パーキンソン病の患者さんとパートナーのあいだの性の悩みは、調査で男性の 42.6〜79%、女性の36〜87.5%が経験していると報告されるほど、 よくあることです。それでも診察室で自分から切り出しにくい話題なので、そのままに なってしまうことが多くあります。よくあることだと知るだけでも、「自分だけだろうか」 という重さがいくらか軽くなります。
原因は一つではありません
性機能の変化は、いくつもの要因が重なって現れます。パーキンソン病そのものによる自律神経の 問題で、男性では勃起不全、女性では性的な高まりや潤いの低下が起こることがありますし、 気分の落ち込み・疲れ・痛み・体の動かしにくさも、性への関心や満足感に影響します。薬の なかでは抗コリン薬が性欲を下げることが知られている一方で、パーキンソン病の薬の多くは 性機能に直接の影響を与えません。むしろドパミンアゴニスト脳でドパミンと似たはたらきをする薬です。レボドパと一緒に、または単独で使われ、衝動制御障害の危険がレボドパよりはっきり高いことが知られています。詳しく見るは反対に、性欲が強くなりすぎる 衝動制御障害害になる、あるいは害になりうる行動をやめられない状態です。その行動をすると、緊張や不安がほどける感じがすると言われています。詳しく見るを 引き起こすことがありますので、どちらの方向であれ変化を感じたら、薬とのかかわりを 確かめてみる価値があります。
男性と女性では、出てくる困りごとが少し違います
男性では勃起不全というかたちで現れることがいちばん多く、女性では性欲の低下と オルガズムに達しにくくなることのほうが多く報告されています。困りごとの重さそのものに 性別による大きな違いはないとされていますが、いくつかの研究では、男性のほうが全体としての 影響を強く感じるという結果も出ています。どちらにしても、「おかしなことではなく、よくある 症状だ」と知ることが第一歩です。
まずは話すことから

配偶者やパートナーと、いま感じている困りごとを率直に話すことが、いちばん大切な第一歩です。 主治医のほうから聞いてくれないことが多いので、話しにくくても診察のときに自分から切り出して みてください。一人で話すのがむずかしいときは、性の悩みを扱う夫婦のカウンセリングや、 性の相談を専門にする人の助けを借りるのも一つの方法です。
時間や方法を調整してみてください
薬がいちばんよく効いている時間帯に合わせて計画を立て、体が楽な姿勢ややり方を二人で 探してみてください。以前と同じやり方をそのまま続けようと無理をするより、いまの体に 合った新しいやり方を見つけていくほうが、関係を続けていくうえで助けになります。
勃起不全には治療の選択肢があります
生活習慣の見直しと飲み薬(PDE5阻害薬勃起不全の治療に使われる飲み薬の系統です(シルデナフィルが代表的な成分です)。血管を広げて血流を増やすかたちではたらきます。血圧を下げる薬を一緒に飲んでいる場合は血圧が下がりすぎることがあるため、処方を受ける前に飲んでいる薬をすべて医療チームに伝えてください。詳しく見るの系統)が 役に立つことが多くあります。まれに注射や手術まで検討することもあります。ただし血圧の薬を 一緒に飲んでいる場合は相互作用を確かめる必要がありますので、必ず主治医に相談してから 始めてください。
女性には潤滑剤と骨盤底のケアが役立ちます
膣の乾燥による不快さは、水性の潤滑剤でかなり減らすことができますし、オルガズムに達しにくく なっている場合は、骨盤底の理学療法が役立つこともあります。婦人科を受診して、ほかに原因が ないかあわせて確かめてみるのもよいでしょう。
排尿の問題があるなら、前もって備えておいてください
膀胱のコントロールが不安定だと、親密な時間を持つこと自体が心配になることがあります。 前もってトイレに行っておく、必要なら吸収パッドを使う、といった実際的な工夫があります。 この心配のせいで避けるようになってしまうことがよくありますが、排尿の問題はそれ自体を 治療・管理できる症状ですので、あわせて主治医に相談してみてください。
ドパミンアゴニストで性欲が強くなりすぎたときは
こうした変化は、意志の問題ではなく薬の副作用であることがあります。自分を責めるよりも、 主治医に伝えて、薬の種類や量を調整できるか相談してみてください。
今日からできること
性の悩みはよくある症状ですが、治療したり調整したりできる部分がたくさんあります。次の 診察で切り出しにくいときは、前もってメモを書いていって、短くてもいいので話してみて ください。
この記事は医学的な診断や治療の代わりになるものではありません。具体的な症状と治療に ついては主治医にご相談のうえご確認ください。


