玄関の上がりかまち、廊下、浴室、トイレ。パーキンソン病の毎日でいちばん危ないのは、 だいたいこの四か所です。手すりを一本つける、段差を三センチ削る — それだけで転倒が 減ることがあります。
ところが「どこに申し込むのか」で多くの方がつまずきます。窓口が二つあって、 どちらを使えるかがご自分では判断しにくいからです。以下は2026年8月時点で、 厚生労働省と自治体の公式ページを実際に確認して整理したものです。
入口は二つあります
| 介護保険の住宅改修 | 障害福祉の日常生活用具 | |
|---|---|---|
| 正式な名前 | 居宅介護(介護予防)住宅改修費 | 居宅生活動作補助用具 |
| 窓口 | 市区町村の介護保険担当 | 市区町村の障害福祉担当 |
| 使える人 | 要支援・要介護の認定を受けた方 | 自治体が定める要件に当てはまる方 |
| 上限 | 生涯20万円(うち1〜3割が自己負担) | 自治体が定める(20万円としている市が多い) |
| 決め方 | 全国共通の制度 | 市区町村が実施主体。要件も額も自治体ごと |
工事の中身は、ほぼ同じです
介護保険で対象になる工事は6種類です。
| 対象になる工事 |
|---|
| (1) 手すりの取付け |
| (2) 段差の解消 |
| (3) 滑りの防止・移動の円滑化のための床材/通路面の材料の変更 |
| (4) 引き戸等への扉の取替え |
| (5) 洋式便器等への便器の取替え |
| (6) 上記に付帯して必要になる工事 |
障害福祉の居宅生活動作補助用具でも、郡山市が挙げている工事はほぼ同じ並びです — 手すりの取付け、床段差の解消、床材・通路面の材料変更、引き戸等への扉の取替え、 洋式便器への取替え。
つまりやりたい工事の中身で入口が決まるのではなく、ご自分がどの制度の対象かで決まると いうことです。
いちばん多い失敗 — 工事を先にしてしまう
この制度で取り返しがつかないのは金額ではなく順番です。八王子市の説明は明確です。
市へ事前に申請し、改修計画の確認を受けること。(着工後の申請は制度の対象となりません。)
千葉市も日常生活用具について「事前の手続が必要となります」としています。
20万円は、使い切っても終わりではありません
介護保険の住宅改修は生涯20万円が上限ですが、やり直せる例外が二つあります。 知らずに諦めている方が多いところです。
① 要介護度が3段階以上上がったとき
初めて住宅改修に着工した日から見て、介護の必要の程度が3段階以上進んだ場合です。 八王子市が挙げている組み合わせはこうです。
| 最初の工事のとき | ここまで上がったら |
|---|---|
| 要支援1 | 要介護3以上 |
| 要支援2 ・ 要介護1 | 要介護4以上 |
| 要介護2 | 要介護5 |
パーキンソン病はゆっくり進む病気です。最初に手すりを一本つけたときと、数年後に必要な工事は 違います。要介護度が上がったときは、この例外に当たらないか確認してください。
② 転居したとき
引っ越した場合も新たに20万円が使えます(転居前の住宅に戻ったときは、前の住宅の支給状況が 復活します)。
障害福祉のほうは、市区町村ごとに違います
ここは正直にお伝えしておく必要があります。日常生活用具給付等事業は市町村が実施主体で、 厚生労働省も利用者負担は「市町村の判断による」としています。つまり全国共通の答えが ありません。
国の枠組みでは、対象者は「障害者、障害児、難病患者等」です(難病患者等は政令に定める 疾病に限る)。パーキンソン病はここに入ります。ところが実際の運用は自治体で分かれます。
| 自治体 | 居宅生活動作補助用具の対象者 |
|---|---|
| 千葉市 | 日常生活用具全体の対象を「身体障害者(児)、知的障害者(児)、精神障害者、難病等の方(児)」としている |
| 郡山市 | 「下肢、体幹機能障害頸部・胸部・腹部および腰部を含む部分の機能障害です。各部の運動だけでなく、座った姿勢や立った姿勢を保っていられるか(体位の保持)も判定の要素になります。詳しく見る、脳原性移動機能障害で3級以上の身体障害者手帳の交付を受けた方」 |
同じ制度名でも、難病というだけで対象になる市と、手帳3級以上を求める市があります。 金額の上限(多くは1住宅につき1回・20万円)や所得制限も自治体が決めます。
持ち物
理由書を書いてもらう相手(ケアマネジャー・地域包括支援センター市区町村が設置する高齢者の暮らし全般の相談窓口です。介護保険の要支援1・2の方のケアプランもここが担当します。詳しく見る・作業療法士など)が 決まっていない場合も、まず窓口で相談すれば案内してもらえます。
こんなときは
| 状況 | どうするか |
|---|---|
| 40歳未満です | 介護保険は使えません。障害福祉の窓口で日常生活用具について相談してください |
| 要介護認定を受けていません | まず認定を申請するか、障害福祉の窓口で相談を。パーキンソン病は介護保険の特定疾病介護保険法施行令第2条に列記されている16の病気です。40歳から64歳の方でも、要介護状態の原因がこの中のどれかであれば要介護認定を申請できます。詳しく見るなので40歳以上なら申請できます |
| もう工事を終えてしまいました | 残念ですが着工後の申請は対象外です。次の工事のときは必ず先に窓口へ |
| 20万円を使い切りました | 要介護度が3段階以上上がっていないか、転居予定はないか確認してください。どちらも新たに20万円が使えます |
| 手帳を持っていません | 国の枠組みでは難病患者等も対象です。ただし要件は自治体ごとに違うので窓口で確認してください |
| 20万円では足りません | 自治体が独自に上乗せする事業を持っていることがあります。生活福祉資金貸付制度(福祉費)で不足分を借りられる場合もあるため、窓口で「ほかに使える制度はありませんか」と聞いてください |
| 賃貸住宅です | 大家さんの承諾書を求められるのが一般的です。相談の段階で必要書類を確認してください |
| 手すりだけなら買って付けたいです | 工事を伴わない据置型の手すりは、介護保険では福祉用具貸与の対象になることがあります。こちらは20万円の枠を使いません |
患者さんとご家族へ
住宅改修でいちばんもったいないのは、「まだそこまでではない」と先延ばしにすることです。 手すりが要るかどうかは、転んでから分かるものではありません。夜中にトイレへ立つとき、 浴室で体を洗うとき、玄関で靴を履くとき — 今つかまっている場所がどこかを思い出して みてください。壁や家具につかまっているなら、そこが手すりの位置です。
そして着工前に窓口へ。この一つだけは覚えて帰ってください。
このページは行政の決定に代わるものではありません。記載した内容は2026年8月時点で 厚生労働省および自治体の公式ページで確認したものです。日常生活用具給付等事業は 市区町村が実施主体で要件・金額が自治体ごとに異なりますので、ご自分の適用については お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。


