施設の介護支援専門員が作成します。

パーキンソン病の方が認定調査でつまずきやすいところ

認定調査はその日その時間の様子を見て行われます。パーキンソン病には薬が効いている時間と 効きが切れる時間の波があり、調子のよい時間帯に調査が当たると、実際より軽く見えてしまうことが あります。動けている場面だけが記録に残る、ということです。

調査の日はいちばん困っている時間帯の様子を言葉で補ってください。「朝の薬が効くまでは寝返りも打てない」「夕方は玄関で足がすくんで動けなくなる」のように、時間帯と具体的な場面をそのまま伝えます。ご家族が横で見ている事実は、ご本人が言い落としがちな部分を埋めてくれます。日ごろから、困った場面を日付と時間つきでメモしておくのがいちばん確実です。

有効期間と、途中で状態が変わったとき

認定には有効期間があります。

申請の種類有効期間
新規申請・変更申請原則6か月(状態に応じ3〜12か月まで設定)
更新申請原則12か月(状態に応じ3〜48か月まで設定)

有効期間を過ぎると介護サービスが利用できなくなります。満了までに更新申請をしてください。

そしてパーキンソン病で覚えておいていただきたいのがもう一つあります。身体の状態に変化が生じた ときは、有効期間の途中でも要介護認定の変更の申請ができます。進行して介助の必要が増えたのに 次の更新まで我慢する、ということをしなくてよいということです。区分が上がれば使えるサービスの量 (後述の区分支給限度基準額)も増えます。

要支援1・2、要介護1〜5は何を測っているのか

要介護度は、病気の重さではなく「介護の手間」を測っています。厚生労働省の資料は、要介護認定を 「介護の手間」を表す「ものさし」としての時間である要介護認定等基準時間入浴・排せつ・食事等の直接生活介助、洗濯・掃除等の間接生活介助、問題行動関連行為、歩行訓練等の機能訓練関連行為、輸液の管理等の医療関連行為という5分野について推計される時間です。実際に介護に費やしている時間そのものではなく、全国一律に判定するための「ものさし」として使われます。詳しく見るを 基準にあてはめて行うもの、と説明しています。

区分要介護認定等基準時間
要支援25分以上32分未満、またはこれに相当する状態
要介護132分以上50分未満、またはこれに相当する状態
要介護250分以上70分未満、またはこれに相当する状態
要介護370分以上90分未満、またはこれに相当する状態
要介護490分以上110分未満、またはこれに相当する状態
要介護5110分以上、またはこれに相当する状態

ここが誤解されやすいところです。この時間は実際に介護に費やしている時間そのものではありません。 全国どこでも同じ判定になるようにするための「ものさし」です。「うちは1日中付き添っているのに 要介護2なんておかしい」と感じたときは、この尺度で測られていることを知っておくと、窓口での話が かみ合いやすくなります。

厚生労働省の資料は、状態像のめやすとして次のように整理しています(平成14年度の調査研究の報告を ふまえたもので、あくまで参考です)。

区分おおむねの状態像
非該当(自立)歩行や起き上がりなどの基本的動作を自分で行え、薬の内服や電話の利用などを行う能力もある
要支援基本的動作はほぼ自分で行えるが、要介護状態になることを予防するために何らかの支援を要する
要介護1要支援状態から手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、部分的な介護が必要
要介護2要介護1に加え、日常生活動作についても部分的な介護が必要
要介護3日常生活動作・手段的日常生活動作の両面で著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要
要介護4要介護3に加えさらに動作能力が低下し、介護なしには日常生活を営むことが困難
要介護5要介護4よりさらに動作能力が低下し、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能

なお、非該当と認定された方でも、市区町村が行っている地域支援事業により、生活機能を維持する ためのサービスや生活支援サービスが利用できる場合があります。「非該当だったので終わり」ではありません。 市区町村または地域包括支援センター市区町村が設置する高齢者の暮らし全般の相談窓口です。介護保険の要支援1・2の方のケアプランもここが担当します。詳しく見るに相談してください。

自己負担は原則1割。ただし「使える量」に上限があります

介護保険サービスを利用したときの利用者負担は、かかった費用の1割(一定以上所得者の場合は 2割又は3割)です。1万円分のサービスを使えば自己負担は1千円(2割なら2千円)ということです。

2割・3割になる所得の線引きは、今回確認した公式ページには具体的な金額が示されていませんでした。 ご自分が何割負担かは、市区町村から交付される介護保険負担割合証に記載されていますので、 そちらでご確認ください。

在宅でサービスを使う場合、もう一つ知っておく必要があるのが 区分支給限度基準額居宅サービスについて、要介護度ごとに定められた1か月あたりの利用限度額です。限度額の範囲内なら自己負担は1割(2割・3割)ですが、限度額を超えて使った分は全額が自己負担になります。詳しく見るです。

区分1か月あたりの限度額
要支援150,320円
要支援2105,310円
要介護1167,650円
要介護2197,050円
要介護3270,480円
要介護4309,380円
要介護5362,170円

この額は厚生労働省が示している目安で、実際には介護報酬の「単位」に地域ごとの単価をかけて 計算されるため、お住まいの地域によって多少変わります。ご自分の限度額は担当のケアマネジャーか 市区町村の窓口でご確認ください。

限度額の範囲内なら1割(2割・3割)の自己負担ですが、限度額を超えて使った分は全額自己負担に なります。この枠の中に、訪問介護も通所介護も福祉用具貸与も一緒に入ります。だから「デイサービスを 増やしたら歩行器のレンタルが枠に入らなくなった」ということが起こります。何をどれだけ組むかは、 担当のケアマネジャーと優先順位を決めながら相談してください。

また施設に入る場合は、1割(2割・3割)負担のほかに居住費・食費・日常生活費の負担も必要に なります。在宅サービスとの大きな違いはここで、見積もりが狂うのもたいていこの部分です。

払いすぎたときに戻るしくみ — ただし「申請しないと」戻りません

負担が重くなりすぎないよう、軽減のしくみが用意されています。共通しているのは、どれも自動では 適用されず申請が要るということです。

高額介護サービス費

月々の利用者負担額(福祉用具購入費や食費・居住費等一部を除く)の合計額が、所得に応じた上限額を 超えた場合、超えた分が介護保険から支給されます。支給を受けるためには市区町村への申請が必要です。

設定区分対象者負担の上限額(月額)
第1段階①生活保護を受給している方等/②15,000円への減額により生活保護の被保護者とならない場合/③市町村民税世帯非課税の老齢福祉年金受給者①15,000円(個人)/②15,000円(世帯)/③24,600円(世帯)・15,000円(個人)
第2段階市町村民税世帯非課税で公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80.9万円以下24,600円(世帯)・15,000円(個人)
第3段階市町村民税世帯非課税で第1段階及び第2段階に該当しない方24,600円(世帯)
第4段階①市区町村民税課税世帯〜課税所得380万円(年収約770万円)未満/②課税所得380万円〜690万円(年収約1,160万円)未満/③課税所得690万円(年収約1,160万円)以上①44,400円(世帯)/②93,000円(世帯)/③140,100円(世帯)

「世帯」は住民基本台帳上の世帯員で介護サービスを利用した方全員の負担の合計に対する上限、「個人」は ご本人の負担に対する上限です。第4段階の課税所得による判定は、同一世帯内の65歳以上の方の課税所得で 行われます。

特定入所者介護サービス費(補足給付)

介護保険施設に入所している方などで所得や資産等が一定以下の場合、負担限度額を超えた居住費と 食費の負担額が介護保険から支給されます。利用するには市区町村に負担限度額認定を申請する必要が あります。段階の判定には預貯金額の要件もあり、負担限度額は所得段階・施設の種類・部屋のタイプに よって細かく分かれています。

高額医療・高額介護合算制度

同じ医療保険の世帯内で、医療保険と介護保険の両方に自己負担が生じた場合、合算後の負担額が 軽減されます。決められた限度額(年額)を500円以上超えた場合に、医療保険者に申請すると 超えた分が支給されます。

金額と所得区分は改定されます。ここに書いた額は2026年8月時点で厚生労働省の公式ページに掲載されていたものです。ご自分がどの区分になるか、いまいくらかは、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口でご確認ください。

使えるサービスの種類

電動ベッドと長いすの置かれた部屋

介護保険で使えるサービスは、要介護1〜5の方が使う介護給付と、要支援1・2の方が使う 予防給付に分かれます。大きくはこう整理されています。

使い方主なサービス
相談・ケアプラン作成居宅介護支援
自宅に来てもらう訪問介護(ホームヘルプ)、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリテーション、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護
施設に通う通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)、地域密着型通所介護、療養通所介護、認知症対応型通所介護
訪問・通い・宿泊を組み合わせる小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護
短期間泊まる短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護
施設等で生活する介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
福祉用具を使う福祉用具貸与、特定福祉用具販売

名前の似た3つの施設介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は要介護の方のための生活の場、介護老人保健施設(老健)はリハビリなどで在宅復帰を目指す施設、介護医療院は長期の療養と生活の場をあわせた施設です。名前は似ていますが役割と費用のしくみが違います。詳しく見るは、 いま必要なのが生活の支援なのか、在宅復帰に向けたリハビリなのか、長期の医療・療養なのかで分かれます。

1割負担の場合の利用者負担の例として、厚生労働省は次のような額を示しています。

サービス1割負担のときの利用者負担
訪問介護・身体介護 30分以上1時間未満1回387円
訪問介護・生活援助 45分以上1回220円
訪問介護・通院時の乗車、降車等介助1回97円
通所介護(通常規模・7時間以上8時間未満)要介護21回777円
短期入所生活介護(併設型・多床室)要介護11日603円

地域区分や事業所の規模、加算によって実際の額は変わります。通所介護は要支援1・2の方は利用でき ません(市町村の総合事業に移行しています)。ショートステイの連続利用日数は30日までです。

地域密着型サービス(グループホーム、地域密着型通所介護、小規模多機能型居宅介護など)は、 その事業所や施設がある市区町村にお住まいの方の利用が基本です。それ以外のサービスは他の 市区町村にある事業所も利用できます。施設探しの範囲を決めるときに効いてくる違いです。

在宅で使う訪問系サービスをもう少しくわしく知りたい方は ひとりで暮らす方の備え、施設の種類の違いは 介護施設を探すときにまとめています。

パーキンソン病でいちばん効くのは、福祉用具貸与と住宅改修です

ここはこの制度の中で、パーキンソン病の毎日にもっとも直接効く部分です。すくみ足、姿勢反射障害、 立ち上がりのしにくさは、道具と家のつくりでかなり肩代わりできます。

福祉用具貸与 — 借りる

指定を受けた事業者が、心身の状況・希望・生活環境をふまえて適切な福祉用具を選ぶ援助、取り付け、 調整などを行ったうえで貸与します。対象は13品目です。

対象品目(13品目)
特殊寝台および付属品/床ずれ防止用具/体位変換器/手すりスロープ/車いすおよび付属品/歩行器歩行補助杖/移動用リフト/徘徊感知機器/自動排泄処理装置

費用は1割(一定以上所得者は2割又は3割)です。ただし前述の区分支給限度基準額の枠の中に 入るので、他のサービスとの組み合わせで考える必要があります。

⚠️ 品目によっては軽い段階では原則対象になりません。車いす、車いす付属品、特殊寝台、特殊寝台 付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊感知器、移動用リフトは、要支援1・2と要介護1の方は 原則として保険給付の対象になりません。自動排泄処理装置は要支援1・2と要介護1・2・3の方は原則対象外です。 逆に言えば手すり・スロープ・歩行器・歩行補助杖は、この制限の外にあります

特定福祉用具販売 — 買う

入浴や排泄に用いる、貸与になじまない福祉用具は購入になります。対象は9品目(腰掛便座、自動排泄処理 装置の交換可能部品、排泄予測支援機器、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部品、固定用 スロープ、歩行器〈歩行車は除く〉、歩行補助つえ〈松葉杖は除く〉)です。

いったん全額を支払ったあと、費用の9割(一定以上所得者は8割又は7割)が介護保険から払い戻されます (償還払い)。同一年度で購入できるのは10万円までです。

なお、固定用スロープ、歩行器(歩行車は除く)、単点杖(松葉づえは除く)、多点杖は貸与と販売の どちらかを選べます。どちらがよいかは、ケアマネジャー・福祉用具専門相談員が提案してくれます。 道具の選び方そのものは福祉用具の選びかたにまとめています。

住宅改修 — 生涯20万円まで

段差の解消や手すりの設置などの住宅改修も保険給付の対象です。対象になる工事は6種類です。

住宅改修の種類
(1)手すりの取付け
(2)段差の解消
(3)滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
(4)引き戸等への扉の取替え
(5)洋式便器等への便器の取替え
(6)その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

支給限度基準額は生涯20万円で、要支援・要介護の区分にかかわらず定額です。保険給付は原則9割 (上限18万円)、所得に応じて8割(上限16万円)・7割(上限14万円)となります。限度額の範囲内で あれば複数回に分けて申請できますので、20万円を一度に使い切る必要はありません。

20万円の枠はやり直せる場合があります。要介護状態区分が重くなったとき(三段階上昇時)と、転居した場合は、再度20万円までの支給限度基準額が設定されます。進行によって必要な改修が変わっていくパーキンソン病では、覚えておく価値のある決まりです。

手続きの順番を間違えないでください。住宅改修は工事の前に市町村へ申請し、工事完成後に 領収書等を提出することで保険給付されます。先に工事をしてしまうと給付が受けられないことがあります (やむを得ない事情がある場合には工事完成後の申請も可能とされています)。

まずはケアマネジャー等に相談するところから始まります。理由書を書けるのは、介護支援専門員、 地域包括支援センターの担当職員、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上その他これに 準ずる資格等を有する方です。工事業者に「全部やっておきます」と任せきりにせず、理由書をだれが書くのかは 最初に確認してください。

家のどこに手を入れるかを考えるときは 転ばない家にするもあわせてご覧ください。

難病医療費助成制度とはどう違うのか — どちらも申請できます

パーキンソン病は指定難病6でもあります。二つの制度は名前が似ていないので混同されることは少ない のですが、「どちらか一方を選ぶもの」だと思ってしまう方がいます。そうではありません。

難病医療費助成制度介護保険制度
根拠となる法律難病法介護保険法
何の負担が軽くなるか医療費(指定医療機関での指定難病の医療)介護サービスの利用料
何を見て判定するか病気の診断と重症度(ヤール3度以上かつ生活機能障害度日常生活と通院にどれくらい介助が必要かで3段階に分ける尺度です。ホーン・ヤール重症度分類とは別の尺度で、この二つを合わせて判定します。詳しく見る2度以上、または軽症高額該当重症度分類には届かないけれど高額な医療を続ける必要がある方のための入口です。医療費総額(10割)が33,330円を超える月が、申請月以前の12か月以内に3回以上あれば対象になります。詳しく見る介護にどれだけ手間がかかるか(心身の状態)
年齢の条件40歳以上。40歳から64歳は特定疾病が原因のときに限られます
申請の窓口都道府県・指定都市(保健所等)市区町村の介護保険担当窓口
書類を書く人難病指定医(臨床調査個人票)主治医(主治医意見書。市区町村が依頼します)
自己負担所得区分別の月額上限(0円〜30,000円)原則1割(一定以上所得者は2割又は3割)

目的が違う別の制度なので、両方に申請できます。医療費が軽くなっても介護サービスの利用料は 別にかかりますし、その逆も同じです。二つの制度をつなぐしくみとして、前述の高額医療・高額介護 合算制度があります。同じ医療保険の世帯内で医療と介護の両方に自己負担が生じているときは、 合算して軽減を受けられる可能性があるということです。

⚠️ 訪問看護のように、医療保険からも介護保険からも受けられるサービスがあります。どちらの制度で 受けることになるかは状態や制度上の決まりによって変わりますが、そこは今回確認した公式資料の範囲を 超えるため、ここでは断定しません。二つの受給者証をお持ちの方は、担当のケアマネジャー、市区町村の 介護保険担当窓口、通院先の医療ソーシャルワーカーに必ずご確認ください。

難病医療費助成制度のほう(対象になる重症度の線引き、軽症高額該当、自己負担上限額、申請の遡り)は 難病医療費助成制度の記事にくわしくまとめています。

相談の入口 — 地域包括支援センターとケアマネジャー

どこに相談すればよいかわからないとき、日本での入口は地域包括支援センターです。地域の高齢者の 総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行う機関で、市町村が設置して います。厚生労働省によれば全国に5,487か所(ブランチ〈支所〉を含めると7,374か所。令和7年 4月末現在)あります。お住まいの地域のセンターは、厚生労働省のページから都道府県ごとの一覧を たどって探せます。

認定を受けたあと、実際に生活を組み立てる相手になるのが ケアマネジャー(介護支援専門員)介護支援専門員のことです。本人やご家族の希望と心身の状態をふまえてケアプラン(どのような介護サービスをいつ、どれだけ利用するかを決める計画)を作成し、サービス事業者との調整を行います。要介護1以上の在宅サービスは居宅介護支援事業者のケアマネジャー、要支援1・2は地域包括支援センターが担当します。詳しく見るです。 ケアプランはいちど決めたら固定というものではありません。パーキンソン病のように状態が変わっていく 病気では、困っていることが変わったら、その都度そのまま伝えるのがいちばん早いです。

こんなときは

状況どうするか
55歳です。介護保険は関係ないと思っていましたパーキンソン病は特定疾病です。40歳以上なら第2号被保険者として要介護認定を申請できます。申請には介護保険被保険者証と医療保険証が必要です
窓口で「特定疾病に当たりますか」と聞かれました「パーキンソン病関連疾患です」と伝えてください。厚生労働省の一覧では「進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病」と一つにまとめて記載されています
調子のよい時間に調査が来て、軽く判定されました有効期間の途中でも変更の申請ができます。困っている時間帯の具体的な場面を日付つきで記録して、市区町村の窓口とケアマネジャーに相談してください
非該当と言われました市区町村の地域支援事業で使えるサービスがある場合があります。地域包括支援センターに相談してください
歩行器を借りたいのですが要介護1です歩行器・歩行補助杖・手すり・スロープは、要支援1・2や要介護1でも原則対象外にはなりません。ケアマネジャーか福祉用具専門相談員にご相談ください
玄関に手すりを付けたい住宅改修の対象です。生涯20万円まで、原則9割が給付されます。ただし工事の前に市町村へ申請してください
手すりは借りるのと工事するのと、どちらですか取り付け工事を伴わない手すりは福祉用具貸与、壁に固定する工事を伴うものは住宅改修です。どちらになるかはケアマネジャー・福祉用具専門相談員に確認してください
月の負担が上限を超えていそうです高額介護サービス費は申請しないと支給されません。市区町村に申請してください
医療費も介護費もかさんでいます高額医療・高額介護合算制度があります。年額の限度額を500円以上超えた場合、医療保険者に申請すると超えた分が支給されます
難病の受給者証を持っています。介護保険は使えますか目的が違う別の制度なので、両方に申請できます。重なるサービスの扱いはケアマネジャーと窓口にご確認ください
認定の有効期間が切れそうです期間を過ぎるとサービスが使えなくなります。満了までに更新申請をしてください
要介護5で、投票所に行くのが難しいです郵便等投票制度の対象になります。お住まいの選挙管理委員会に確認してください

患者さんとご家族へ

この制度でいちばんよく損が出るのは、「まだ65歳じゃないから」と申請しないまま何年も過ごすことと、 申請すれば戻るお金を申請しないことの二つです。前者は特定疾病の一行を知っているかどうかだけの 差ですし、後者は高額介護サービス費も補足給付も合算制度も、すべて自分から申請して初めて動くしくみ だからです。

もう一つ、パーキンソン病に固有の落とし穴があります。認定調査はその日その時間の姿を見るという ことです。オン・オフの波がある病気で、これは構造的に不利にはたらきます。困っている場面を日付と 時間つきで書き留めておくことは、調査の日にも、変更申請のときにも、そのまま根拠として使えます。 ご家族が見ている場面はご本人が言い落としがちな部分なので、いっしょに記録しておいてください。

まだ何も始めていない段階なら、最初の一歩は地域包括支援センターに電話をすることです。 申請できるのか、いま何が使えるのか、どの窓口に行けばよいのかを、まとめてそこで聞けます。

このページは行政の決定や医学的な判断に代わるものではありません。記載した制度の内容・金額・限度額は 2026年8月時点で厚生労働省の公式ページおよび介護サービス情報公表システムで確認したものです。 制度は改定されますので、ご自分の申請については、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口、 地域包括支援センター、担当のケアマネジャーにご確認ください。