パーキンソン病があるからといって、旅行をあきらめる必要はありません。ただ、ふだんより いくつか多めに用意しておくと、着いてから安心して過ごせます。薬の管理、時差、保険 — この三つは出発前に片づけておきたいところです。
薬は手荷物に、余裕をもって分けて入れてください

薬は預ける荷物ではなく機内に持ち込む手荷物に入れてください。荷物が遅れたり なくなったりすると、何日も薬が飲めない事態になりかねません。処方されたときの 包装とラベルをそのままにして持っていき、飲んでいる薬の一覧と飲む時間を書いた表を 印刷していっしょに持っていってください。お薬手帳も忘れずに持っていきましょう。 海外への旅行なら、英文の処方せんや診断書を用意しておくと、税関や保安検査で確認を 求められてもすぐに説明できます。旅行の日数より数日分多めに持ち、かばんを一つなくしても 困らないよう、二か所(たとえばスーツケースと手持ちのかばん)に分けて入れるのも よい習慣です。
時差のある旅行では、飲む間隔を守るのが要です
時差のある地域に移動するときは、「現地の時刻」ではなくふだんの服薬の間隔を 基準に薬を飲むのが原則です。腕時計を二つ(現地の時刻と日本の時刻)持っておくと、 計算が混乱しにくくなります。長い旅行なら、出発の2〜3日前から少しずつ時間を早めたり 遅らせたりして、あらかじめ慣らしておく方法もあります。時差が大きいときや、飲む間隔を どう調整すればよいか自分では判断しにくいときは、出発前に神経内科の主治医と具体的な 調整の計画を相談しておいてください。
空港や機内では、前もって支援をお願いしてください
移動が不自由なときは、航空会社に前もって連絡して車いすの支援や優先搭乗をお願いする ことができますし、付き添うご家族が保安検査場の内側までいっしょに入れるよう配慮して もらえることも多くあります。空港ごとに、体の不自由な方への支援のしくみがありますので、 出発前に利用する空港の窓口に、どんな支援を受けられるか問い合わせてみてください。
脳深部刺激療法(DBS)の装置が入っているなら、前もって伝えてください
DBSの装置脳の奥深いところ(多くは視床下核)に細い電極を植えこみ、細かい電気刺激を継続的に送る手術です。薬だけでは症状を抑えにくくなった方に検討されます。空港の保安検査を通るときには、あらかじめ係員に伝える必要があります。詳しく見るは、 金属探知機や店舗の盗難防止ゲートを通るときに反応したり、刺激の設定が意図せず変わって しまったりすることがあります。装置を入れたときに受け取った患者用のIDカードを いつも持ち歩き、保安検査では装置があることを先に伝えたうえで手による検査をお願いするか、 通る前に装置をいったん切っておくのが安全です。
旅行保険は申し込む前に約款を確かめてください
パーキンソン病のように治りにくい持病は、旅行保険で補償の対象外になることが多く あります。ただし商品によっては、決められた限度のなかで持病にかかわる事故を補償する 特約を用意しているものもありますので、申し込む前に「既往症(持病)」に関する条項を必ず 確かめ、わからないところは保険会社に直接問い合わせて、あいまいなままにしないほうが よいでしょう。
長い移動のあいだは、こまめに動いてください
飛行機やバスで長く座っていると、体がこわばったり脚がむくんだりしやすくなります。 できれば1〜2時間に一度は席を立って歩くか、足首を回して血のめぐりを助けてください。 通路側の席を前もってお願いしておくと、席を立つのがずっと楽になります。
旅行中に症状が強くなったときに備えておいてください
滞在先の近くの病院や救急外来の場所を前もって調べておき、旅行保険の緊急連絡先を 携帯電話に登録しておいてください。医療情報を書いたカードやブレスレットを持っていれば、 慣れない場所で症状が強くなって言葉が出にくいときでも、まわりの人や医療スタッフが 状況をすぐにつかむことができます。
日程には余裕をもたせてください
一日の予定に移動と観光を詰めこまず、休む時間を十分に入れて計画してください。調子の よい時間帯に大事な予定を入れ、宿はトイレや浴室に行きやすいところを優先して選ぶと、 旅行中に急に疲れが出たり体がこわばったりしても、あわてずに対応できます。
今日からできること
薬の一覧を印刷する、日程に余裕をもたせる、保険の約款を確かめる — 出発前にこの三つを 片づけておくだけで、旅行中に起こりうる困りごとがずいぶん小さくなります。
この記事は医学的な診断や治療の代わりになるものではありません。時差に合わせた服薬の 調整や、長距離の移動をしてよいかどうかは、主治医にご相談のうえご確認ください。


