パーキンソン病の診断を受けると、「子どもや兄弟にも起こるのではないか」という心配がついて きやすいものです。結論から申しますと、ほとんどの場合、心配するほど遺伝する可能性は 高くありません。
ほとんどは遺伝ではありません
パーキンソン病の患者さんの約90%は、これまでに知られている遺伝子の変化がない 孤発性です。残りの約10%だけが、LRRK2・GBA・SNCAパーキンソン病と関係が深い代表的な三つの遺伝子です。LRRK2とSNCAは親のどちらか一方から受け継いだだけでも発症することがあり、GBAに変化があると、考えるはたらきの低下が比較的早く進む傾向があります。詳しく見るのような特定の遺伝子の変化と 関わっていることが知られています(関わる遺伝子についてのくわしい説明は パーキンソン病はなぜ起こるのですかの記事で 扱っています)。
家族歴があると危険はどれくらい大きくなりますか
一般の方が一生のうちにパーキンソン病になる危険は約1%です。親や兄弟など近いご家族に パーキンソン病の方がいると、この危険が約2%ほどに高くなると報告されています。 2倍になるというのは事実ですが、絶対的な数字で見ればやはり低いほうです — 家族歴があるからといって、必ずパーキンソン病になるわけではありません。

遺伝子があっても、必ず発症するわけではありません
LRRK2のような遺伝子は、変化が一つあるだけでも遺伝しうる(常染色体顕性遺伝両親のどちらか一方から変化した遺伝子を受け継ぐだけでも発症しうる遺伝のしかたです。LRRK2などがこのかたちで遺伝します。詳しく見る)かたちで伝わりますが、変化を受け継いだからといって100%発症するわけではありません。これを不完全浸透(incomplete penetrance)特定の遺伝子の変化を受け継いだからといって、必ず発症するわけではないという意味です。同じ変化をもつご家族でも、ある方には症状が現れ、ある方には一生現れないことがあります。詳しく見るといいますが、たとえばLRRK2の変化をもつ方が実際にパーキンソン病の症状を経験する確率は年齢によって変わり、59歳の時点で約28%、69歳の時点で約51%、79歳の時点で約74%ほどと報告されています — 年齢が上がるほど確率は高くなりますが、一生症状が出ないまま過ごす方もかなりいるということです。いっぽうPRKNparkinというタンパク質をつくる遺伝子です。常染色体潜性遺伝で伝わり、若い時期(50歳より前)に発症するパーキンソン病のよくある遺伝的な原因の一つとして知られています。詳しく見るのような遺伝子は、両親の両方から変化を受け継がないと発症しない常染色体潜性遺伝両親の両方から変化した遺伝子を受け継がないと発症しない遺伝のしかたです。PRKNなどがこのかたちと関わっており、若年発症のパーキンソン病と関係します。詳しく見るのかたちで、比較的若い年齢で診断される若年発症のパーキンソン病と関わっています。
民族・地域によって割合が違います
LRRK2・GBAに関わる変化は、人の集団によって現れる割合が大きく違います。たとえば アシュケナージ系ユダヤ人と北アフリカのベルベル人の集団では、LRRK2の特定の 変化がパーキンソン病の患者さん全体のうちそれぞれ約14%、30〜40%で見つかるほどよくあると 報告されています — ほかの集団ではずっとまれです。こうした違いがあるということは、遺伝子検査の 結果を読み解くときに、ご自身の背景によって意味が変わりうるということでもあります。
遺伝子検査は必ず受けたほうがよいですか
ほとんどの患者さんには、遺伝子検査が必ず必要というわけではありません。次のような場合には 考えてみる価値があります。
- ご家族にパーキンソン病の方が何人もいる場合
- 比較的若い年齢で診断された場合
- 特定の遺伝子を標的とする臨床試験の参加資格を確認する必要がある場合
市販の消費者向け遺伝子検査キットは、限られた変化しか調べないため、結果が誤解を招くことが あります。検査を考えるなら、検査の前後に遺伝カウンセラーに相談し、結果が実際に何を 意味するのかを正確に理解しておくとよいでしょう。
今できること
家族歴が心配なら、ぼんやりと心配するよりも、主治医や遺伝カウンセラーに相談して正確な危険の 情報を得るほうが役に立ちます。遺伝子の変化があるからといって必ず発症するわけではありませんし、 反対に変化がなくてもパーキンソン病は起こりえます — 遺伝はいくつもある原因の一つにすぎません。
この記事は、医学的な診断や治療の代わりになるものではありません。家族歴や遺伝子検査について 気になることがあれば、主治医にご相談ください。


