障害福祉サービスの記事では、 「障害者手帳がなくても使える」と書きました。この制度はその反対です。

厚生労働省の説明はこうです。

更生医療 … 身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を 除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)

手帳を持っている方にとっては、手術のときの負担がはっきり変わる制度です。以下は 2026年8月時点で、厚生労働省の資料と自治体の公式ページを実際に確認して整理したものです。

どういう制度か

心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担を軽くする公費負担医療 です。自立支援医療には三つあり、更生医療はそのうちの一つです。

種類対象
更生医療身体障害者手帳の交付を受けた18歳以上の方
育成医療身体に障害のある18歳未満の児童
精神通院医療統合失調症などの精神疾患で通院を続ける方

負担は原則1割。そのうえで所得に応じたひと月の上限額がつきます(月の総医療費の1割が 上限額に満たない場合は1割)。

いちばん気をつけるところ — 手帳に書かれた障害との関係

ここを知らずに窓口へ行くと話がかみ合いません。大分県の説明が端的です。

適用範囲は身体障害者手帳に記載されている障がい内容と因果関係があり、障がいの除去 又は軽減が見込まれるものに限定されます。

つまり「手帳を持っている=どんな治療でも1割になる」ではありません。手帳に書かれた障害と つながっていて、その障害がよくなる見込みがある治療が対象です。

厚生労働省が挙げている対象医療の例です。

障害の種類対象となる医療の例
視覚障害水晶体摘出手術、網膜剥離手術、虹彩切除術、角膜移植術
聴覚障害穿孔閉鎖術、形成術
言語障害形成術、歯科矯正
肢体不自由形成術、人工関節置換術
心臓弁口・心室心房中隔手術、ペースメーカー埋込み手術
腎臓人工透析療法、腎臓移植術
肝臓肝臓移植術
小腸中心静脈栄養法
免疫抗HIV療法、免疫調節療法
パーキンソン病で手帳を取る場合、多くは肢体不自由です。上の表で肢体不自由に挙げられているのは形成術と人工関節置換術で、これは例示です。脳深部刺激療法(DBS)のような手術がこの制度の対象になるかどうかは、公式資料では確認できませんでした。対象かどうかは手帳に書かれた障害との因果関係と効果の見込みから個別に判断されますので、主治医と、お住まいの市区町村の窓口・身体障害者更生相談所に必ず確認してください。ここで「たぶん対象だろう」と決めて進めると、あとで戻せません。

負担上限月額

厚生労働省が公表している表です。所得区分は医療保険の世帯単位で見ます。

所得区分更生医療の負担上限月額重度かつ継続費用が高額な治療を長期にわたり続けなければならない方の上限額をさらに下げるしくみです。難病医療費助成の「高額かつ長期」とは別の制度の別の言葉です。詳しく見るのとき
一定所得以上(市町村民税所得割 235,000円以上/年収約833万円以上)対象外20,000円
中間所得2(所得割 33,000円以上235,000円未満/年収約400〜833万円未満)総医療費の1割 または高額療養費の自己負担限度額10,000円
中間所得1(所得割 33,000円未満/年収約290〜400万円未満)総医療費の1割 または高額療養費の自己負担限度額5,000円
低所得2(市町村民税非課税)5,000円5,000円
低所得1(非課税で本人の年収82.65万円以下)2,500円2,500円
生活保護0円0円

年収は夫婦+障害者である子の3人世帯を想定した粗い試算です。ご自分がどの区分かは窓口で 確認してください。

表の一番上を見てください。年収約833万円以上の方は原則として対象外です。ただし「重度かつ継続」に当たれば20,000円の上限がつきます。そして更生医療で「重度かつ継続」になる病気の一覧に肢体不自由は入っていません — 腎臓・小腸・免疫・心臓(心臓移植後)・肝臓(肝臓移植後)だけです。ただしもう一つ入口があります。病気にかかわらず医療保険の多数回該当の方も対象になります。ひと月の医療費が高い状態が続いている方は、ここを確認してみてください。

手術が決まったら、すぐ動いてください

この制度でいちばん損が出るのは順番です。

1
① まず、その医療機関が指定を受けているか確認する
更生医療の治療は、都道府県知事等から指定を受けている医療機関でなければ行えません。かかりつけの病院が指定を受けているとは限りません。治療先を決める前に確認してください。
2
② 主治医に意見書を書いてもらう
申請には医師が作成する意見書が要ります。手帳に書かれた障害と、これから受ける治療のつながり、そして効果の見込みが書かれる書類です。
3
③ 市区町村の窓口に申請する
申請書、医師の意見書、身体障害者手帳の写し、被保険者証の写し、所得を確認できる資料などを持って行きます。必要書類は自治体で案内が違うので、行く前に電話で確認しておくと二度足になりません。
4
④ 身体障害者更生相談所の判定を受ける
大分県の説明では「更生医療の給付は、身体障害者更生相談所の判定を事前に受けた後に決定するのが原則です」とされています。ここに時間がかかります。
5
⑤ 受給者証を受け取って治療を受ける
支給が決まると受給者証が交付されます。指定医療機関で提示して治療を受けます。
原則は「治療の前に申請」です。ただし大分県は「正当な理由と認められれば給付の開始日を市町村長への申請日とすることができます」とも書いています。手術の日程が決まった時点が、窓口へ行く日だと思ってください。急な入院で間に合わなかったときも、あきらめる前に窓口で事情を話してみてください。

有効期間にも注意が要ります。大分県の説明では原則として3か月以内で、人工透析や抗HIV 療法のように治療が長期に及ぶ通院の場合にかぎり最長1年以内とすることができる、とされて います。手術が延期になったときは、期間が切れていないか確認してください。

難病医療費助成・高額療養費とどう使い分けるのか

パーキンソン病の方は、同時に複数の制度に関わることになります。目的が違うので、 どれか一つを選ぶものではありません

制度何に効くか手帳
難病医療費助成パーキンソン病の医療全般。所得別に月額0〜30,000円の上限不要
更生医療手帳の障害を除去・軽減する手術等。原則1割+月額上限必要
高額療養費病名を問わないすべての保険診療。ひと月の上限不要

受給者証をお持ちの方は、まずその手術が難病医療費助成の対象になるかを確認してください。 パーキンソン病の治療として行われる医療なら、そちらで上限まで、ということがあり得ます。 どちらが有利かはご自分の所得区分と治療の中身で変わりますので、窓口で両方を並べて聞くのが 確実です。「更生医療を使いたいのですが、難病の受給者証もあります」と最初に言えば、窓口は 両方を見て案内できます。

このほか、身体障害者手帳1級・2級などをお持ちの方は心身障害者医療費助成(マル障、東京都の 制度)を使えることがあります。更生医療が優先して適用され、マル障はその自己負担分を さらに助成する仕組みです。65歳以上になって初めて手帳を取得した場合は対象外という 注意点があるため、別記事にまとめています。 → 心身障害者医療費助成(マル障)をくわしく

用意するもの

必要書類は自治体によって案内が異なります。行く前に窓口へ電話で確認してください。

こんなときは

状況どうするか
身体障害者手帳を持っていません更生医療は使えません。ただし手帳がなくても使える制度があります → 障害福祉サービス
手術を受けることになりました日程が決まったらすぐ窓口へ。原則は治療のに申請です
DBSを検討しています対象になるかは個別判断です。主治医と市区町村の窓口・身体障害者更生相談所都道府県・指定都市に置かれている専門機関です。更生医療では、給付を決める前にここの判定を受けるのが原則とされています。詳しく見るに確認してください
かかりつけ病院で受けたいですその病院が指定自立支援医療機関自立支援医療を行えるのは、都道府県知事等から指定を受けた医療機関だけです。かかりつけの病院が指定を受けているとは限りません。詳しく見るかを先に確認してください。指定がないと使えません
年収が高いので対象外と言われました「重度かつ継続」に当たらないか確認を。医療保険の多数回該当直近12か月のうちに高額療養費の支給を受けた月が3回以上あると、4回目から上限額がさらに下がる仕組みです。詳しく見るなら病気を問わず対象です
難病の受給者証も持っています窓口で両方を並べて相談してください。どちらが有利かは所得区分と治療の中身で変わります
手術が延期になりました有効期間は原則3か月以内です。切れていないか確認してください
すでに手術を受けてしまいました原則はさかのぼれませんが、正当な理由が認められれば申請日から給付とされる場合があります。窓口で事情を話してください

患者さんとご家族へ

この制度は、手帳を取ってからが本番という性格を持っています。手帳の申請を「等級が付いても たいして変わらないだろう」と後回しにしている方がいますが、手術の話が出たときにいちばん効いて くるのがここです。

そして順番を覚えておいてください。指定医療機関か確認する → 意見書をもらう → 申請する → 判定を受ける → それから治療。手術の日程が決まってから動き出すと、判定に間に合わないことが あります。主治医に「更生医療を使いたい」と早めに伝えておくと、病院側も段取りを組めます。

このページは行政の決定に代わるものではありません。記載した内容は2026年8月時点で 厚生労働省および自治体の公式資料で確認したものです。運用は自治体によって異なる部分が ありますので、ご自分の適用については、お住まいの市区町村の窓口と主治医にご確認ください。