歩くことや手を使うことが不便になってきたとき、ふさわしい福祉用具が一つあるだけで、 毎日の危険ともどかしさが大きく減ることがあります。ただ、福祉用具を使うことを 「病気が重くなった証拠」と受け取って先延ばしにする方が多いのですが、必要なときに早く 使いはじめるほうが、転倒やけがを防いで、自立した生活をより長く保つのに役立ちます。 なんでもかまわず使うのではなく、自分の状態に合ったものを選ぶことが大切です。

地面に描かれた車いすの案内表示

杖は接地面の広いものが安定します

ふつうの一本杖より、床に触れる部分が四方向に広がった多点杖のほうがバランスを とるのに安定しています。握りは手首に負担のかかりにくい形のものが楽です。リズムよく 振動して歩く拍子をつくってくれる杖も出ていますので、歩き方が不規則だったり、足が よく止まってしまうなら、こうした製品について理学療法士にたずねてみることができます。

歩行器は重さとレーザー機能を確認してみてください

車輪のついた歩行器(歩行車)は、ある程度の重さがある製品のほうが、かえって安定して 支えてくれることが多いです。床にレーザーの線を映して次の一歩の目標を見せてくれる 歩行器もあり、歩き出しが急に止まってしまうすくみ足のときに役立つ目で見える めじるしを、一歩ごとに自動でつくってくれる働きをします。手に入れられるかどうかや、 自分の歩き方に合うかどうかは、理学療法士や福祉用具の専門相談員にたずねてみてください。

手のふるえには食事の道具から変えてみてください

食事のときに手がふるえてこぼしてしまう、食べにくいという場合は、柄が太くて重みのある スプーンやフォークから試してみるとよいでしょう。重さがふるえの幅を小さくしてくれる 効果があります。ただ、こうした重みのある食器は軽い〜中くらいのふるえには役立ちますが、 ふるえが強い場合や腕がひどくこわばっている場合には、かえって重さのせいで動かしにくく なることもあることも知っておくとよいでしょう — 買って使ってみて合わなければ、別の 方法を探すことになるかもしれません。もっと強いふるえには、手のふるえをセンサーで感じ取って その場で打ち消してくれる食器も出ています。お皿が滑らないように押さえてくれる滑り止め マットや、食べ物がお皿の外にこぼれないよう縁が立ち上がったお皿も、食事をずっと楽に してくれます。

トイレにも手すりを足すことができます

便器のそばに手すりを取りつけたり、便座の高さを上げる補助便座を使うと、すわったり 立ち上がったりする動作がずっと楽になります。とくにひざや腰を曲げるのがつらいなら、 便座の高さを数センチ上げるだけでも、立ち上がるときの力がずっと少なくてすみます。

着替えや書きものの道具も一緒に考えてみてください

着替えと入浴字が小さくなってきたときの記事で 扱ったボタンエイド、ファスナーの持ち手、太いペンのような道具も、広く見れば同じ種類の 福祉用具です。一つずつ別々に考えるのではなく、毎日のなかで不便に感じた場面を一つずつ 書き出してみて、それに合う道具を探していくやりかたが効率的です。

介護保険で借りられる・買えるものがあります

介護保険には、福祉用具を借りる福祉用具貸与と、貸し出しになじまないものを買う 特定福祉用具販売という仕組みがあります。厚生労働省の介護サービス情報公表システムに よると、貸与の対象には手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ・車いす・特殊寝台などが 含まれ、費用の1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)を利用者が負担します。 販売の対象には腰掛便座・入浴補助用具・簡易浴槽などが含まれ、同一年度に購入できるのは 10万円までで、費用の9割(一定以上の所得がある場合は8割または7割)が介護保険から 払い戻されます。なお、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・歩行補助つえ(松葉づえを 除く)は、貸与と販売のどちらかを選べる仕組みになっています。利用するには介護保険の 認定と手続きが必要で、対象になるかどうかは状態によって判断されますので、まずは ケアマネジャーや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

ご家族が先に必要性を感じることも多いです

本人はまだ不便をあまり感じていなくても、そばで見ているご家族が先に危ない場面に気づく ことが多いです。「転びそうになった」「食事の時間がどんどん長くなっている」のように 具体的な場面をメモしておくと、次の診察で作業療法士への紹介をお願いするときに、 説得力のある根拠になります。ただ、一度にいくつもの道具を差し出すとかえって負担に 感じられることがあるので、いちばん不便にしていることを一つずつ順にすすめるのが よいでしょう。

どの道具が合うかは専門職と一緒に決めてください

世の中にはいろいろな福祉用具がありますが、全部が必要なわけではなく、よく合うものは 人によって違います。作業療法士や理学療法士に、毎日のなかでどんな場面がいちばんつらいのかを 具体的に話すと、優先順位を決めて、必要な道具からすすめてもらえます。

この記事は医学的な診断や治療の代わりになるものではありません。どんな福祉用具が必要かは、 作業療法士・理学療法士と相談して決めてください。