運転は自立した生活の大きな部分を占めているので、パーキンソン病と診断されたからといって すぐにやめなければならないわけではありません。ただ、症状によっては運転に影響しうる ところが確かにありますので、前もって知っておき、必要なときにきちんと評価を受けるのが 安全です。

診断がついたことが、そのまま免許の取消しになるわけではありません

日本では、身体の障害や一定の症状を呈する病気等のために安全な運転に支障がある方について、 道路交通法などで免許の拒否・保留・取消し・停止が定められています。ただし警察庁は、その 要件に当てはまるかどうかはあくまでもそれぞれの方について個別に都道府県公安委員会が 判断すると説明しています。

警察庁が挙げている「一定の病気等」は、認知症、アルコールや麻薬などの中毒、幻覚の症状を ともなう統合失調症、発作により意識障害または運動障害をもたらすてんかん・再発性の失神・ 無自覚性の低血糖症、そううつ病、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害、そして体幹の機能障害 などの身体の障害です。パーキンソン病は病名としては挙げられていません。 ですから、診断を受けたこと自体が自動的に免許の取消しにつながるものではありません。

一方で、警察庁は「身体の障害や病気の症状が運転に及ぼす影響は個別具体のケースにより まちまちで、運転免許に一定の条件を付すことにより補うことができる場合や、治療により 回復する場合等がある」とも述べています。つまり判断されるのは病名ではなく、 いまの症状で安全に運転できるかです。

質問票と、臨時適性検査・診断書提出命令

免許の取得や更新のときには、一定の病気等の症状に関する「質問票」運転免許の取得時・更新時に提出する、一定の病気等の症状についてたずねる書面です。虚偽の記載をして提出した場合には罰則があります。公安委員会は、一定の病気等に該当することとなったと疑う理由があるときに、臨時適性検査を行うか、医師の診断書を提出すべき旨を命ずることができます(道路交通法第102条第4項)。詳しく見るを 提出することになっています。虚偽の記載をして提出した場合には罰則があります。

公安委員会は、一定の病気等に該当することとなったと疑う理由があるときに、 臨時適性検査を行うか、診断書提出命令によって医師の診断書を求めることが できます。主治医の診断書で判断できると認められる場合は診断書提出命令、それ以外の場合は 臨時適性検査、というのが警察庁の示している運用です。いずれも更新の時期とは関係なく 行われます。

手続きの細かいところや必要書類は都道府県によって案内が異なりますので、 お住まいの都道府県の運転免許センターにご相談ください。迷ったときは、各都道府県 警察の安全運転相談窓口(全国統一ダイヤル ♯8080)でも相談できます。看護師など 医療系の専門職員をはじめ、専門知識のある職員が対応する窓口です。

運転席でとくに問題になる症状

わかりやすいのは体の症状です。ふるえやジスキネジアがあると車に乗り込むことや 操作そのものがむずかしくなりますし、動作が遅くなる動作緩慢は、運転が速い反応を 必要とするからこそ危険です。

けれども運転にいちばん大きく影響するのは、実は認知の面の変化です。段取りを立てる 力、いくつかのことを同時にこなす力、物と物のあいだの距離をつかむ力が関わります。目の はたらきも大切です。パーキンソン病の患者さんにはコントラスト感度の低下 — 物と 背景を見分けにくくなること — がよくみられ、夜間や霧、まぶしい光のもとでいちばん こたえます。

そして眠気です。睡眠の問題や薬の副作用で、運転中に急に眠くなることがあります。 カナダの運動障害疾患グループがパーキンソン病の患者さん638人に行った調査では、51%に 日中の強い眠気があり、まだ運転していた420人のうち16人(3.8%)が運転中に突然 眠り込んだ経験を少なくとも一度はしていました。そのうち3人には前ぶれがまったく ありませんでした。研究者たちの助言ははっきりしています — ふだんなら眠らない場面で うとうとするなら、運転しないよう注意を受けるべきだということです。

ドパミンアゴニスト脳でドパミンと似たはたらきをする薬です。レボドパと一緒に、または単独で使われ、衝動制御障害の危険がレボドパよりはっきり高いことが知られています。詳しく見るについては、とくに触れておく必要があります。日中の眠気に加えて、 買い物やギャンブルがやめられない、性的な衝動が強くなるといった 衝動制御障害害になる、あるいは害になりうる行動をやめられない状態です。その行動をすると、緊張や不安がほどける感じがすると言われています。詳しく見るを 引き起こすことがあり、判断力そのものが影響を受けると、危険な運転につながることが あります。思い当たることがあれば主治医に伝え、薬を調整するか、運転のほうを見直すかを 相談してください。一般的な目安として、薬が切れている「オフ」の時間帯には運転を 避けるほうがよいでしょう。

運転の能力を評価してもらうことができます

症状があること自体は、すぐに鍵を手放す理由にはなりません。海外では作業療法士が 運転能力の総合評価を行うしくみが整っていて、診察室での検査(見る力、同時に いくつものことをこなす力、反応の速さ、注意を保つ力、頭の切り替え)と、指導者が同乗する 実際の路上走行を組み合わせて判断します。

日本でも、リハビリテーション科のある病院などで運転再開の可否を評価する取り組みが 広がっていますが、どこで受けられるかは地域によって大きく異なります。まずは主治医に 「運転を続けてよいか評価してもらえるところはありますか」と聞いてみるのが近道です。 安全運転相談窓口(♯8080)でも、運転を続けるための助言を受けることができます。

車を調整して運転を続けられることもあります

ハンドルを握る手

評価の結果、運転の一部がむずかしくなっていることがわかっても、すぐにやめることだけが 答えではありません。ペダルの操作がつらいなら手動装置や補助のグリップを取りつける、 視野や姿勢の保持がむずかしいならシートやミラーをその人に合わせて調整する — こうした 工夫でかなりの部分が解決することがあります。警察庁も、運転免許に一定の条件を付すことで 補える場合があると説明しています。評価を受けるときには、あとまわしにせず、必要な補助 装置についてもあわせて相談してください。

やめどきを見落とさないでください

症状はゆっくり進むので、運転している本人がいちばん最後に気づくということが起こります。 まじめに受け止めたほうがよいサインは具体的です — 車に新しい傷が増える、慣れた道で 迷う、注意や記憶の問題が出てくる、「オフ」の時間が長い、最近の事故や違反、そしてご家族が 「助手席が怖い」と感じていることです。

同乗していて、以前より反応が遅い、車線をまたぐことが増えたと感じたなら、率直に伝えて ください。気まずい話ではありますが、悪い話ではありません。自分では判断がむずかしいと きは、上に書いた評価や安全運転相談窓口で客観的に確かめてみてください。

代わりの移動手段を先に用意しておいてください

運転をやめることは、移動する力を失うことと同じではありません。前もって知っておく価値が あるのは、路線バスやコミュニティバス、タクシー、配車アプリ、食料品や薬の配達、そして 自治体や社会福祉協議会が行っている移動の支援です。オンライン診療が使えれば、通院その ものが減ることもあります。免許を自主返納した方への支援を用意している自治体や事業者も あります — 内容は地域によって異なりますので、お住まいの自治体の窓口や安全運転相談窓口で ご確認ください。必要になる前にこうした選択肢を知っておくと、決めるときの不安がずいぶん 軽くなります。

今日からできること

運転中に眠気を感じたり、反応が遅くなったと感じたことがあるなら、次の診察で必ず話して ください。主治医が評価をすすめるなら、受けてみてください。いまどのあたりにいるのかを 知っておくほうが、迷いつづけるよりずっと楽です。

この記事は医学的な診断や法律の助言に代わるものではありません。運転できるかどうかは 主治医に、免許の手続きについてはお住まいの都道府県の運転免許センターや安全運転相談 窓口にご相談のうえご確認ください。